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 王子さんの右手から産まれた小さな黒い球体がみるみるうちに体積を増やしていき、あっという間に雷雲よりも大きくなり、そして雷雲を飲み込み消えた。ガラスがまた、カタカタと音を立てて揺れていた。それがおさまると、歓声が轟く。それは、距離のある僕達のもとにまで、聞こえてきた。

「うわぁ!!」

「すごい!!」

 それは、みんなが王子さんを口々に誉め称える声であった。


「王子ナシュイハルト、あんなに大きな黒雲をあっという間に消しちゃうなんて、やっぱすごいなぁ。みんなに囲まれてすごいすごいって言われて、拍手までされてんじゃん。なんかさ、祝福の王子って感じだよな」

「・・・うん」

 リーヤの声に僕は小さく頷くことしかできない。

「これが実力だよな。光だけ出した2回目の時とかは、俺らが言ってたように力を抑えていたんだな。手抜きしていたとかさ」


 うぅ・・・痛い・・・。


 僕は左腕を抑えてその場に踞った。不振に思ったリーヤが、僕の顔を覗きこんできた。

「ん?レテ、どうした?」


 痛い・・・痛い・・・。


「レテ、そんなに唇を強く噛み締めてたら、血が出るぞ・・・え?レテ!レテ!どうしだんだよ!顔が真っ青!!」


 僕の左腕についている腕輪が僕の手首をねじ切るかのように強く強く僕を絞めつけていた。痛さで呼吸もできないほどに・・・。

「かはっ」

 気管から無理矢理息が吐き出されるとともに、僕は痛さのあまり気を失った。

「レテ!レテ!」

 必死に僕を呼ぶリーヤの声だけが、消え行く意識に僅かに届いていた。



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