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倒した敵は俺の力になる 〜魔物だらけのダンジョンを攻略しながら、ドロップ品を配信で売って一気に億万長者へ〜  作者: 上部乱
巽の塔

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第16話 運命型タンク


「二名足りないぞ……加奈かな祐希ゆうきはどうした!?」


隊長の緊張が、

緩んでいた空気を一瞬で引き締めた。


傍らにいた隊員が、

不安を隠せない様子で言葉を継ぐ。


「祐希さんは包囲される直前、迷宮の奥から子供の泣き声が聞こえると言って、一人で確認しに向かいました」


「加奈は?」


「彼女は祐希さんを追いかけました……一人で行かせるわけにはいかないって」


隊長の顎の筋肉がピクリと動いた。


「……いつの話だ?」

「だいたい……四十分前です」


電話の向こうから若菜わかなの声が届く。

明らかに心配しているのが伝わってくる。


真澄ますみくん……」

「聞こえてる」

俺は視線をフェアリーに向けた。


「奴工を出せ。さらに奥を捜索しろ」

フェアリーは俺の心を読み取っていたかのように、既に十数匹の奴工を放っていた。


チャット欄の空気が一変する。

『四十分前か……』

『二人だけで入ったのかよ!?』

『あの中にまだ子供がいるのか?』

『急げ! 命がかかってるんだぞ!』


「あんたたちは先に言った通り、行き先を強くイメージして脱出の準備をしてくれ」


俺は隊長に告げた。

「同僚の二人と、その子供は、

 俺がなんとかする」

奴工からの知覚同期を待つ間、

俺は手を休めなかった。


「フェアリー、蠕巣蝋ぜんそうろうは137個あるな。

 まずは『妖精の蜜工房』を建てるぞ」


彼女の瞳がぱっと輝いた。

まるで長年待ちわびた指令をようやく受け取った執事のような顔だ。


「賢明な判断ですわ、主人。

まずは基本素材の量産体制を整えること。

そうすれば、後の建築に必要なリソースも自ずと集まります」


「ああ、そういうことだ」俺は頷いた。


地面から金色の光粒が湧き上がり、回廊の壁際に蝋質の構造物でできた小さな建築物が急速に形を成していく。


【妖精の蜜工房:稼働開始】

秘醸蜜ひじょうみつ、蠕巣蝋、秘醸酒ひじょうしゅ 生産中】


チャット欄がそれに反応した。

『建てた! ついに建設開始だ!』

『まずは蜜の量産か!』

『リソースを先に押さえるのは鉄則だよな!』


フェアリーはしなやかに一礼した。

「お任せくださいませ!」


そう言う時、

彼女は口元に微かな笑みを浮かべ、

さちの方をちらりと見た。


幸はアルミバットを握ったまま彼女を無視したが、耳の根が真っ赤になっている。


チャット欄はその細かい変化を逃さない。


『フェアリー、何やってんだよwww』

『マウント取り合ってるのか?』

『幸ちゃん、バットをしっかり握るんだ。

 きっと出番があるぞ』


そんな野次馬な観客たちに構っている暇はなかった。


奴工から知覚が戻ってきた。

どうやら見つけたらしい!


