農奴の少年の、その後
春になった。
旅を始めてから、一年と少しが経っていた。
ラグナの街に戻ってきた。最初に四人が揃った街だ。
ガースがギルドで仕事の引き継ぎをした。マリィが街の子どもたちと走り回った。エリナが治癒師として腕試しをした。
僕はその間、街の外れの丘に座って、遠くを見ていた。
レベルはゼロのままだ。《リミットブレイク》はもう使えない。普通の人間より少し戦えるのは、旅の中で鍛えた体と技術があるからで、特別な力は何もない。
それが寂しいかというと、不思議と寂しくなかった。
あの力があったから守れたことは、本当だ。でも、あの力がなくても守りたいという気持ちは変わらない。体はあるし、仲間もいる。
エリナが丘に上がってきた。
「何を考えていたんですか」
「いろいろ」
「具体的には」
「ジジィのこととか、マリィのこととか、あとは……村のこと」
エリナが隣に腰を下ろした。
「村に帰りたいですか」
「帰れないですよね、まだ」
「いつかは帰れるかもしれない」
「そうですね」と言った。「ジジィに報告したいことがあるので」
「どんな報告ですか」
「農奴の子が、ここまで来たっていう話です。大したことじゃないけど、聞いてもらいたい」
エリナが少し笑った。
「大したことです」
「そうですか」
「大したことです。断言します」
風が吹いた。春の風で、少し暖かかった。
マリィが丘の下から「ルカー!」と叫んだ。「何してるのー!」
「座ってるだけ!」
「暇そうー!」
「暇じゃないよ!」
叫び合っていたら、ガースが「うるさい」と言いながら丘に上がってきた。
四人で、丘の上にいた。
遠くに山が見えた。北の山脈も、かすかに見えた。
ヴェインは、もういないかもしれない。
守れなかった人がいた。削りすぎた何かがあった。でも最後まで、レナという名前を覚えていた。
それは、一つの形の強さだと思う。
僕は両手を見た。
荒れた手だ。農作業と旅で、前よりもっと荒れた手だ。
《リミットブレイク》はもう使えない。レベルもゼロだ。特別な力は何もない。
でも、この手で守れたものは、本当にあった。
それで十分だと思った。
それで十分だ。
「ルカ、腹減ったー!」
マリィが叫んだ。
「じゃあ下りよう」と言った。
丘を下りた。
四人で、食事に向かった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
ルカはずっと、「大丈夫」と言いながら大丈夫じゃないことがたくさんありました。それでも前を向いて、守りたいものの顔を見て、戦い続けました。
彼が農奴として生まれたことも、力に代償があったことも、変えられない事実です。でも、それがあったからこそ出会えた人たちがいて、届けられたものがあった。
ヴェインは、別の選択をした人です。間違えたとは思いません。ただ、一人で抱えすぎた。
ルカは、一人じゃなかった。
それが、二人の違いだったと思っています。
読んでくださったあなたへ。ありがとうございました。




