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 お昼どき、魔法科の食堂はなぜか人が多かった。

 

 あれ?寮に残る人が多いいのかな?


 普通科ではリーヤやクラスメイト達が故郷の自分の家に帰ったように、今日、学院を出ていく人がほとんどであったが、食堂に溢れる魔法科の生徒達を見る限り、それは当てはまらなかった。

「ここの生徒達は、休みの間、家に帰らないんですか?」

 できた料理を手際よくプレートに載せていっているおばちゃんに、僕は声をかけた。

「魔法科は明日までテストだからね。ここも明日までは、忙しいのが続くよ」

 朝なら、このままおばちゃんの噂話が続くはずだったが、おばちゃんは手を止めずに視線だけ僕に向けて答えただけだった。朝とは比べ物にならないほど、お客さんがいてそんな暇がないからだった。僕もさっきから、厨房とカウンターを何十往復もしていた。できたてのBランチをプレートに載せながら、僕はひとりほくそ笑んでいた。


 僕、普通科でよかった。明日までテストがあるってことは、魔法科は普通科よりテストの種類が多いってことだもんね。あ、そういえば、昨日シルバー・レイの寮に行った時もライナが言ってたっけ。実技の試験がまだあるって。すっかり、忘れてた。


 13時近くになったところで、カウンターに並ぶお客さんの人数もずいぶん減ってきた。多くて、2、3人並ぶぐらいになった。2、3人ぐらいだったら、おばちゃんだけで十分さばけるので、料理の運びすぎで痛くなった手首を擦っていると、食堂の空気が変わった。食堂にいた生徒達の視線が一斉に食堂の入り口に向いたのである。

「ん?」

 気になり、僕も食堂の入り口付近に目をややった。すると、5、6人の集団がいた。そして、その中央に彼はいた。


 王子さんだ・・・。


 その瞬間、左手の手首付近でシャラランと小さな音がした。

 

 ちょ、ちょ、待ってよ。魔法は使いませんて。


 頭の中で魔法No!を繰り返しながら、腕輪を抑えていると、腕輪の振動が静かにおさまった。


 勘弁してほしいなぁ。前に王子さんに魔法を使ったからって、腕輪が王子さんを覚えてしまったみたい。王子さんにぶつかった時も腕輪は反応していたし。王子さんに近付かないようにしないと・・・。


 そうこうしている間に王子さんは友達たちと共に、テラス横のサンデッキへと移動していった。


 あそこ、いい場所だよね。ちょうど、空いていてよかったね。


「おばちゃん、幸せ!!王子ナシュイハルト様を見れたなんて」

 おばちゃんの嬉しそうな声に思わず、おばちゃんを見るとおばちゃんが続けた。

「あんたも今日はいいことあるかもよ。王子ナシュイハルト様を見たんだから」

「それって、加護の魔法とか?」

「カッー!夢がないねぇ。そういうことじゃなくてだよ。あんなに見目麗しいこの国の王子様を見たんだよ。それだけで、おばちゃん、いいことあったわ」

「はぁ・・・」

 

 おばちゃんの言葉の意味がよくわからないけど、おばちゃんは王子様のファンてことね。学院に来てから今まで見かけたことなかったし、それまでは銀国にいただけだったから、知らなかったけど、もしかして王子様、人気者なのかな?確かに、食堂にいる生徒達もみんな視線を送ってるもんなぁ。


 サンデッキにある木でできたベンチに座っている王子さんをみんなと同じようにボーッと見つめる僕。


 確かに、綺麗な顔してるもんね。金髪も見たことないぐらいキラキラだし。うん、魔法も溢れんばかりだし。あれ?やっぱり、あの時は異状事態だっただけなのかな。


「ぁ・・・」

 僕がじっと見ていたことで、視線を感じたのか王子さんが僕のいるカウンターの方に目を向けた。目が合いそうになる前に、僕は素早く視線を外した。


 みんなが見てるから、じっと見てても気づかれないかと思ったけど、不躾に見つめちゃってたね。ちょっと、反省。

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