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「あんた確か普通科の生徒だったわよね。なのに魔法科の生徒達にえらい人気者になってるじゃないの。あ、ほら、また手を振ってるわよ」
食堂のおばちゃんの指差す方に視線を向けると、数時間前に雪の世界で一緒に遭難して死にかけた内のひとりが僕に手を振っていた。僕はにこやかに手を振り返した。食堂に来てからずっとこんな調子でちょっとした人気者になってしまっていた。
あの食堂での閉じ込められ事件の後、誰に見つかることもなく逃げるように普通科へと戻った僕は、寮で日課のお昼寝をした。とても疲れていたようで3時間眠り続けたようだった。目が覚めると夜のお手伝いの時間10分前で、僕は大急ぎで魔法科の食堂に行き、昨日と同じようにカウンターに立ったのだった。ただ、昨日とは明らかに状況が違っていた。食堂に閉じ込められて仲良くなった人達が次々に僕に声をかけてくるのだった。それに、食堂に来るシルバー・レイの数も朝よりも増えていて、あからさまな態度はとらないにしろ、下級生なんかは立ち止まってフードの下から僕に視線を送るものだから、僕はおばちゃんが言うようにはたからみたら人気者に見えるのだった。
僕、明らかに目立っているよね?
「セラーレテ、Cセットを頼む。体は大丈夫か?」
どこかで聞いた声だと思って厨房から料理を受け取りながら振り向くと、リーダーがカウンター越しに立っていた。リーダーが気さくに僕に話しかけたのを見て、カウンターで並んでいた数人が少しざわめいた。
僕、また目立っちゃった?てか、話しかけただけで注目されるってどういうことよ?リーダー、本物の人気者だったりする?確かに見た目カッコいいと思うしリーダーだしね。僕、これ以上目立ちたくないんだけどな。
「体は全く問題ないです。それよりも、王子さんはどうなりました?」
「あの後、セラーレテはすぐにいなくなったから知らないんだな。王子ナシュイハルトはどこも怪我などしていなかったから、保健室でしばらく休んだ後、寮に戻ったようだ。今回の魔法の暴走で食堂に閉じ込められていた全員にポイントがつけられてな、王子ナシュイハルトがみんなを助けた功労者ということでひとりだけ20点をもらっていたが当然だな。特別賞ももらっていた」
へぇ・・・ポイントとかあるんだね。てか、20点が多いのか少ないのか、特別賞がいいのか悪いのか僕には全くわからないんだけどね。
「宝探しの試験はポイント制なんですね。なんだか面白いですね」
「セラーレテも当然ポイントを貰える権利があるんだがな」
「僕ですか!?いらないですよ!!普通科にはポイントなんてないですし」
そんなのもらったら、宝探しを覗き見ていたのがみんなにばれちゃうよ。普通科の教師にばれたりなんかしたら、これ以上どんな罰則をもらうか、考えただけで恐ろしいよ。
首を振っていらないことを必死にアピールする僕をリーダーは不思議そうに見つめ、そして言った。
「そうらしいな。知らなかった。お、旨そうだなあ!」
リーダーの注文の料理が出来たのでリーダーのプレートに載せると僕は言った。
「スープは熱いから気を付けてくださいね」
「わかった」
「あとですね、食堂に閉じ込められた時すごくカッコよかったです。ありがとうございました」
僕の言葉に一瞬驚いたような顔を見せたリーダーだったが、僕にウインクひとつ残すと友達数人とともに席の方へと向かって歩いていった。
リーダー、ウインクは寒いよ・・・。
「聞いてよ!」
リーダーのウインクに鳥肌をたてていると、またすぐにお客さんに声をかけられた。閉じ込められ仲間のお姉さん3人組だった。料理を注文しながらお姉さん達は興奮気味に話しだした。
「私たちはじめて30番以内に入ったのよ。それもこれも、君のおかげよ。君が食堂の宝の場所を教えてくれたからよ」
「そうそう、凍死しかけるハプニングもあったけど王子ナシュイハルトが助けてくれたしね」
「王子ナシュイハルトはなんと宝探しで2位の得点になったのよ。まだ12歳なのにさすがよね。毎回1位のシルバー・レイの王子様の次よ。すごいわよね」
ん?シルバー・レイの王子様って兄様のこと?毎回1位なのか・・・知らなかった。確かに、みんなが手こずっていた食堂の銀色の玉もあっという間に見つけちゃっていたもんね。銀国でも僕がフラフラとどこかに行ってしまって行方不明になっても見つけるのは決まって兄様だったし。兄様の特技見つけたり!!探し物屋さんとか始めたらいいのにね。
兄様に考えめぐらせていると、食堂がざわついた。すぐに腕輪がシャラララと音を奏でたので、姿を見なくても誰が来たのかわかってしまった。
腕輪さん、もしかして王子さんのこと好きなの?毎回毎回、反応してくれなくていいんですけど。




