とある人物との会話
モンスターファーマーと聞いて何を思い浮かべるだろうか。
日々、モンスターのトレーニングを行い、時にはスキルを覚えさせ、人が扱いやすいよう調教する。
果ては各地の闘技場で見世物。
そんなところだろうか。
もちろんそういった人たちもいる。
闘技場で 小竜 と黒縞虎の闘いは手に汗握るし、一時も目の離せない緊張感がある。
でもボクが思い浮かべるのは別のものだ。
モンスターファーマーとは、魔物を育て人々の役に立つよう還元する職業だ。
一つは従属魔を育てるもの
最もわかり易いものをあげるなら、軍人騎士のために俊馬や黒夢馬を育てる人だろう。軍にとってもなくてはならない騎兵のため、世界中で重宝されている。中には天馬や一角馬という世話の難しい種類を育てている人もいるそうだ。
他にも冒険者たちのために、索敵用の探知鷹や攻撃用の狼、さらには魔術師の護衛用に鎧熊を育てている豪なものもいる。
一つは畜魔を育てるもの。
代表的なものを挙げるならお肉豚という野生とは違って温和なオークや、スライムが有名だろう。
食用の他にも多くの、人々の生活に役立つ物品の元となる素材を、多岐に渡って産みだしてくれる。そんなボクらヒューマンの良き隣人たちを世話する役目。
ボクが目指しているものは後者に当たる。
小さい頃。初めてスライムに触れたときの感動からボクは魔物に夢中になった。野生のスライムにエサを上げて怒られたのも、今ではいい思い出だ。
そんな僕が働くのは、スライム牧場。
家の近くでスライムを専業にしているモンスターファーマーに頼みこんで働かせてもらっている。
世話に熱中していると『小さいのに大変だね』と言われたものだが『いえ、むしろご褒美です』と答えると、一様に皆笑ってくれたものだ。思い出すと引きつっているようにも見えるが気のせいだろう。
だって一日中スライムの近くにいられるんだよ。あのぷよっとした触感が近くにあるんだ。最高じゃないか。大変なのはむしろ、あの柔らかな体を触り過ぎないように自分を戒めなければならないことだ。
ああスライム! ああスライム!
君たちはなんて罪作りな体をしているんだ!
パンよりも柔らかで、弾力のある体はボクを魅了して止まないよ
まったくもってけしからん!
まったくもってけしからん!
ぷよぷよぷよぷよぽよよよよん!
失敬。
少しばかり魔物愛が溢れてしまったようだね。
話というのは、ボクの転機になる出来事が起きたことについてだ。
えっ、ならそれを早くは話せって?わかってるよ、すぐに話す。
働いているところのおじさんから言われたんだ。牧場を経営してみないかってね。
理由は知らないけど、何でもとある廃村を再開拓をするらしい。
再開拓なら土地は余っているだろうし、まったくの未開発よりはやりやすいだろうからって。
それで、今度ボクはその開拓団に参加することになったわけ。
本当に小さい頃から世話になりっぱなしだよ。
いつか恩を返さないと。
えっ! どうして相談しなかったのかって、こんなにいい話はないよ。断ったりしたら絶対に後悔するよ。痛いよ、顔を抓らないで!
ところでお願いがあるんだ。エリザ、どうしたの顔が赤いよ。どうしてもって言うならいいって、ありがとうキミはボクの大親友だ。少しだけお金を貸してプギャア!
どうして怒ってるのさ、わけがわからないよ?
読んで下さってありがとうございました