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 王子さんのことで頭を悩ませているうちにも、僕の食堂のお手伝いは毎日続き、残り一日というところまできていた。その間、王子さんが食堂に現れることはなかったし、それ以外の所で見かけることもなかった。そうすると現金なもので王子さんのことを考える時間はどんどん減っていき、今僕の心を占めているのは銀国に帰ることだけだった。

 

 明日のお手伝いが終わったら、その足で飛び立つんだ。昼間は日射しがきついから、夜飛んで昼間は休憩。それで行こうっと。虹国と銀国との間を飛んで行き来したことがないから、どれぐらいかかるかわからないけど、2日ぐらいで帰れるんじゃないかな。もしかしたらそんなにかからないかもしれないし。


 一時間にひとり、注文にくればいい状態のカウンターの中で僕の目は自然と上を見上げていた。

 

 うわぁ、ワクワクするね!まず、寮の屋上から飛び降りるでしょ?すぐに雲をめがけて浮きあがって、月や星を見ながら飛ぶと。町の下を通るときは下を覗いてみてもいいかもね。町並みがきっとキラキラして見えるはずだよ。それで太陽が昇ってきたら、雲の上にあがってみるの。まだそんなに熱くないと思うしね。そこを楽しんだら雲の中にも入るし、雲の下に出たりもするよ。下にひろがる景色はどんなだろうね。

 飛んで飛んで疲れたら、地面に降りてゆっくり休もうよ。お腹が空いたときは、町に降りてそこの名物料理を食べるんだ。もう、最高の旅路だね。


 カウンターにもたれながら僕の旅路の夢は続く。ちなみにお客さんが減りに減ったのでここ数日、おばちゃんは別部門で働いていた。もちろんカウンターには僕ひとり。喋り相手がいないことが僕の想像をどんどん加速していく。


 あれが気持ちいいんだよね。ポッカリ仰向けになって浮くやつが。まぁ、前が見えないから鳥にぶつかる危険性もあるんだけど。何にぶつかるかわからないから、仰向け飛びは夜はちょっと止めておいて、朝になって周りがよく見えるようになったら、飛行物体がいないのを確認して、仰向けになろうっと。急降下も明るくなってからするとして、じゃあ、一番最初は風を存分に味わうために全速力で飛んじゃう?全身が風に包まれて、風が僕に触れているようになるんだよ。最高に気持ちいいんだから。


 たった二人しかいないお客さんのうちのひとりが僕に手を振り、食堂を出ていった。


 僕のここでの人気はまだまだ続いていますよ、たぶんね。って、そんなことよりも荷物をどうしよう?荷物を持って飛んだことないんだよね。銀国では体ひとつで飛んでいたから。大した物は持って帰れないだろうね。フードつきの魔法科のローブを着て、そのポケットにお金を入れるぐらいかな。荷物は諦めようっと。


「ああ、明日が楽しみ」

 高揚感から体が少し地面から浮いているような、そんな錯覚をしている僕だった。そんな僕の前を最後のお客さんが通っていき食堂を後にした。今日の営業は終わりとなった。

「明日に向けて早く寝ようっと」

 カウンターの中で独り言を言い、食堂の電気を消すために厨房へと入っていった僕は不意に人の気配を感じた。それは食堂の入り口付近から感じてきた。

「今日はもうおしまいなんです」

 おばちゃんのいないここ数日は僕のお手伝い終了時間とともに食堂を閉めていいことになっていた。もう間もなくその時間になるところだった。そのため、今来たお客さんには残念ながら帰ってもらうしかなかった。しかし、僕の言葉が伝わらなかったようで、お客さんの足音がカウンターに近付いてきた。


 お腹が減ってるのかな?


「アイスクリームならできますけど、他は無理です。もう、食堂は閉まるんですよ」

 厨房から振り返ってそう声をかけたが、そこに立つ人を見て僕は息が止まった。

「セラーレテ、君に話があるのですが、今から少し時間をいただけないでしょうか?」

 そう言ってにこやかな微笑みを僕に向けていたのは、久し振りの王子さんだった。

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