秋を『なづけ』’
まにまに、てふてふ。
……ふふ。
無意味な事を考えてしまいました。
不思議ですね、何故無意味な事を考えてしまうのでしょうか。
意味がある、と言えば。
亡骸と秋穂は、ちゃんとご飯を食べているのでしょうか。
健康に過ごしているのでしょうか。
傷口が腫れ、痛み以上の空腹に苛まれ、ふふ。私は今罰を受けています。
人間を殺してしまったから。
化物を飼っているから。
化物を買ってと頼んだから。
……色々と、お前はいけない事をした。
そう、親に言われました。
でも私には分かりません。私はただ幸せになろうとしただけなのです。ただ物事を、世界の決まりという物を教えようとしただけです。
何故。
何故?
私が何をしたというのでしょう。
おかしな事なんて、何もしていません。
いけない事なんて。
一つもしていないのに。
……何だか、おかしな物が見えています。
普通に、何の疑問も抱かず笑っている、少女。
何故普通に笑っているのでしょうか、同じ生き物として信じられません。
こんな物が存在して良いのでしょうか。
そんな訳ありません。
これはきっと化物です。
人間である父と母が笑っている姿を見た事がありません。
それに、他の人間が笑っている事を見た事が無いのです。
そういえば私の家に居る使用人の顔はどんな物だったのでしょうか。思い出せません。いえ、そんな事はどうでも良いのです。
笑っている化物は捕まえなくてはいけません。
そして、私が幸せになる為に生きるべきなのです。
ですが何故でしょう。
不思議な事に、体が動きません。
それどころか。
殺風景だったハズの室内が、いつの間にか外の風景に変わっています。
あぁ、夢なんだ。
私は今夢を見ている。
そう気付いたのはもう少し後でした。
見慣れぬ少女が、目の前で笑う、悲劇。
いえ拷問。
誰が、こんな嫌がらせをするのでしょうか。
何か私が、私がいけない事をしたのでしょうか。
そんなはずはありません。だって。
私は良い子なのです。
全て化物のせいだって、親も言っていました。
「化物はね、生きていてはいけないんだよ」
そうです。
「化物はね、不幸にならなくちゃいけないんだ」
その通りです。
「だから夏葉、お姉さんを殺しなさい」
はーい。
「……何で?」
何を言っているんでしょうこの馬鹿は。
「まぁ夏葉なんて事を言うの!?」
その通りです。
「バカも休み休み言いなさい」
そうです。
「だって、お姉ちゃんはお姉ちゃんでしょ?」
何を言うのですか、化物です。
人間だった姉は化物になってしまったのです。
ソレを殺す以外に何の手段が、方法があると言うのですか。
早くソイツをどうにかしないと。
血まみれの、貴方が。
赤と白の車に乗せられて、何処かへ連れて行かれてしまうのですよ。
何処かへ。
……あぁ、何処かへ。