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 ガクッ!


「ん・・・?」

 膝がガクッと折れた拍子に僕は目が覚めた。王子さんをおんぶして立ったまま、僕はどうやら寝てしまっていたようだった。


 今、何時頃なんだろう?夜中だと思うけど、眠たいね。いつもだったら、ベッドの上に大の字になって寝ている時間だもんね。眠くなるのは当然だよね。あーあ、ベッドの上でゴロンって横になりたいな。って、そんなことよりも王子さんは大丈夫?

 

 王子さんの背中の傷にあてていた左手もいつの間にか位置がずれてしまっていた。僕は王子さんの傷口を探り当て、手でそっと触れてみた。血のヌメリは感じず、どうやら出血は止まったようだった。


 よかった、血は止まったんだね。ということは、傷口が塞がったってことだよね。


「腕輪さん、ありがとう」


 腕輪にお礼を言うものの、王子さんの傷は治ったのではなく、応急処置で傷口を塞いだだけなのでまだまだ事態は深刻であった。それに、どれだけの血が王子さんから失われたのか、生半端な量じゃないことは僕にもわかった。今すぐに王子さんが命を落とすということはなくなったが、それでも一刻を争うことにかわりはなかった。


 一日違いだったら、僕は今空を飛べることができているのにね。そうしたら、すぐにでもここから脱け出して助けを呼びに行けるのに・・・。腕輪さん、ついでに僕の魔法を解放してくれないかな?


 水面から左腕を出し腕輪を見つめるものの、腕輪の光は消え何も反応はなかった。だが、身動きひとつしなかった王子さんが少し反応した。微かに声を発し、体が動いたのだった。

「・・・うぅ・・・」

 

 王子さん、目が覚めた?


 僕は大急ぎで振り返り、僕の肩に顔を埋めたままの王子さんに声をかけた。

「王子さん、大丈夫?」

 返事はなかったが、少しして王子さんの顔が持ち上がった。蒼白く表情のないまま王子さんの瞼が開いた。続いて口が小さく開き、言葉を発した。

「ここどこ?」


 王子さん、意識が戻ったんだね。よかったよかった。血が止まって体が少し楽になったんだね。本当によかった。にしても、『ここどこ?』は僕が聞きたい台詞なんだけど。


「たぶん井戸の中だと思う」

「井戸・・・?」

「井戸の中に僕も王子さんも落ちたんだよ。王子さんはどうやって落ちたのかはよくわからないんだけど」

「井戸ですか・・・?嵌められたってところですね。こんな怪我までさせられて・・・ん?傷口が塞がってる?君が?」

 王子さんは自分の傷口を確かめると、傷が塞がっていることに驚き僕に確認してきた。僕が塞いだというよりも腕輪が塞いだのが正しかったが、説明が長くなるので僕は曖昧に頷いておいた。

「う、うん。それより怪我、大丈夫?痛い?」

「激痛ですよ。でも、驚きましたね。傷口を塞ぐなんて、教師レベルです。この状況、やるしかないのかもしれませんね。こんな血液不足の体ではいつ、また気を失うかわかりませんからね」


 それは僕も思うよ。顔面蒼白だし、またすぐに気を失っちゃうだろうなって思うけど、でも、やるしかないって何をやるの?


「背中からおろしてください」

 王子さんの言葉に疑問を持っていると、王子さんがそう言って僕の背中からおりたそうに体を動かした。王子さんをおさえていた両手を放すと、王子さんは僕の背中から滑るように落ちていき、そのまま水の中に沈んでいった。


 ちょっと、おりるのはいいんだけど、自分で立たないと。沈んでるよ・・・。


 僕は少し潜り、水の中で座り込みそうになっていた王子さんを引っ張りあげた。水面から顔を出した王子さんは息をするたびに肩が大きく上下をしていて、僕が支えていないと自分の力では到底立つことが出来なかった。そして、王子さんの髪の毛はまたもやヘドロまみれになっていた。


 髪の毛、ふわふわしているからごみがつきやすいのかな?


「ゴホッ・・・足に力が入りませんね。それにしても汚い水です、汚染水ですよ。もう少し水の量が多ければ足がつかずに死んでいましたね」

 少しむせながら言った王子さんは、一方の肩を僕に預け、もう一方の肩を壁に預けて自分の体がなんとか沈まらないようにした。そして、顔についた泥水を拭うと、目の前にある僕の顔をじっと見つめながら言葉を続けた。

「セラーレテでしたよね。君の血、私にください」 

 そう言った王子さんは生気のない顔にいつもの微笑みを浮かべていた。

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