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 ・・・まだ見られてる気がするんですけど。僕ってば、自意識過剰?


 カウンターに見知らぬ人間がいたから不審に思っているのか、サンデッキ方面からの王子さんからの刺さるような視線はまだ続いたままだった。


 やっぱり、王子さんともなる人は食堂の人事にまで気を配ってる?それとも、カウンターの上にあるメニューを見てるだけ?


「おい、ぼうず!そっちの手があいたら、厨房に入ってくれねえか」

 厨房の料理人さんに声をかけられ、僕は好都合都とばかりに、おばちゃんに声をかけて厨房の中に入った。その時も、確かめるのが怖くて、サンデッキの方は一切見なかった。 

 

 あの・・・昨日、ぶつかったのが僕ってばれたわけじゃないよね。いやいや、ばれるわけないよね、だって、フードで完全に顔は隠れていたし、昨日のでわかるって言ったら、背格好ぐらいだよね。僕と同じ背格好なんて、たくさんいるし・・・。


「お、ぼうず!色々とやらかしてるらしいな。ここではお手柔らかに頼むぞ。ほんじゃさっそく、食器洗いを頼めるか」

「はい、よろしくお願いします。任せてください」

 ハツラツとした料理人さんに頼まれ、僕は厨房内の流し台で食器洗いにとりかかった。

「あっ!」

 食器洗いが楽しくなってきた頃、僕は小さな声をあげた。


 もしかして、声でばれた?

 いやいや、僕の声、ここで王子さんまだ聞いてないし・・・。


「すみませんでした」

 昨日、去り際に王子さんに残した言葉を復唱する僕。


 別にどこにでもあるような声だよね。これから僕の声を聞かれたとしても、わかりっこないよね。 


 でも、大丈夫だと思いつつも、不安が拭えない。僕は想像してみた。カウンターで王子さんと向き合い、料理を王子さんのプレートに載せて、声を出しているところを。


 うーん、見抜かれそう・・・。こうなったら、これしかないか。


 僕は引き続き食器を洗いながら、声を出した。

「ランチAセットになります」

 もっと低めの方がいいかな。

「ランチAセットになりやす」

 うーん、いまいちだね。今度は高めで。

「ランチAセットになりま~す」

 お、これなんて可愛くていいんじゃないの?これでいきましょ。

「おーい、ぼうず。さっきからひとりでペチャクチャ喋っているが、大丈夫か?」


 うわぁ、料理人さんのところまで僕の声が聞こえていたのね。


「大丈夫です!元気です!接客の練習していました!」

 笑顔でそう答えた僕だった。


 洗い終わった食器を拭きはじめたところで、近くで人に見られているような気配を感じた。気配のするカウンターに目を向けると、昨日の朝、僕に綺麗な指輪をくれた男の子が僕をじっと見つめていた。きっちりとフードを被っていたが、僕には彼だとすぐにわかった。他にもシルバー・レイが3人いた。僕は急いで厨房から出て、カウンターへと向かった。

「どうしたの?ミナリコ」

 僕が近付くとより一層顔を真っ赤にするのが、フードの下から見てとれた。

「こんなところにセラーレテ様がいらっしゃるなんて、びっくりしてしまいました」

「ちょっとね、校則違反が見つかって。ここでお手伝いしているんだ」

「まぁ、おかわいそうに」

 僕の言葉にミナリコの横にいた女の子が頬を赤らめて言った。

「でも、楽しいよ。君達にも会えたし」

 僕の言葉にミナリコ達はモジモジと固まってしまった。


 みんな、可愛いなぁ。今日、寮に行ったら、声をかけてみようっと。にしても、さいわい今、他のお客さんがいないからいいけど、カウンターであんまり留まっていたら、変に思われるかもしれないね。それでなくても、目立つフード被りのシルバー・レイだし。


「ご飯食べに来たんでしょ?何にする!お薦めはお子様ランチBセットだよ。卵ご飯の上に、旗が付くし、ゼリーも付くよ」

 僕の笑顔のプレゼンテーションに4人ともコクコクと頷いた。


 やっぱり、可愛いなぁ。


 できたお子様ランチを4人のプレートに載せると、4人とも僕に深々とお礼を言い、席に座りにいった。


「ちょっと、あんた、シルバー・レイと知り合いなの?」

 シルバー・レイと喋っていた僕を見逃すはずもなく、おばちゃんが興奮気味で尋ねてきた。

「ええ、まあ」

「そうなの?すごいわねぇ。なかなかいないわよ。だってシルバー・レイって自分達の国以外の人とはほとんど関わらないって言うのに。だから、ああやってフードを被って他人と関わらないようにしているんでしょ。目を隠すためもあるって聞くけど」

「それ、デマですよ。シルバー・レイって、銀の髪と皮膚が太陽にあまり強くないんです。それなのに、光が好きで太陽の下に出たがるから、フードを被っているんですよ」

「へぇ、そうだったの?それじゃ、別に話しかけてもいいのかしら。今の子達見てたら、あなたに話しかけられて、顔を真っ赤にして可愛かったわ。人間慣れしてないのね」

「話しかけるの大賛成です」

 笑顔で言った僕の言葉におばちゃんも嬉しそうに笑った。

  

 あからさまな迫害はなくなったけど、やっぱり異質感はずっとあるんだよね。みんな、一緒なのにね。


 仲良く並んで座るお子様ランチ4人組の方を見ると、4人とも僕を見ていた。僕に気付かれると、ばつが悪そうに視線を逸らした。ミナリコは慌てすぎて、スープ皿を倒しそうになっていた。

「大丈夫かなぁ」

 思わず呟きながら、ふとサンデッキに目を向けると、食事が終わったのだろう、いつの間にか王子さん達はいなくなっていた。


 どこを見てもスプーンやフォークはやっぱり浮いてないけれども、色々と面白いね、魔法科の食堂は。

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