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 ちょ、ちょ、ちょっと待ってよ。血をちょうだいってどういうこと?めちゃくちゃ怖いんですけど・・・。

 さっきの屋上にいた時も、僕の首から出た血を確か舐めてたよね?それってどういうこと?血の愛好家だったりするわけ?家の地下室には人から吸いとった血の入った瓶がところ狭しと並んでいたりして・・・あっ!食堂で閉じ込められた時も、みんなの手の平に傷をつけて血を集めていたけど、あれも収集のためだったりするの?

 ってか、僕の血、見ても食べても飾っても、価値なんか一切ないよ!


「王子さんって、もしかして貧血ぎみなの?それで血を集めていたりして?輸血するの?」

 本当のことを知るのが怖いのと、今この井戸に漂う狩るものと狩られるものとの変な緊張感を消し飛ばしたくて、ちょっととぼけた返事をした僕だった。でも、冗談のつもりで言った言葉だったが、あながちこれが本当のことなのかもしれないなと僕は思い始めていた。


 王子さん、怪我をしているでしょ。そこからたくさん血が流れて、今は顔が真っ青の貧血状態なんだよね。僕の血をもらって、失った血を補おうとしているのかもしれないね。


 だが、王子さんは僕の考えを否定した。

「輸血?ばかばかしいですね。確かに胸の傷の出血により私は貧血状態でいつショック症状が出てもおかしくありませんが、君の血をどうやって私の体に流すんです?この状態の中、そのようなことができる人がいたらお目にかかりたいですね」

 そう言うと、王子さんは体を僕と壁に支えてもらったままの状態で、僕の左手の手首をきつく締め上げた。

「痛っ!」


 自力で立つこともできないくせに、どこにこんな力が残っていたんだよ。


 王子さんの拘束から逃れようと、僕は思いっきり左手を振った。きつく締め上げられていたわりに拘束はすぐに外れ、それと同時にバランスを崩した王子さんがブクブクブクと泥水の中に沈んでいった。


 なんだかなぁ・・・。世話がやけるね、王子さん。


 僕は脇を抱えるように王子さんを引っ張りあげた。

「ゴホッゴホッゴホゴホッ・・・」

 口の中に泥水が入ったようで苦しみながら咳をする王子さんに、僕は背中を擦りながら言った。

「僕の血あげるよ。どうしたらいいの?」

 詳しいことを色々と聞きたかったが、体がボロボロなのにそれでも強気の王子さんが僕は可哀想で、切なくてそしてなぜだか愛しいと感じるようになっていた。王子さんの様子がまるで小さな子どもが駄々をこねているかのように僕には見えたのだった。


 また、ヘドロまみれになってるしね。


「ゲホッ・・・手を・・・手を貸してください」

 涙目でむせながらも、王子さんは僕に指示を出した。僕は言われたように王子さんの前に両手を差し出した。王子さんはそのうちの左手を掴み、どこに入れていたのかわからないが僕の首にあてたあのナイフを取り出すと、僕の左手にふり下ろした。

「ッ・・・!」

 ナイフが手の平を傷付け、みるみる血が溢れ出した。痛さで左腕が痺れる中、僕の血が水に溶けて広がり始めた。気づかない間に月の光が井戸に射し込んでいたようで、井戸の中は落ちた時のように暗くなく、僕の血の動きも見てとれるようになっていた。

 

 血がどんどん流れているけど、これでいいの?


 不安に思って王子さんの様子を伺うと、王子さんはブツブツと何か唱えていた。王子さんの顔からは笑みが消え、顔に冷や汗が浮かぶほど辛そうなしんどそうな表情になっていた。

 

 王子さん、どんどん辛そうになっているけど、大丈夫?


 王子さんは気を失うかのように目が虚ろになってきていたが、それでも何かを唱えるブツブツは止まることはなかった。その後も五分ほど王子さんの独り言は続き、その間も僕の手の平からは血が流れ続け、それによって水面が赤黒く変わるほどだった。しかし、王子さんの独り言が終わった瞬間、不思議なことが起こった。僕から流れ出た血が目の前に浮かび、小さな玉を形成し始めたのだった。

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