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ええっ!!なんだって!?
難しく言ってるけど、それってここで僕も王子さんも死んでしまうってことだよね?王子さんはだから秘密を僕に教えてくれたと。
うう・・・ずっと息苦しく感じていたのは、井戸の中の水位が上がってきていたからだったの?確かに口の近くまで泥水が迫ってきているね。気付かない間に少しずつ少しずつ井戸の中の水の量が増えていたんだね。王子さんは気付いていたみたいだけど。
「王子さん、王子さんの秘密にも今の状況にも僕、ちょっとついていけてないんだけど、その、今言ったことは本当?僕と王子さんがここで死ぬとか言うの・・・」
「ええ、後10分もすれば鼻の下まで汚水がくるでしょう。私達は少しでも空気を求めて爪先で立つことになるでしょうが、それもすぐに力尽きて溺死します」
これから自分に起こる恐ろしい未来を詳しく説明されてとても怖いんですけど・・・。本当に王子さんの言う通りになっちゃうの?
「本当に死んじゃうの?」
「そうです。こうやって見ると背の高さがほとんど同じなんですね」
そう言って笑った王子さんに僕はどうしてだか見惚れてしまった。
こんな状況で笑顔でいられるってすごいよ。それによく見たら王子さんって、綺麗な顔をしているよね。兄様の次ぐらいに。よくわかんないけど王子顔だよ。絶体絶命の大ピンチに僕ってば何を考えてんだか。
「王子さん、水を減らす魔法とか使えないの?」
「使えないですね」
そう言ってやはりにっこり笑顔の王子さん。僕はどうしても気になることを尋ねた。
「僕の勘違いかも知れないけど、この状況でも王子さん落ち着いているよね。うわぁ、死んじゃう!って焦ったりしないの?」
「それは君も同じでは?」
「えっ、僕?そんなことないよ。すごく焦ってるし、うわぁ、死んじゃう!って心の中でずっと叫んでるよ。ゲホッ・・・ゴホッ・・・」
とうとう口まで水が迫ってきた。爪先立ちをしても喋ろうとして口を開けると口の中に泥水が入ってきてしまう。
さぁて、魔法を使うとしますか。前に実技演習試験で王子さんを助ける時に使ったような方法じゃなくて、純粋に僕だけの魔法を使うよ。僕の魔法は規格外だから、きっとここでも通用すると思うんだ。兄様は僕に魔法を使ったら死ぬって言っていたけど、それは腕輪にかけられた無効化の魔法が僕に跳ね返ってくるからってことだよね。でも、きっと大丈夫な気がするんだ。腕輪さんもわかってくれるよ。このまま溺れ死ぬよりは運を天に任せて、できるだけのことをやってみるね。でも、あと一日早ければ、何の問題もなかったのにね。
シャラララ・・・。
魔法を使おうと決意した途端、急に腕輪が音を奏でた。そして僕の左手からスルリと抜け落ちた。僕が何かをする前に腕輪が勝手に外れたのだった。
これって、僕の僕だけの魔法が使えるってことだよね。それは今日の夜だと思っていたのに、ずいぶん早まったんだね。なんていいタイミングなんでしょう!!
水は鼻まで届いており、僕はジャンプしながら王子さんに声をかけた。
「王子さん、僕の手を握って!」
「え?」
「今から僕の秘密を教えるね!」
水の中の王子さんの手を僕はギュッと握りしめたのだった。




