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倒した敵は俺の力になる 〜魔物だらけのダンジョンを攻略しながら、ドロップ品を配信で売って一気に億万長者へ〜  作者: 上部乱
巽の塔

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第6話 ピクシー大合戦


ダンジョンの奥から聞こえる羽音が、

途切れることのない波となって重なり合っていく。


ピクシーが次々と押し寄せてくる。


俺のような体格の人間にとって、

迷宮の狭い通路は小隊編成のゲリラ戦に向いている。


だが俺は気づいていなかった。

ピクシーたちは、

そう見ていないかもしれないということに。


俺はずっとピクシーたちに、

はぐれ個体を各自で狩らせていた。


あの頃は、敵は明、俺は暗。

ゲリラ戦は効いていた。


だが今、向こうはすでに俺の存在をはっきり認識している。

厄介事の根源を一気に叩き潰すことにしたのだ。


ピクシーたちにとって、

ここは平原の会戦場のように広い。


正面対決なら、

自分たちに有利だと思っているのだろう。


「前に出て防衛線を維持しろ。」


盾役に命じ、素早く半円形に並ばせる。

盾面を互い違いに重ね、即席の防壁を形成する。


後列のスリングと風術師が安定して攻撃を続ける。


石弾が中空に規則的な弧を描き、

風刃が一列ずつ敵の前線を断ち切っていく。


敵から上がる悲鳴はどれも極めて細い。

それが積み重なると、迷宮の奥で轟く濁流のような響きになる。


【ワイルド・ピクシーを撃破】

Exp +15

【ワイルド・ピクシーを撃破】

Exp +15

……


経験値バーが目に見える速さで上昇していく。


【Level Up】

レベルが5になった。


数値をゆっくり確認する暇もないうちに、

次の波が押し寄せてきた。


湧き出す数が異常になり始めた。


もともと一度に十数匹規模だったのが、

今や数十匹が同時に押し寄せてくる。


前線への圧力が一気に倍増し、

ついに最初の損耗が出た。


何度も攻撃を受け続けた盾役が、

風刃をまともに食らった。


Hp -18。


続けて二撃目の術式が落ち、盾面が砕け、

個体が光の粒子となって崩れ散った。


野次馬の連中が、俺の配信のコメント欄をひっきりなしに更新し続けている。


『落ちた!』

『耗損が始まった!』

『会戦になってきた!』

……


迷う暇などない。

敵も相当数倒れている。


俺は素早くシステムの選択肢を操作した。


「従者、従者、従者……」

指が止まらない。


倒したばかりの防衛型ピクシーがすぐさま従者に転換され、

青い光が再構成し、新しい盾役が欠けた穴にシームレスに入り込む。


陣形は一瞬揺らいだだけで、

すぐに安定を取り戻した。


その他の種類はずっと後方に温存し続けている。


これは会戦だ。


敵は俺の前線に体当たりをかけてくる。

俺は戦力をできるだけ温存している。


敵は尽きることなく押し寄せ、

俺の経験値も同じように狂ったように積み上がっていく。


【Level Up】

Level 6


反応がさらに上昇し、

筋力も同時に増加する。


世界が俺の目にはまた一段とスローモーションに映り、

敵の飛行軌跡は予測線を引いたように鮮明だ。


翅が気流を切り裂いた後に残る微妙な歪みまで見えた。


俺のレベルアップが脅威の増大と見なされたのか、

向こうが送り込んでくるピクシーは一波ごとに激しくなっていく。


軍団の数はすでに百を突破し、

数分も経たないうちに二百前後で揺れ動いている。


撃破、収編、補充——

このサイクルが安定して回り続けている。


だが敵の総数は一向に減る気配がない。


もともとこのダンジョンでは、

一人でモンスターを狩るアクションRPGをやっているようだった。


それがいつの間にか、戦略シミュレーションゲームに変わっていた。


知恵の書がいっそのこと、俺の視野の周囲に新しいウィンドウを開いた——


【槍:47】【礫:31】【袋:26】

【盾:44】【杖:21】【工:39】


この数字が一秒ごとに変わり続けている。


もう正面からぶつかるしかない!

突然、湧き出しが止まった。


前線全体に一秒間の奇妙な静寂が訪れた。


配信のチャット欄の視聴者たちも、

何かが違うと感じ取っている。

誰もコメントを流さなくなった。


これはきっと、日本全土で一番多くの人が同時に息を呑んだ瞬間だ。


何かが変わる——そう予感できた。


俺のピクシー軍団が中空で旋回しながら、

次の攻勢を待っている。


この空白は、

さっきの乱戦よりもずっと不気味だった。

そして、迷宮全体が震動し始めた。


湿り気を帯びた、

ねっとりとした蠕動音がする。


壁面が膨らみ、

石の隙間から蜜色の液体が滲み出し、

空気中に見覚えのある甘い匂いが漂う

——秘醸蜜?


