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 僕が部屋に入った瞬間、部屋にいる30人ほどの人達の目が一斉に僕を見た。そして歓声があがる。

「セラーレテ様!!」

「セラーレテ様がいらしたわ」

「セラーレテ様、お久し振りです」

 僕の周りにはすぐに人垣ができた。みんなが口々に僕に話してくる。僕に会えてみんな嬉しそうな表情をしていた。僕も嬉しくなっていつものようにニッコリ笑いながら答える。

「久し振りだよね。みんな、元気にしてた?」

 僕の声を聞き逃さないようにでもするかのように、その場が一瞬で静かになった。すると、僕より5歳年上のカイナが代表で話しはじめた。

「ええ、皆元気にしておりました。毎日、来られていたセラーレテ様がここ一週間いらっしゃらなかったので、皆心配していましたのよ」

「ごめん、ごめん。テストがあって、その勉強をするのに忙しかったんだ」

「きっと、そうではないかと、皆で噂しておりましたの。普通科のテストは本日で終わりだという情報が入っていて、今日こそはセラーレテ様が来られるのではないかと、皆期待していましたのよ」

「ちょっと、遅くなちゃったけど来たよ。あ、あのさ、兄様はいないの?」

 談話室をぐるりと見回しながら、カイナに尋ねる。すると、カイナがすぐに教えてくれた。

「ルル様でございますね。お部屋にいらっしゃいますわ」

「そっか・・・。じゃ、後で行ってみるね」

 カイナが再び、口を開きかけたが、それよりもはやく僕を呼ぶ声が耳に届いてきた。

「レテ、こっちこっち」

 国にいた頃の友達2人が僕を手招きして呼んでいた。

「こらっ、ライナ!」

 カイナに名前を呼ばれたライナが一瞬肩を竦めたが、一切動じることなく僕を呼び続けた。カイナの雷がライナに落ちる前にと、僕は急いでライナ達のもとへと向かい、3人掛けソファーのひとつだけ空いた部分に腰を下ろした。


「レテ、久し振りだな」

 隣に座った僕にライナが笑顔を向けて言った。僕もそれに大きく頷き答える。

「うん、うん。なんかね、思った以上にテストが大変でね。ずっと勉強していたんだよ」

「なぁなぁ、普通科のテストってどんなの?」

 ライナの横に座ったシュリモナが興味津々で僕に尋ねてきた。

「銀国の学校と同じだったよ。プリントに答えを書くって感じ。歴史とか算数とか国語とか」

「そうなんだ」

 ライナもシュリモナもこの学院に来たのは10歳からでそれまでは国で僕と同じ普通の学校に通っていたので、僕の説明に納得したようだった。シュリモナが言葉を続けた。

「ということは、魔法の授業以外はこっちと一緒なんだね」

「あ、あとね、語学の授業は自分で喋らないといけなかったよ」

「それも一緒だね。あれ、嫌だよね。5分も何を喋るんだよって感じだよね」

 シュリモナの言葉にライナが続ける。

「こいつさ、5分間で『私は林檎と桃が好きです』しか言ってないんだぜ。俺、吹き出しそうだった。我慢したけどな」

「ライナ、何言ってんの。吹き出して爆笑してたくせに」

 思わず笑ってしまった僕だったが、僕も人のことが言えなかった。

「じつは、僕も好きな食べ物しか言えなかったんだよね」

「マジで!!シュリモナもレテもバカだなぁ」

 ライナに馬鹿にされながらも、一切気にすることなくシュリモナが聞いてきた。

「レテはどこの国の言葉にしたの?銀国にしたら満点とれると思うけど」

「ええっ!!魔法科には銀国の言葉もあるの?こっちにはなくて・・・あったら絶対銀国にしたのに・・・。だから、白国なの」

「なんで、また何もないようなマイナーな国の言葉を選ぶかなあ」

 呆れたようなライナにシュリモナが言った。

「今度のテストの時は俺とレテに勉強教えてよ。レテと俺達のテストも同じようなみたいだし。ライナは賢いんだから。そう思うよね、レテ」

「うん、うん、僕毎日通っちゃう。そうじゃなくても毎日来てるけど」

 そう言うと、僕は机の上のクッキーを口にほうりこんだ。

 ああ、美味しい!!やっぱりミストランテのクッキーはとびきり美味しいなぁ。



「そう言えば、今日の実技演習試験、ライナとシュリモナは受けていた?僕、あれこっそり見ていたんだ。すごい綺麗で面白かったよ。ライナとシュリモナの姿、見かけなかったけど、学年が違ってたのかな?ナ・・・何とかって言う王子さんがいたけど」

「レテ、あれ見てたのかよ」

 呆れ顔のライナに僕は笑顔で大きく頷いた。ライナが言葉を続けた。

「どうやって、潜り込んだかはもう聞かないでおくよ。それと、ナシュイハルトがいたってことは、レテが見たのは前半組だったんじゃないか?」

「俺とライナは後半組だったんだよ。それにしても、レテも見てたんだぁ。王子ナシュイハルト、すごかったでしょ?俺達は模擬対決での黒玉しか見てないんだけど、炎も凄かったって、前半組が言ってたんだ」


 炎の時は確かに底知れぬ力を感じたけど、黒玉の時は彼は無力だったよ。生まれたばかりの赤ん坊のように弱々しかったよ。ライナもシュリモナもみんなのように、そのことに気づかなかったのかなぁ。


「王子ナシュイハルトの力は俺達とは比べ物にないぐらい巨大だからな」

 そう言ったライナも王子さんのことを高く評価しているようだった。


 あの黒玉はを出現することが出来たのは、僕が自分の魔法を彼にあげたからなんだよ。そのせいで、僕の左腕には赤あざができちゃったんだけど・・・。


「あのね、その王子さんてどんな人なの?」

 僕の問いが終わるか終わらないかで、僕は名を呼ばれた。声のした後ろを振り返ると、こんな顔に生まれたかったなぁと思わずにはいられないような、惚れ惚れする美しい顔が僕に微笑みかけていた。

「兄様!!」


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