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 部屋を出て一歩で気付いた。


 待て待て、これ、まずいよ。


 意気揚々と魔法科のフードを被って廊下に出た僕だったが、普通科の寮の廊下で着るものではないことにすぐ気付いた。

 

 ちょっと、焦りすぎかも・・・。誰かに見られでもしたら大騒ぎになっちゃうよ。


 いそいそとフードを脱いで小さく畳み、それを腕に抱えると静かな廊下でひとり苦笑いをした。

「なにやってんだか」

 そう呟くと僕は廊下を歩き出した。等間隔に並ぶ電灯の下を通り、廊下の一番端にある階段を下りはじめた。ここの階段は校舎側から一番離れた階段なのであまり使われることがなかった。そのまま、地下一階まで下りる。途中、踊り場にかけられた時計を見ると、20時と21時の間くらいを指し示していた。


 地下一階に到着すると、周りに人が誰もいないことを確認して、行き止まりの壁の左中央部分の壁に左手をかざす。腕輪が微かに揺れる。その瞬間、行き止まりの壁が人ひとり通れる大きさの穴を開け、僕はそこをサッと通り抜けた。左腕を腕輪が少し締め付けたが、それは一瞬で解放されたようだった。今日、さんざんに締め付けられた左腕の手首付近は、ほとんど感覚がなかったので、ここを通る度に感じるその感覚を今日は味わうことがなかった。


 この腕の鬱血を見られたら、ばれちゃうかな?見つからないようにしないと。


 壁を通り抜けると先程とは空気が変わり、冷たい空気が僕の全身を覆った。ここから、魔法科の寮になる。ローブを身に付け、今度は目の前に登場した階段を上る。何人かの魔法科の生徒とすれ違うが、いつも通り僕の正体がばれることはなかった。


 この階段がしんどいんだよね。8階に部屋があるってほんと、困るよ。一番上って、煙とバカはなんちゃらって言われないのかなぁ。


 6階まで上ったところで、足がもつれて転んだ。


 そう言えば、僕、今日倒れたんだよね。頭痛が治まっていたから、忘れていたけど。


 さいわい辺りに人の気配がなかったので、僕は階段に腰をおろし、少し休憩をした。5分ほど休んでから、再び階段を上り、8階に到着した。

「着いた、着いた」


 8階踊り場には廊下が続くであろう場所の前で重厚な扉が待ち構えていた。扉にはシルバー・レイの特徴と言われる、銀の髪と人を射殺す金の瞳を持つ人々が緑溢れる木々の中で戯れる姿が色彩豊かに描かれていた。この扉にはシルバー・レイ以外の者が決して開くことのできない魔法がかかっている。

「みんな、夜のおやつタイムかな。ミストランテお手製のクッキーがまだ残っていたらいいんだけど。あっ、もしもなかったら、サンドイッチ作ってもらっちゃおう。やっぱり、夜ご飯抜きはきついよね」

 体調が完全に回復した僕は、食べ物のことを考えてご機嫌になりながら、扉に手をかけた。銀の髪も金の瞳も持たない僕の目の前で扉がスーと静かに開いた。



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