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 僕が風に触れる。

 これが空を飛ぶことを表現した一番の言葉だと思う。地面に立っている時には風が僕に触れにきてくれる。それは僕だけじゃなく、みんなにも。でも、自分から風に触りにいけるのは、空を飛ぶことができる僕だけなんだと思うんだ。


「王子さん、気持ちいいでしょ?」

「ええ、はじめての経験です。こうして見ると人間の世界のなんと小さなことか。鳥達の方がよほど自由で広いのですね」

「うん、うん。難しくて意味がよくわからないけど、最高の気分でしょ?」

 隣の王子さんににっこりと微笑みかけると、王子さんも僕と同じようににっこりと笑った。


 その笑顔素敵だよ、王子さん!


 低い位置を飛ぶと高い建物にいる誰かに見つけられてしまう恐れがある。そのため、空を飛ぶ時は雲よりも上空で飛ぶことが望ましい。ただそれだと、下からは姿が見えなくなる代わりに太陽の直射を受けてしまい10分以上は飛んでいられなくなってしまう。これらの理由から僕は普段、夕方か夜にしか空を飛んでいなかった。


 本当によかった。いくら朝方だったとしても、太陽に照らされたらすぐに頭がくらくらして飛んでなんていられなかったはずなのに、今日が曇り空だったなんてね。太陽が隠れて見えないや。厚い雲の上にいったら太陽の直射を浴びちゃうと思うけど、厚い雲の下とその下にある薄い雲の下との間だったら、いつまででも飛んでいられるね。


「王子さん、雲がたくさんで下の景色がほとんど見えないけど、夜に空を飛ぶとね、それはそれは綺麗な世界が下に広がっているんだよ」


 今とは比べ物にならないほど、家や町やお城がキラキラと輝いていて息を飲むほどの美しさなんだ。虹国ではまだ一度も見たことがないから、どんな美しさなんだろうね。屋上からの景色以上のはずだよ。


「王子さん、次は夜一緒に飛ぼうね」

 空を飛んでご機嫌の僕はそう言ってふと気付いた。


 王子さん、どうして飛べているんだろう?僕もどうして飛べているんだろう?人と手を繋いだら今まで飛べなくなっていたのに。

 もしかして王子さんが飛ぶ力を持っていた・・・?


「王子さん、一瞬だけちょっといい?」

「え?」

 王子さんの了承を得る間もなく僕は王子さんと繋がった左手を外した。王子さんは驚く間もなく、急降下した。大急ぎで王子さんを捕まえ、再びもとの位置に戻ると、僕はすぐに王子さんに謝った。

「王子さん、急にごめんね。確かめたいことがあって」

「驚きましたよ。確かめたいこと?」

「うん。今まで誰一人、僕と手を繋いだからって飛べた人はいないんだよ。だから、王子さんに飛ぶ力があるのかもしれないなって思ったんだ。でも、違うみたい。どうしてだろう?命の危機で僕に新しい力が目覚めたとかなのかな?」


 うーん。僕が王子さんを引っ張りあげて飛んでいるようでもないし・・・。そうだったら、僕の左手には王子さんの全体重がかかっていて、今がこんな快適な時間にはなってないよね。

 あれ?


「ええっ!!」

「次は何事ですか?」

 大声を急に出した僕に、次は何事かとちょっと迷惑そうな表情を向けた王子さんだったが、僕はそれよりも自分の左手首に目が釘付けになっていた。


 腕輪ついてるよっ!!

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