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「ライナのお姉さんのお友達?」

 金の瞳の持ち主は見たことのあるお姉さんだった。お姉さんは唇を震わせながら言った。

「・・・セラーレテ様!」

 涙の溜まったお姉さんの目が僕をじっと見つめた。そしていくつかの涙がお姉さんの瞳からこぼれ落ちた。

「ライナのお姉さんのお友達だよね?その目どうしちゃったの?」

「私にもわからないのです。この場所に来たら急に目が熱くなり、そして目にかけた魔法がきれてしまいました。もう一度魔法をかけようと何度も試みるのですが、どうしてもできないのです」

 吸い込まれそうなほど澄んだお姉さんの金の眼差しを受け止めながら、僕はお姉さんの周りの様子を観察した。そしてすぐに発見した。お姉さんと僕の靴の跡で消えかかってはいたが、地面に幾何学的な模様が書かれていたのだ。

 

 ひどい!!ここに誰かが魔法を仕掛けたんだ。お姉さんの魔法を無効にするようなそんな魔法を。

 とりあえずこの場所から離れないと。いくら早朝だと言っても、誰かが通ってお姉さんの金の瞳を見ちゃったら、ただですまなくなっちゃう。


「お姉さん、誰かに見つからないようにあっちの森の中に入ろうよ。立てる?」

「はい、大丈夫です」

 踞ったままのお姉さんに手を伸ばすと、お姉さんは一瞬躊躇ってから僕の手を掴み、そしてその場で立ち上がった。僕とお姉さんは散歩道から外れ、森の中へと向かっていった。


「ここなら、人も通らないね」

「はい、セラーレテ様」

 僕とお姉さんは森の中を少し入ったところにある大木に背を預け、もたれかかって座った。

「お姉さん、落ち着いた?ここなら誰も来ないから安心だよ。急に魔法がきれてほんとにビックリしちゃうよね」

「はい。もう、どうしたらいいのかわかりませんでした。誰かと目でも合ったらと思うと怖くて怖くて・・・」

「だから、フードを深く被って踞っていたんだね。でも、もう大丈夫だよ」

 僕はにっこり笑うとお姉さんの金の瞳を覗きこんだ。お姉さんが、驚いて一瞬体をひいたけれども、すぐに僕のするままにしてくれた。僕はお姉さんの顔に手を伸ばした。

「ちょっと、ごめんね。目の横、触らせてね」

 そう言うと、僕はお姉さんの目の横とこめかみに触れた。そのまま額にも触れ、目の周りをそっと撫でた。

「目、閉じないで」

 お姉さんが思わず目を瞑ろうとしたが、僕はそれを制止した。


 お姉さんが言うように目の辺りが熱を持っているね。うーん、どうしよう?兄様がいたら、ちゃっちゃっと治してくれるんだろうけど、今は僕しかいないんだよね。


「セラーレテ様?」

 腕を組んで考え込む僕にお姉さんが心配そうに声をかけてきた。


 上手くいくかわかんないけど、やってみるとしようか。あっ、腕輪さん、魔法は使わないからね。


「ちょっと動かないでね」

 そうお姉さんに声をかけると僕は目を閉じ、お姉さんの額に自分のおでこをくっつけた。そして、心の中で念じた。『お姉さんにかかった魔法さんこっちにおいで』と。しばらくすると、じわじわと自分のおでこが熱くなってきた。


 成功したかもしれない!!


 ゆっくりと目を開けると、すぐ目の前のお姉さんと目が合った。お姉さんの瞳の色は前と変わらず金色だった。

「お姉さん、目に魔法かけてみて。いつものやつね」

「はい」

 お姉さんがゆっくりと金の目を閉じた。


 お姉さんぐらいになると、目を閉じるだけで金目の魔法がかけられるんだね。ライナやシュリモナはいつもブツブツ唱えているのに。


 お姉さんは数秒たらずで目を開けた。その瞳は晴天の空のような綺麗な水色をしていた。

「目の色、水色だよ。魔法かかってるよ」

「本当ですか?」

「うん、うん」

 喜んで何度も頷く僕にお姉さんも嬉しそうに微笑んだ。


 やっとお姉さんの笑顔が見れたね。


 喜ぶのもつかの間、笑顔のお姉さんの顔が一瞬で凍りついた。


 え?どうしたの?猛獣でも出たわけ?


 お姉さんの変貌ぶりにキョロキョロと首を動かして辺りを見渡したけれども、お姉さんの顔はただ一点、僕を見つめるだけだった。

「セラーレテ様・・・瞳の色が金色になっています」


 なんだって!? 

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