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比奈です。
誕生日、覚えていてくださったんですね。ありがとうございます、とても嬉しいです。
プレゼントもありがとうございました。
でもこれ、桔梗さんとお揃いの万年筆ですよね?
読み返してみたら値が張ったって桔梗さんご自身が書かれていましたよ!
兄が最初に見つけて、ぎょっとしていました。十六の小娘に渡すような品ではない、と。
本当に私が頂いてもよろしいんでしょうか……?
勿論、ずっとずっと大事に使いますが、なんだか申し訳ないです。
おめでとうとお祝いしてくださっただけで幸せなので、日付なんてお気になさらなくていいんですよ。
お忙しい中、私のために時間を割いてくださっただけで充分です。なのでもう謝罪は禁止ですからね。
ところで、桔梗さんのお誕生日はいつなんでしょう?
もう祝われる年ではないからと、具体的な日付は教えてくださいませんでしたよね。
桔梗の花の開花時期は六月から九月にかけてですから、もしかして過ぎていたりはしませんよね!?
その場合は私もすぐにプレゼントを用意しますから、正直に答えてください。
桔梗さん、と最初に聞いた時とても素敵な名前だと思いました。
字面も音もですし、花もいつまでも見ていても飽きませんよね。
どなたがつけられたんでしょうか?
私の名前は父が考えてくれたそうです。陽菜と最後まで迷ったと言っていました。
同じ読みでも漢字が違うだけで印象も意味も異なってくるんですから、面白いですよね。
姓名判断や画数まで加えると、名前を考えるのは本当に大変そうです。
7月5日 比奈
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桔梗です。
万年筆は比奈さんのために購入したものですから、どうぞご遠慮なく受け取ってください。
ずっとお会い出来ていない事を考えると、これでも足りないくらいです。
それに教室に通い始めたお祝いでもあるので、使って頂いた方が万年筆も本望ですよ。
ですがやはり、気付かれてしまいましたね。
以前書いたのは覚えていたんですが、お揃いだというのは言わなければきっとばれないだろうと思っていました。
気を遣わせてしまったようで、こちらこそ申し訳ないです。
僕の誕生日は九月二日ですよ。その日の誕生日花が桔梗だったそうで、花が好きな母によって名付けられました。
ちなみに妹は菖蒲といって、こちらもやはり同じ理由です。
本によって書かれている日付が違ったりするのは、深くは気にしていけない事だそうです。
僕も気に入っている名前ではあるんですが、初対面では必ず女性に間違われるのが少々厄介でしたね。
字面的に大人の女性を連想したのか、わざわざ別のクラスから見に来た男子に落胆されたのは思い出したくない過去です……。
まあその時の男とは今でも連絡を取り合う仲ではあるんですけれど。
比奈さんと初めてお聞きした時、とてもお似合いの名前だと思いました。
でも確かに、比奈と陽菜ではイメージが異なってくるのが面白いですよね。
だからこそ親は名付けに苦労するのかもしれません。
妹の夫、義弟もあらゆる本を積み重ねて必死に悩んでいました。
名付けに関する本がこんなにあるのかと驚いたほどです。
ずっと読んでいると感覚が麻痺してしまったらしく、本に頼るから駄目なのよ! と怒られていましたけどね。
7月6日 桔梗