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僕とリーヤがこの場所に来てから10分ほど経った頃、目の前のガラスが急に震えだした。その一秒後、眼下に赤い炎が立ち上った。生徒を飲み込むことが出来るほどの大きな、そしてギラギラと赤く燃える炎であった。
「うわぁ!火だよっ!」
思わず叫んだ僕とは対照的にリーヤは息を飲んで、眼下にあらわれた炎を見つめていた。
うわぁ!こんな強い炎を出せるなんて、成人レベルだよ。ずば抜けた力を持っている生徒がいるんだね。誰だろ?
勝手に消えたのかそれとも自分で消したのか、はたまた教師が消したのかはわからないが、激しい炎はその存在感を強く消して、跡形もなく消えた。
「怪我人とか出てないだろうな」
心配そうな表情で呟くリーヤに先程まで燃えていた辺りを指差し僕は答えた。
「ねぇ、見て見て!あの生徒だよ。今の火を出したの」
「よく見えんな?結構距離があるのに・・・あっ!」
「え?リーヤ、どうしたの?もしかして、知っている人だった?」
「知っているもなにも、あいつだったのか・・・」
「誰?リーヤ、知っているの?」
僕は少しでも件の生徒を見ようと目を細めた。すると、僕の目に入ってきたのは、なんとも印象的な男子生徒の姿であった。
綺麗な金髪。月の光みたい・・・。
先程の炎の影響で大気に風が生まれたようで、彼の金髪は柔らかそうに揺れ、彼の着ているロープもフワリと浮き上がっていた。
そして、綺麗な顔。
建物の二階分ぐらい離れた距離だから、顔ははっきりとは見えないけれども、端正な顔をしているのが見てとれた。
「リーヤの知っている人?」
僕の問いにリーヤはガラスから顔をはずし、僕を見ていった。
「今の凄まじさ納得だよな。王子ナシュイハルトなんだからさ」
「王子?ナシュイハルト?」
それ、誰?
「えっ!レテ、知らないのかよ?」
僕が頷くと目を見開いて心底驚くリーヤ。
誰だよ、知らないよ。有名人だったとしても、僕、田舎育ちだからな。世間知らずなんだよ。まぁ、でも、王子って言うからには王子様ってこと?そこまでは、想像つくけど・・・。
「そっか・・・レテはこの学院に来たばっかりだもんな。知らなくても、不思議じゃないか。って、でもこの国の王子の名だよ、王子ナシュイハルトは。本当に知らない?」
「うん、知らない」
「めちゃくちゃ、有名人なのに知らないって?8番目に産まれた王子だから、普通は王位継承権とかもないに等しいんだけど、彼が産まれたときに大地が揺れて空からいくつもの雷や雹が降ってきた、人間以外の者達も誕生を喜んだという、祝福の王子ということで、王の器を持った人間と言われている存在なんだよな」
「へぇ・・・そうなんだ。知らなかった」
「この学院に入学したときにはすごい騒ぎになってさ、だから、この学院で彼のことを知らない人はいないってわけ。彼とは違う普通科の人間だったとしてもな。俺と同じ年齢だったと思うから、今は魔法科12歳クラス在籍かな」
ふーん。王子ねぇ・・・。しかも、王の器だって?だから、あんなに飛び抜けた力があったのか・・・。まだ、12歳なのに?




