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王子さんに連れていかれた場所は屋上であった。ただし、僕がよく行く普通科寮の屋上ではなく、魔法科寮の屋上だった。
風が気持ちいい。
これから何をされるのかわからない状況でも、風好きの僕には屋上の開放感と吹き抜ける風が心地よくてしかたがなかった。
「こちらです」
王子さんは僕を先導し、屋上をどんどん進んでいく。訳がわからないまま、少し距離をとりながら王子さんに付いていった。ここに来るまでの間、どれだけ質問をしても一切答えてくれなかったので、ここで何かを聞いたとしても無駄なことはわかっていた。
「うわぁ!!きれい!」
屋上の奥に進むにつれて、見える景色が増えてきた。僕は王子さんのことをいつの間にか抜かし、屋上の端まで駆け出していた。端には転落防止のための柵があり、そこから下を見ると城下町の光がキラキラと輝いて見えた。
普通科の寮の屋上からも城下町は見えていたけど、森があるから少ししか見えなかったんだ。こっちからは360度城下町が見えるんだね。建物の向きの加減かもしれないね。
僕は柵にもたれ、眼下に広がる景色をうっとりと堪能していた。そのため、自分以外にもここに人がいたことをうっかり忘れてしまっていた。
王子さんは僕にこの綺麗な景色を見せてくれようとしたのかな。謎は多いけどもしかして、仲直りのつもりだったのかな。
王子さんに確認しようと姿を探した。すると屋上の端にいる僕とは対照的に王子さんは屋上のちょうど中央辺りにいた。
王子さん、どうしてそんなところに突っ立っているの?ここまで来て一緒に景色を見たらいいのに。もしかして、高所恐怖症なのかな。
「王子さんもここにおいでよ。町がよく見えるよ。あっ、あれはお城だよね。王子さんのお家なんだよね?」
威厳を持って遠くでそびえ立つ虹国のお城を指差しながら、僕は王子さんに声をかけた。しかし、王子さんからは一切の返答がなかった。少し離れているのと暗いのもあって、王子さんがどんな表情をしているかを確認することもできない。僕は王子さんにもう一度声をかけた。
「王子さん、そんなところでとまってないでさ、こっちにおいでよ。ね?」
反応のない王子さんに業を煮やした僕は王子さんの所へ行こうと今いた場所から一歩踏み出した。その瞬間、体に雷が落ちたかのような電流が走った。
「っ・・・!」
身体中が痺れ、あまりの痛さに僕はその場に座り込んだ。何が起こったか確認しようにも、目はチカチカしていて目の焦点が合わなかった。
何が・・・起こったの・・・?
「はぁ・・・はぁ・・・」
自分の意思と関係なく呼吸もどんどん荒くなっていく。
雷が・・・落ちた・・・?
意識が朦朧としていく中で僕に近付く足下が見えた。自由のきかなくなった体を持ち上げると、僕の前に王子さんが立っているのがわかった。何が嬉しいのかというような満面の笑みで僕に語りかけてきた。
「魔法がなかなか、かからないので焦ってしまいましたよ。本来なら、ここの屋上に足を踏み入れた時点で魔法がかかるはずなんですがね。君は規格外なのでしょうね」
王子さんの言葉に僕は痺れた唇を開いて必死に声を出した。
「・・・これは・・・お、王子さん・・・が・・・?」
「そうですよ」
「何を・・・した・・・の?」
「ちょっとね、呪いですよ。ああ、そんなにきつく睨まないでくださいよ。怖いです」
楽しいことでも起こっているかのように王子さんはずっと笑い続けていた。
僕、王子さんに騙されちゃったの?でも、どうしてこんなことするの?
最後の力を振り絞って僕は王子さんに尋ねた。
「・・・どうして・・・?」
「言いましたよね。お前を殺してやるって。言葉通りです。殺すんですよ」




