表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/57

20

 ライナとシュリモナを席に追いやってしばらくすると、急にお客さんの数が減った。まだ19時30分頃だったが、今日のお客さんの波はもうおさまったようだった。

「ご飯、いってらっしゃいよ」

「はい。ありがとうございます」

 おばちゃんが僕所望のディナーAセットを渡してくれた。


 どこで食べようかな。


 僕は食堂を見渡し、空いている席を探した。注文する人が減っただけで、席について食事や談笑をしている人は多く、空いているところがなかなか見つからなかったが、人目につかない食堂の左端の方に席が空いているのを見つけた。席を探してキョロキョロしていた僕にライナがここに来いと手招きするのが、目の端に見えたが、さっき馬鹿にされてちょっと怒っているので知らんぷりをした。


 ふーんだ!ひとりで食べるからいいもん!!


 食堂の左端は食堂の構造上、食堂が背になるため、三方黒い壁に囲まれていた。僕はそこに腰かけゆっくりと食事を始めた。食べながら、思わず目の前の壁を擦ってみたけれども、ただの黒い壁だった。


 ほんと、黒いなぁ。シルバー・レイがあんまり食堂で食べないのがわかる気がする。明るいのが好きだからね。銀国の建物も白いものがほとんどだし。ここを最初に見たときはみんなびっくりしたんじゃないのかな。


「このお魚、脂がのっていて美味しいなぁ・・・。あ、このジャガイモの卵とじのジャガイモって僕が皮を剥いたやつなんじゃないの?うーん、美味しい!!」

 ニマニマと笑いながら、食事を楽しむ僕。そして、ふとライナのさっきの言葉が頭に浮かんだ。『レテが魔法科の食堂のカウンターにいるって、もうみんな知ってるんだぜ』


 ああ、今日はみんなのところに行ったら、きっと、質問攻めだろうね。気づかれないと思ったんだけど。ミナリコに見つかっちゃたからね。


「ふふ」

 昼間のミナリコ達の様子を思い出してひとり思い出し笑いをしながら、デザートのゼリーを食べていた僕だったが、今日2度目の感覚に突如襲われた。

「シャラララ・・・」

 腕輪が音を奏でた。すると、人のいる気配を感じた。恐る恐る振り返ると、予想通りの人が僕の前に立っていた。王子さんだった。

 王子さんの銀の目にじっと見つめられ、しばし僕は硬直してしまった。だからと言って、頭の中はその逆で、考えがぐちゃぐちゃに渦巻いていて、思考回路が今にも火を吹き出しそうだった。


 ちょ、ちょ、ちょ、何事!?なんで、王子さんが僕の前に立っているわけっ!!ここ、もしかして、王子さんの指定席だった?こんな隅の席が?それで、文句を言いにきたわけ?って、そんなわけないよね。


 少しずつ、締め付けてくる腕輪を手でおさえながら、王子さんの銀色の瞳を受け止める。


 銀色の目って、珍しいね。初めて見たや。みんなの髪の毛みたいで幻想的だねって、見惚れてる場合じゃなくて、えっと、そう、腕輪だよ。もう、王子さんを見て過剰反応しないでよ。もう、魔法使わないって。ね、見て。僕が使わなくても、王子さん自身が魔法の力をたくさん持ってるでしょ?


 僕の説得に納得したのか、腕輪が締め付けを止めた。でも、ゆるめることはなかったので、痛さでちょっと背中に汗が浮いてきた。すると、やっと王子さんが口を開いた。やっとと言っても、僕がひとりでぐちゃぐちゃと頭の中で這いずり回っていただけだから、本当のところは王子さんは現れて数秒後には口を開いていた。

「名前は何とおっしゃるんですか」


 ん?階段でぶつかった時のしゃべり方と全然違うね。これぞ王子様とでも言うような温和なしゃべり方だけど・・・。てか、僕名前聞かれてる?なんで?


「セラーレテ」

 練習した高い声を使わなくてもいいように僕は短く答えた。それでも、いつもの声と違うことを願ってちょっと喉の方から声を出してみたけど、相変わらずいつもと同じ声だった。

「失礼ですが、魔法科の生徒ではありませんね。まだ、小さいのに食堂で働かれているのですか?」

 王子さんはふわりと微笑みながら、またもや質問を投げかけてくる。

 

 あの、僕、小さい言われてますけど、確か王子さんと僕、同い年だったんじゃなかったけ。なんか、王子さん疲れる。


「普通科の生徒で、アルバイト」

 僕の答えを聞いて王子さんは静かに微笑んだ。

「そうですか」

「あの、仕事あるんで」

 まだ何か話したそうな王子さんをおいて、そしてゼリーの残ったプレートを持って、僕はそそくさとその場を後にした。


 王子さん、食堂の人事を任されてるとかじゃないよね。って、そんなはずないか。でも、だったら、なんで僕に話しかけきたの?

 うう・・・。初日ですで目をつけられたとか?僕、何も目立つことしてないのに。

 昨日の朝のぶつかり魔が僕だってばれた?でも、これは一応謝ってるんだから、もう僕は悪くありません。

 いやいや、きっとこうだよ。王子さんは王子さんと言うだけあって物凄く社交的なんだよ。だから、見かけない顔でひとりで食事をしている僕が気になって、声をかけたと。いわゆる、委員長タイプね。よっ!虹国の委員長!!


 無理矢理テンションをあげて、王子さんとの出会いをなかったことにしようとしている僕であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