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「リーヤ、こっちこっち!」
「ちょっと、待って!そんなに急がなくてもさぁ・・・」
「はやく行かないと終わっちゃうよ!」
「わかった、わかったから、にしても、よくこんな道を見つけたな」
「すごいでしょ?あ、そこ、気を付けてね。その枝、棘がいっぱいあるから、刺さったら痛いよ」
僕が説明した通り、リーヤは木々の生い茂った人ひとりがやっと通れる中を木の枝に触れないようにしながら、前を歩く僕に器用に付いてくる。
「さすが、運動神経抜群のリーヤだね。上手く枝を避けて歩くなんて、すごいや」
そう言って振り返った僕を見て、リーヤが声を上げる。
「ちょっ、レテ大丈夫?顔に棘が3つ刺さってるけど」
「うん、大丈夫だよ、後で抜くから。それよりも急がないと、魔法科の実技演習試験、終わっちゃうよ」
僕とリーヤは今、普通科の人間が勝手に入っては行けない魔法科の校舎を目指していた。
「何日か前に、レテが傷だらけだった原因がわかった気がする」
後ろから心配そうな声をかけるリーヤに僕は満面の笑みで答える。
「すごく、楽しみだね!火がボォ!と燃えたり、氷がザザザと降ってきたりするのかな」
「この目で魔法が見られるなんて、俺も楽しみ。見つかったときの罰が怖いけど」
「大丈夫だって!もし、見つかっても、きっと、夜中に部屋を抜け出したときと同じくらいだよ」
「あの時か・・・真夜中に寮の屋上に行ったやつ?」
僕は思い出し笑いをしながら答える。
「そうだよ。食堂の手伝い1週間。楽勝でしょう?」
「楽勝だな」
顔を見合わせ笑いあった僕とリーヤは今まで以上に足早になり、目的地の魔法科第4校舎が目で見える場所まで近付いていた。
「レテ、地下でやってんだろ?どうやって入るわけ?」
「まぁ、任せなさいって」
第4校舎に近づくと、そこには入らずにそのすぐ隣にある図書館へと僕は入る。リーヤもそれに続いた。
「レテ、ばれないのか?」
リーヤが不安そうに頷くのもわかる。森を抜けてここまでは、誰にも会うことがなかったけれども、ここは図書館、たくさんの人で溢れている。しかも、みんな魔法科の生徒達。
やっぱり、テスト期間中だからかなぁ?いつもより人が多いいや。でも、大丈夫だよ。今の僕達はどこからどう見ても、魔法科の生徒にしか見えないからね。
「リーヤ、安心して。何のために、魔法科の制服を着ていると思うの?」
「そうだけどさ・・・」
「ほら、キョロキョロしないで。目立っちゃうよ。フードで顔も隠れているから、絶対にばれっこないよ」
「そうだな」
僕達は広い図書館の中を右に左にと時には斜めにも進み、人気のない大柄な蔵書ばかりが置いてあるコーナーに来た。リーヤがフードを少しずらしながら、ため息をついた。
「ふぅ、緊張した。どこを見ても、魔法科の生徒ばっかりなんだもんな」
「うん、うん」
「普通科の俺達が魔法科の人達に会うことってないだろ、しかもこんなにたくさん」
「そうだよね、校舎も授業も寮も食堂も全部別々だもんね。だからこそ、見たくなるんだよね」
そう言いながら、僕はリーヤの前を歩き、一段端の本棚の横にある小さな階段を下りていく。
「リーヤ、狭いし急だから気を付けてね」
「こんな明らかに立ち入り禁止に見える階段入っていっていいのかよ?」
「大丈夫だよ、誰も来ないから」
「誰も来ないって何でわかるんだよ・・・あっ!レテ、もしかしてここに何度も来てるだろ?」
「あ、わかっちゃった?」
てへッと笑う僕にリーヤは苦笑いを返した。そして、僕に続いて階段を下り始めた。慎重に階段を下りるリーヤの足音を耳にしながら、30段ほど階段を下りると僕は止まった。
やっと、着いた!!
「リーヤ、ここだよ!ほら、見て!」
最後の階段3つをジャンプで下りたリーヤが僕に駆け寄ってくる。
「どこどこ?・・・うわぁ、すごいな!!」
階段の踊り場には僕の膝下までがガラスになっていて、そこから、隣の第4校舎の地下演習場が見える。僕とリーヤはすぐさま二人仲良く床に寝そべり、ガラスに顔を近付けて下を覗きこんだ。眼下には夕焼けや朝日を思い浮かべるようなたくさんの色が入り交じった光が無数に輝き、目が奪われるような光景が広がっていた。




