永遠の願い
アランは十字架を満月で照らした。こうすれば願いが叶うと、どこかで耳にしたからだ。心の中で願い事を呟く。それに倣って、ニーナも十字架を手に夢を言った。
「ねー、アランはなに願ったの?」
ニーナは少女らしく、可愛らしい笑顔をした。照れくさ気にアランは、彼女から目を逸らした。
「内緒だよ。ニーナが教えてくれるなら考えなくもない」
「うーん、じゃあいいよ。私の願いはね、アランと永遠に一緒にいたい、だよ」
アランは驚いた。というのも、
「俺もだ、ニーナ。君と一緒にいたい」
僅か十三歳の少年少女は、赤面させて、そして見つめ合った。
この時、二人はその願いが必ず叶うものだと錯覚していた。現実はそんなことはなかった。
「どうしてよ」
ニーナは墓地で泣き叫んでいた。永遠の愛を誓った一ヶ月後のこと、アランは生を絶たれたのである。二人で森に探検しに行った所、獲物と誤った狩人が、アランを射殺したのであった。
ニーナの金色の髪が、満月によって更に輝かしさを増す。十五歳になったニーナはとても美しかった。容貌は変化すへど、アランへの気持ちは変わらなかった。
「アランに会いたい」
思わず呟いた言葉に、ニーナはまた目を潤ませた。
「ニーナかい?」
ふと、聞き慣れた声が背中からした。
「もしかしてアラン? 本当にアランなの?」
振り返り声の主を見る。
「そうさ、僕はアランさ。こっちへおいで」
ニーナはアランに近寄った。横目でアランの墓地に大きに穴が空いているのがわかった。
「これで、僕達はずっと一緒だ。願いが叶ったんだ」
また、ニーナは泣き叫んだ。
「きもっ!」
骸骨姿のアランにドン引きしたニーナは、アランを蹴り飛ばし、再び土葬した。