暗闇が「押し開けられた」。


不規則な肉質の塊が、

迷宮の奥からずるずると押し出されてきた。


巨大なナマコのような、

黄色くて、軟らかくてぬめぬめした何かだ。


その表面は半透明の嚢胞に覆われていて、

一つ一つの嚢胞の中に、まだ形になっていないピクシーが包まれている。


中で蠢き、翅を打ち、もがき、

そして嚢膜が破れると、

新生体が肉壁から直接振翅して飛び立っていく。


『あれは何!?』

『ボスはピクシーの女王だと思ってたのに!』

『巣の本体!?』

『気持ち悪い、早く倒してくれ!』

『ボスを直接引きずり出してしまったぞ!』


システム通知が浮かぶ。


【特殊個体出現】

【ピクシーの活蠕巣かつぜんそう

【継続ユニット生成】

【周辺ユニット能力上昇】


新生体の翅が赤い光を帯び、

攻撃と移動の頻度が目に見えて上がった。


前線への圧力が一気に跳ね上がり、

十数体の盾役が同時に崩れ散った。


補充する、また崩れる、また補充する。


新生兵力を埋める速度が、

向こうに追いつかなくなり始めた。


後方から戦場全体を俯瞰する。


一目でわかった——あれが存在する限り、

湧き出しは止まらない。


「全員、三十メートル後退。」

戦略を変更し、無意味な雑魚狩りをやめた。


「術式を一点集中。」

ずっと温存してきた兵力を、

今こそ投入する時だ。


石弾、ヤリ、風刃が一斉に蜜色の結晶へと叩き込まれる。


Hp -3

Hp -5

Hp -7

……


こちらが安定したダメージを与え始める。


活蠕巣の蠕動リズムが乱れ、

いくつかの嚢胞が早まって破裂した。


チャット欄が沸いた。


『HPが削れてる!』

『押せ押せ!』


ピクシーの生成頻度が下がり始めた。


もう一押し!

もう一度!

もうすぐ終わる!


だが、現実は思い通りにはいかなかった。

後方で異様な動きが起きた。


数匹の奴工型ピクシーが高速で戦場の端を掠め、

布囊を背負ったまま活蠕巣へと一直線に飛んでいく。


俺はしばらく、彼らが何をしようとしているのか理解できなかった。


一匹が布囊を引き裂き、

未成熟の蜜塊と嚢膜の残片を肉壁の亀裂に押し込んだ。


活蠕巣の表面が膨らみ、

栄養剤でも与えられたかのように、

穏やかにうねった。


Hp +12

Hp +12

Hp +12

……

チャット欄が再び静まり返った。


『回復!?』

『ちょっと!ダンジョン一層目でこれ?』

『せめて初心者のモンスターを出してくれよ!』

『スライム、スライム、せめてゴブリンでもいい!』


二袋目が届いた。


Hp +12

Hp +12

Hp +12

……

活蠕巣のHPバーが強引に引き戻された。


奴工はただの生産ユニットだと思っていた。

まさか、ヒーラー役だったとは!


「補給を断て!」

俺はすぐさま命令を切り替え、


三手に分けた。

一隊が活蠕巣を制圧——主力は風術師と投石。

一隊が前線を支える——主力は盾と砂袋。

三隊目はヤリ持ちと奴工で、敵方の奴工の迎撃に専念させる。


活蠕巣が意図を察知したかのように、

新生体の生成頻度がまた上がり、

赤翅個体が急降下して時間を稼ごうとする。


戦場のリズムが引き戻された。

俺は向こうの生体バランスを崩そうとしている。


向こうは族群全体で自分自身を修復しようとしている。


湧き出し。

消耗。

補給。

回復。

繰り返し。


打開策となるダメージを生み出せなければ、

この戦いは無限ループに引き込まれる——

そう深く考えた。


俺は決断した。

一か八かの賭けに出る。


巣体へのダメージを諦め、

敵方の補給線を断つことに専念する。


「奴工の撃破を優先しろ。」

「全軍、切断モードに移行。」


軍団が再編成される。

防衛型は引き続き前線を守る。


風術師が敵軍を制圧し、

俺に安定した兵力の供給をもたらす。


奴工、スリング、ヤリが、

敵方の補給奴工の狩りに専念する。


二兎を追う者は一兎をも得ず。

まず奴工に餌を運ばせる能力を奪わなければならない。


撃破通知が鳴り続ける。


【Level Up】

Level 7


自由割振りポイントが増え続ける。


撃破数がついに四桁に入った。


もはやこの会戦の勝敗は、

単純な数の問題ではなくリズムの問題だ。


補給を先に断てれば、

あの気持ち悪いピクシーの巣は、

いずれ叩き潰せる。


だが一歩遅れれば——

迷宮全体が繁殖場になってしまう。


いや、迷宮の中だけじゃない。

東京都全体が陥落するかもしれない。


配信のチャット欄では、

最初から誰かが言っていた。


駅で奇妙な虫を見たという話を。


ということは、

この迷宮から出る方法が必ずあるということでもあるのか?


考えている暇はない。

会戦は第二段階へと突入しようとしている。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


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