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 ギャー!!足の下に何かいるっ!!


 飛び上がった僕はそのまま小刻みに足を動かし、水の中に沈む何かから距離をとった。


 ビ、ビックリした!!怖い動物とかじゃないよね。僕のこと食べたりしないよね・・・?


 荒くなった息を整え、それがいるであろう場所を静かに見つめたが、水面が動く気配はなかった。


 水中を忍び寄ってガブリッ!!とかないよね・・・?

 水中に引きずりこまれるとかもないよね・・・?


 ものすごい不安にかられる僕だったが、何かが動く気配は全くなかった。


 もしかしたら井戸の底に溜まったゴミだったのかも・・・。


 気持ちが少し前向きになったところで、腕輪の異常に気付いた。腕輪がきつく締まろうとしていた。


 ちょ、ちょ、ちょっと!どうして腕輪が締め付けてくるの?近くに王子さんがいるわけでもないのに・・・あ!!


「ま、まさか!!」

 嫌な予感が頭をよぎった。もし、予感が当たっているとしたら考えている暇はなかった。僕は水の中をザクザクと進み、何かを踏みつけた場所まで戻ると大きく息を吸って泥水の中に顔を沈めた。


 暗いし何も見えないけど、たぶんここらへんだったと思う・・・。


 僕は水の中を潜り、底の方にいる何かを引っ張りあげた。


 うっ!重い・・・!


 想像以上に重かったが僕は手を放すことなく引き上げた。放すまいと掴んだ布の感触が僕の予想が当たっていることを意味しているかのようだった。


「ぷはぁっ!!」

 やっとのことで水面から顔を出し、口を開けて息を吸うと、顔から滴る泥水が口の中に伝わり口に嫌な味が広がった。だが今はそれどころじゃなかった。僕はすぐさま引き上げてきたものを見た。


 やっぱり!!


 僕の予想は当たっていた。井戸の底に沈んでいたのは王子さんだった。


 一体どうして・・・?

 僕をこの井戸に落とした張本人なのに、どうしてその王子さんが井戸に?それに、僕が屋上から落ちる時、確かに目の前にいたよね。それなのに、どうして落ちた気配もなく井戸の底に沈んでいたの?

 

 様々な疑問が頭を駆け巡ったが、今一番大事なことは井戸の底に沈んでいた王子さんが無事であるかどうかということだった。


 生きてるよね・・・?


 僕はぐったりとして意識のない王子さんを壁と自分の間に挟んで立たせ、王子さんの顔に自分の顔を近付けて呼吸を確認した。


 僕がここに落ちたその後に、何らかの方法で井戸の底に沈んだとしたら、まだ2.3分しか経っていないよね?だから、王子さんは生きてるよ、きっと。


 僕の思いは通じたようで、目は閉じられたままだったが、王子さんの口が呼吸をしているのが見てとれた。


 よかった。生きてた!!

 でも、呼吸が不規則でしかも荒くてとてもしんどそう。横向きにして寝かせてあげられたらいいんだけど、胸あたりまで水があるこの井戸の中では立っていないと呼吸ができなくなるし・・・。


 そうこうしている間にも僕と壁との力の均衡が崩れると王子さんはズブズブズブと水の中に沈んでいってしまう。それを急いで引き止め、王子さんの顔や髪についた泥水を拭いながらいい案はないかと考えを巡らせていた。


 どうしよう?板が一枚あったらそれを浮かしてその上に王子さんを寝かせられるのに・・・。ああ、可哀想に、綺麗な金髪なのにヘドロがペッタリとくっついてるよ。


 王子さんの髪についたヘドロの塊を手で取っていると、その拍子に片方の耳があらわになった。耳にはやはり鈍い色のピアスがついていた。


 あ、この鈍い色の石のピアス、珍しいよね。この石って、道端に落ちてる普通の石コロみたい。どうして、こんなのつけているんだろう?僕が触ろうとしたらすごく怒っていたけど、とても大切な物なのかもしれないね。


「ごめんね」


 王子さんの怒った顔を思い出し、思わず謝った僕だったけれども、すぐに気付いた。謝るのは僕よりも王子さんの方が絶対に多いはず。


 話が噛み合わないままにこんなことになっちゃったけど、王子さんの目が覚めたらちゃんと尋ねてみよう。シルバー・レイのことが知りたいんだったら、教えてあげるし、僕のことも教えてあげるよ。だから、君のことも教えてよって言ってみよう。


 決意あらたにひとり微笑んだ僕は、王子さんの体を支えながら自分の体の方向を変え、そのまま王子さんを背中に乗せておぶった。


 うん!これなら、王子さんが沈むこともないし、いいんじゃない?

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