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最後の戦い

王都での戦いは、一夜だった。 ガースが囮になって衛兵を引きつけた。エリナがマリィを連れて安全な場所に隠れた。僕が宮廷の奥に向かった。 一人で動く方が速かった。 途中で何人かの衛兵と戦った。《リミットブレイク》を使わなかった。ガースと一緒に旅した数ヶ月で、使わなくても戦える方法を、少しずつ覚えていた。 ダルグのいる部屋に辿り着いた時、僕のレベルはまだ2だった。 ダルグは老人だった。ヴェインより老けていた。でも目が違う。ヴェインの目には何かが残っていたが、この男の目には、何もなかった。「よく来たな、農奴の子」とダルグは言った。「お前のスキルは素晴らしい。あれが自然発生したのなら、農奴にも可能性があると証明された。だが計画的に付与できれば、もっと多くの戦力が作れる」「人を道具にする気ですか」「道具でない存在がいるか。貴族も騎士も農奴も、この国では全員、誰かの道具だ」「違います」と言った。「少なくとも、僕の村の人たちは道具じゃなかった」 ダルグが笑った。 戦いが始まった。 ダルグは強かった。宮廷魔術師団の長だけあって、多重の術式を持っていた。普通に戦えば勝てない。 使うべきか、というよりも。 使う前に守りたいものを見ろ、とヴェインが言った。 僕は目を閉じた一瞬で、見た。 マリィの顔。エリナの顔。ガースの背中。ジジィの腰の曲がった後ろ姿。村の人たちの顔。 あの廃村の老農奴の目。 王都の外れで虚ろな目をしていた農奴たちの顔。 全部、見えた。 まだ見えた。「《リミットブレイク》」 小さく、でも確かに言った。 世界が変わった。 一つだけ違うことがあった。 今まで使う時、どこかで怖かった。削れていく恐怖があった。でも今回は、怖くなかった。 守りたいものの顔が、はっきり見えていたから。 ダルグの術式が見えた。隙間が見えた。そこに動いた。 長い戦いではなかった。《リミットブレイク》が続いている時間の中で、ダルグの防御を崩して、術式の核に手が届いた。 ダルグが膝をついた。「農奴の子が……」と言った。「農奴の子ですよ」と言った。「それが何か」 ダルグが答えなかった。 戦いが終わった。 ◇ 部屋の外に出た。 ステータスを確認した。 レベル:0。 ゼロになっていた。 でも、立っていた。倒れなかった。視界も、ちゃんとあった。 何かが変わったのかはわからなかった。これから何が起きるのかもわからなかった。 ただ、今は立っていた。 廊下の向こうから、足音が聞こえた。ガースだった。少し血が出ていたが、歩いていた。「生きてるか」とガースが言った。「生きてます」「レベルは」「ゼロです」 ガースが少し目を閉じた。それから、「そうか」と言った。「大丈夫です」と言った。「大丈夫かどうか、それはまだわからんだろ」「そうかもしれないですけど」 エリナとマリィが来た。マリィが駆けてきて、僕に抱きついた。小さな体がぶつかってきた。「ルカ! 生きてる!」「生きてるよ」「レベルゼロだって聞いた、エリナさんが言ってた」「そうなった」 マリィが顔を上げた。泣いていた。泣きながら「よかった」と言った。「よかった、の方向が、何がよかったんですか」と聞いたら、「生きてるのが」と言った。 そうか、と思った。 生きていた。それは確かにそうだ。

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