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お姉さんに貸してもらったままの手鏡を手に持ち、それを覗きこみながら散歩道を歩いていると、手鏡に一瞬人影が写った。手鏡の角度を変えながら、もう一度人影を探すと、お姉さんが罠にかけられた場所から少し離れた後方の木に、体を隠すように身を潜めているのがはっきりと見えた。人影は魔法科のフードを被っているようで顔を確認することはできなかったが、そんなに背が高くないことは確認することができた。
あそこにいる人が、魔法の罠を仕掛けた人だよ、きっとね。
僕は人影に気付かない振りをして、振り返って言った。
「あ!忘れ物しちゃった!!」
もちろん、人影に聞こえるような大きな声で。
この時点で僕と人影は100メートル以上離れているに違いなかった。人影の方を一切見ないようにして、僕はお姉さんと座って話した大木の場所まで戻った。ここに来て、人影と僕との差はおそらく10メートルあるかないかになった。
こんな近くに潜んでいたとはね。お姉さんを観察していたときは、どこかの木にのぼっていたんだね。だから気付かなかったや。お姉さんと僕がこの場から離れたために木から降りてきて、それを手鏡が見つけたってところだね。
「ああ、よかった。見つけた!」
そう言って何かを拾い上げる動作をした僕は、そのまま勢いよく走り出した。人影を目指して。
どうしてこんなことをしたか、問い詰めなくちゃ!
僕の計算通り、僕はあっという間に人影に近付くことができた。人影は向かってくる僕に気付いて駆け出し逃げ出したが、時遅くすぐに僕に捕まってしまった。
「痛っ!!」
逃がすまいと僕に腕を強く握りしめられた人影が声をあげた。
ん・・・?この声、どこかで聞いたような・・・?
人影は僕に掴まれた腕をブンブン振って、僕の拘束から逃げようとしていた。その間に僕の頭にはひとつの答えが浮かびつつあった。
僕とおなじくらいの身長。それにこの声・・・?
僕の手を振り払おうと、人影は掴まれていないもう一方の手で必死に僕の手を引っ張っていた。その拍子に深く被ったフードの隙間から髪の毛が揺れるのが見えた。まばゆい金髪だった。
この金髪、僕と同じくらいの身長、それにこの声・・・?これはどれをとっても王子さんじゃないの!?
僕はいつの間にか両手で人影の腕を掴んでいたようで、その一方を放し、一瞬の隙をついて人影のフードに手をかけた。そしてフードをはらった。
パサ・・・。
衣擦れの音とともに、はだけたフードから最近よく見る人物の姿が現れた。僕は思わず呟いていた。
「王子さん・・・どうして君が?」




