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モンスターファーミング  作者: 犬草
雑草畑と緑のスライム
4/21

03 スライムの触感って

 のんびりいきますよ

 ●8日目●


 あれから一週間が立った。

 開拓団は総勢25名。騎士団は1小隊10名の編成だ。

 ボクら開拓団の皆は協力して仮住まいを作り上げた。雨風を凌ぐためだけのものなので、寝るだけの機能しか備わっていない。

 ここ一週間はずっと同じことをしている。

 朝起きると草を刈り、朝食を食べて廃屋を取り壊し、昼食を食べて土地を均し、休憩を挟んで木材を調達し家屋を組み立てる。全員総出で速さ優先とは言え、すでに4軒の建物ができていた。1軒は協力していただいている騎士の方々に提供し、残りの3軒を寝所として使っている。ただし、ボクだけは事情が異なる。


 いつまでも黙っているのは不味いだろうと、2日目の昼に影狼のクロとグリーンスライムを紹介したところ、開拓団のみんなは素直に受け入れてくれた。さすが魔物に襲われるかもしれない第一次開拓に希望してやってきた人たちだ。肝っ玉が違う。

 

「さすがに寝てる時は」


 そんな彼らも魔物と共に寝泊りすることには難色を示し、ボクは牧場跡地で寝泊りをすることになったのだ。なのでボクの毎日は

 寝起き    スライムのエサ兼牧場跡地の草刈

 朝食後~夕食 皆と合流して作業

 夕食後    スライムのエサ兼牧場跡地の草刈

 となる。

 幸いにも牧場主の家だったらしき建物は形を保っており、すきま風はあれど屋根の下で寝泊りのできる環境にある。

 むしろスライムと寝泊りなんてご褒美ですよ。


「おはようございます、騎士様」

「おはよう、ポロン殿」


 毎日の日課となった朝の挨拶を告げる。

 さすがにボク一人を放置するわけにはいかず、2日目に道案内をしてもらった騎士様が護衛としてついている。夜は警護につき、昼は睡眠を取るといった生活をしているため両目が細くなっていた。


「クロもおはよう。キミもおはよう」


 クロが4本足で立ち上がり口を大きく開く。

 グリーンスライムが樽から姿を出してぽよ~んとゆっくり動く。

 スライムの多くは狭い場所を好む。岩の隙間、雑草の密集地、宝箱の中、洞窟。体を休めるときにはそう言った場所を好んで選ぶ。岩の亀裂から出てくる姿は、何も知らない人から見れば突然湧き出たように感じるはずだ。実際は人の気配に目をさましたスライムが姿を現しただけだの話である。

 

 寝起きのグリーンスライムに汲んできた水をかける。

 水を吸い込んで体を膨らませると、体を振って吸いきれなかった水分を払った。

 ぷるぷるぷる~ん、とか聞こえそう。

 

 この1週間で、廃屋を中心に雑草を刈り地面を均してた。スライムのためのエサを取りに行くにも少しばかりの距離を歩かなければならないくらいには整地することができたのだ。

 エサを持ってくると、グリーンスライムと騎士様が睨めっこをしている。

 スライムも騎士様のことを気にしているようだ。

 今日で1週間。騎士様もスライムに慣れたころだろう。


「騎士様。この子に触ってみませんか。触っても危険はありませんよ」

「しかしな」


 1週間の時間は確実にグリーンスライムへの敵愾心を失わせてくれたようだが、それでもまだ躊躇しているようだ。


「あの食事の光景を見ているとな。触っても食べられたりしないのか」


 これが騎士様の言い分だ。

 スライムは全身が目であり耳でり鼻であり、同時に肌であり口でもあるのだ。

 うっかり体の中に手を突っ込んでしまうと、ドロリと溶かされて骨になってしまう。

 そんな光景が頭の中に浮かんでしまうらしい。

 今こそ伝家の宝刀を振るうときだ。


「実はですね。スライムの触った感じは女性のアレに似ているそうなんですよ」

「アレ、とは?」

「おっぱいですよ。おっぱい。でっかい女性のおっぱいを触った時のような感じがするんです。初めて触ったときは感動しますよ」


 これがスライム専業家に伝わる宝刀。これで拒める男などいない!

 しかし騎士様の反応はボクが予想していたものは違った。

 怒り。だ。

 ポカンと口を開いていた騎士様は目を逆三角形にして口を真一文字に結ぶ。その美貌から予想もできないような地獄から這い出してきた亡者のごとく言葉を発した。


「ソレハ、キサマ、ワタシに、ケンカヲウッテイルノダナ」


 こ、これはまさか闘気!

 ごごごごごごと地面が揺れている。

 クロこんなときこそ君の出番だ! って、どうして影に隠れているんだい。飼い主のピンチだよ。

 ヘイ! カモン!

 

 クロはいつのまにか遠く離れた影の中へと逃げ込み、グリーンスライムは樽の中へと姿を隠していた。なんてこったい。


「違います、違いますよ。だから落ち着いてください。ボクが言ったのはファーマーの伝統みたいな、スライムが苦手な人に言う決まり文句みたいなもんです」


 これは騎士の誇りを侮辱したとかいうことだろうか。

 くう、この言葉を教えてくれたおじさん。今日だけはあなたを恨みます。

 とにかくボクが剣の錆になる前にどうにかしないと。


「騎士様なら相手に苦労しませんよね。それだけキレイなら選り取りみどりだろうし。女の人のおっぱいなんて触りなれてますよね。変なことを言ってすみません。あれですよ、ボクの兄なんか未だに独り身で、スライムに初めて触ったときなんか。『これこそ男の夢、希望、無限の可能性が込められた神の生み出した奇跡。オレは今まで生きてきた意味を知った』とか言って……」


 ボクこそ何を言ってるんだ。

 兄さんも人に自慢できるような言葉を、そんな状況で言わないでくれ。

 ああ、騎士様! 剣はダメですよ。槍もダメですよ。ボクはヒューマンですよ、分裂はできませんって。 割っちゃダメですって!

 あああっ! 


 ――――――――――――――

 ポロンのモンスターファーム

 状態:整地済み(20%)、雑草畑(80%)

    修繕された家屋

 ペット:影狼のクロ

 蓄魔:グリーンスライム ×1

 ――――――――――――――


 読んで下さってありがとうございす


 スライムの触感が果たして本当にそうなのか。それは異世界にダイブしないとわかりません。永遠の謎であります

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