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1:晴天の霹靂

「やった!成功~!」


それは何の変哲も無い日常の1日だったはずだった。


道で転んだらしい女の子の手を取った途端目の前が真っ暗になり、転んでしまったのか地面に尻もちをついていた。


突然過ぎて何が起こったのかも分からないが、そんな自分の耳に()()()嬉しそうな声が届く。


成功?自分の声!?




「前から思ってたのよね。ドアマットヒロインだとか逆ざまぁだとか苦難があるからハッピーエンドが際立つだなんて。読んでる分にはいいけど自分だったら全部スキップしてやるのに!って。」




呆然と見上げた先で、楽しくて仕方が無いという様子で満面の笑みをうかべつつくるりと回る自分の姿。


視界に広がる現実を受け入れられない。




「まぁ読んでる時だってざまぁ部分やハッピーエンド以外はスキップしちゃったんだけど。」




回り終わるとこちらの顔を覗く様に少し屈んで顔を寄せて来た自分が、笑みに目を細める仕草に恐怖なのか胃から何かが迫り上がって来るような気すらする。


一体、何が起こっているのか。




「何も分かってないって顔ね?てっきり転生者だと思ってたのに。

まぁいいわ。あんたがあんたに生まれたのが悪いのよ。残念だったわね。

いい?よく聞きなさい。ここはねあたしの為の世界なの。

6年後あんたが学園に入学してあたしの婚約者と浮気するんだけど、卒業式であたしがあんたと婚約者をざまぁしてあんたは処刑になるのよ。

そしてあたしは王太子に繰り上がった第二王子とハッピーエンドー!

でもね。浮気されて我慢する学生生活も面倒な淑女教育も絶対にお断り!

だから思いついたの。苦難いらないとこはぜーんぶ悪役ヒドインにおしつけていいとこ取りすればいいやって!」




そもそも王太子好みじゃないのよねと饒舌に話す自分の声が何を言っているのか頭に入って来ない。


ただただ震える体と迫り上がる何かをそのままにその楽しそうな顔を見上げている事しか出来なかった。




「これからあんたは公爵令嬢ヴァイオレットとして過ごすの。

あたしがあんたとして楽しく学園生活してる間にせいぜい淑女教育と王太子妃教育をがんばってよね。

習った事は体が覚えてるってよく言うでしょ?あんたががんばった分あたしに恩恵があるって寸法なの。

あたしって頭良いでしょ?どうせあんたはざまぁされる為にこの世界に居るんだから

ちょっと早まって嫌な時間が増えたって誤差よね?」




「な…にを…」




言っているのかと、言葉を続ける事もできなかったが、かろうじて出した言葉は聞き覚えの全くない声で。




「余計な口答えはすんじゃないわよ。あんたがちゃんとしなかったらあんたの家族の命は無いわ。

これね。数滴で人が殺せる毒なのよ。分かるでしょ?

これからあんたの姿で暮らすんだからあたしにはあんたの家族の命なんてなんとでもなるんだから」




「…ヒッ」




家族の命を盾に取るその言葉と合わされた視線に喉の奥からひきつれた音が漏れる。




「いい?『分かりました。』以外は聞かないわ。

あんたはこれからこいつと公爵邸に帰って階段から落ちて記憶喪失になるの。

そこから学園卒業まであたしの代わりにオベンキョウを頑張る。

あんたが断罪される直前にこの体は返してあげるし、そのままあんたが断罪されればあんたの家族には手は出さないわ。」




指し示されて初めて近くにもう1人、人が居た事に気付いてそちらに視線を向けると見たことの無い高そうな身なりの青年の感情の籠らない目がこちらを見ている。


ここは、ただのいつも通る店への近道だったはずだ。


何の変りも無いいつも通りの・・・こんなお貴族の方が通らない・・・




「ちょっと!黙ってないで分かりましたって答えなさいよ!それしか選択肢は無いって教えたでしょ!

そんな事も出来ないの!?このグズ。

あぁあとコイツを取り込もうったって無駄よ?こいつにはね従属の魔法がかけてあるの。あたしに絶対服従だから。

変な動きをしたら、家族の命は無いわ。肝に命じて必至でオベンキョウしてイイコにしてることね。」




動かない頭で考えても、何が起こっているのか把握出来ない。


そもそも自分は貴族様の学園などに通う予定は全く無いし、公爵令嬢様やましてや王子様などには一生お目にかかる事すら無いはずなのだ。


今分かるのは、今よく考えず自分が目の前の自分の姿をした人に、逆らうような事をするべきじゃ無いって事。




「はい、分かりました。」




答えた声はやはり、聞き覚えのない声だった。

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