場所は回廊のさらに奥。

三つの人間の体温反応——大人二名、

子供一名。全員まだ生きている。


「フェアリー、

妖精の軍勢にはそのまま包囲を維持させろ。

はぐれた風霊鳥ふうれいちょうを再合流させるな」


「主人はお一人で行かれるおつもりですか?」彼女は少し心配そうに尋ねた。


「まさか」俺は笑って答える。


俺は自軍の部隊へと向き直った。

「フェアリー、攻守のバランスを考えた編制を頼む。それと……」


俺は意識を使い、

風霊鳥の従者たちを操作する。


フェアリーはどうやらこれらの鳥に直接命令を下すことはできないようだ。


翡翠の翼と妖精の微光が交錯し、

俺の背後に整然と並ぶ混成部隊。


チャット欄には羨望と嫉妬の入り混じった空気が漂う。


『この陣容! 混成部隊きたー!』

『まともな領主様に見えるぞ、この威圧感!』


幸が歩み寄り、ヘルメットを被り直した。

「私も行く」

「お前は——」

「さっきレベルが上がったもん」

彼女は真剣な眼差しで言った。


「私、きっと真澄くんをしっかり守ってみせるから」


彼女、まだ自分が俺を守るつもりでいるのか……。


俺は幸を見つめ、

脳裏にある思考がよぎった。


昨日の予言——。

彼女は百三歳まで生き、病室のベッドの上で「老衰」によって亡くなる。


もし、これほど長期的な予言が覆される可能性があるのなら、予言という行為自体に最初から意味などないはずだ。


つまり、

この強大な超自然的システムの下では、

長期予言された事象は「確定した未来」でなければならない。


幸は、

百三歳のその日まで、絶対に死なない。


彼女は正真正銘の「最強タンク」——

「運命型」のタンクなのだ。


敵が彼女を仕留めるには、

その場で84年待たなければならない。


「……来い! 俺には『お前が必要だ』」

自分で言っていて、

クズ男のような台詞だと思った。


幸の瞳が輝いた。

「うん!」

彼女は幸せそうに頷き、

先頭を切って駆け出した。


俺たちは深部へと足を進めた。


奥へ進むほど、空気中の静電気のような感覚が強くなっていく。

肌の産毛が微かに逆立つ感覚だ。


やがて、彼女たちの姿が見えた。


巨大な樹の根の陰に一人の女警が屈み込み、体で小さな男の子を庇っていた。


加奈はその隣で、

根を背にして立ち、同じく銃を装填済みだ。


祐希は俺たちに気づくと、

視線だけで上を指し示した。

頭上では風霊鳥の小群が旋回している。


「増援!?」加奈が歓喜に近い声を上げた。

「……幸い、間に合ったようね」

祐希が安堵の息を漏らす。


「もう少し遅かったら、最悪の選択肢を考えなきゃならないところだったわ」


「弾薬はあるか?」

俺は彼女たちの手に握られた「おもちゃ」を見た。


「今はまだあるけれど、節約しなきゃ」

加奈が苦渋の表情で言葉を添えた。


「でも、あの鳥たちは動きが早すぎて、まともに狙いをつける暇さえないの」


俺は頭上を見上げた。

背後に展開した混成部隊が動き出し、

妖精たちが翼を振るって包囲網を蹴散らしにかかる。


だが、この鳥たちは引こうとしない。

獲物との距離が近すぎるのだ。


執拗な敵だが、

今の数なら俺の経験値の糧にしかならない。


『一気に行け!』

『残り数匹だろ、

 さっさと回廊を掃除しちまえ!』


今の俺には、

三人全員をケアしながら戦う余裕はない。


風霊鳥がじりじりと近づいてくる……近すぎる。


俺は強制的に追い払うために動いた。

切風翎せっぷうれいを放ち、

一羽の風霊鳥を弾き飛ばしたが、

そいつは鳥群の中へと消えていった。


「ちっ、一撃死とはいかないか」

可能な限り確実に一羽ずつ削りたかったのだが。


「仕方ない、

 多少の損害は覚悟するしかないか」


俺は手元の妖精部隊を先行させ、

鳥群と正面からぶつけようとした。


だが、

そんな俺の算段をあざ笑うかのように。


益の回廊の木漏れ日の間に、

広範囲の雷撃が閃いた。


Hp-256、Hp-256、Hp-256……


大量の妖精と風霊鳥が叩き落とされ、

光の中に消えていく。


この雷撃の能力、まるで風霊鳥を仕留めるために設計されているかのようだ。


俺たちが頭上を見上げると、

そこには青藍色せいらんしょくの羽を持つ一羽の鳥が、半空に姿を現していた。


外見は風霊鳥とほぼ同じだが、その色。

そして、全身に纏うバチバチとした電気の火花が、決定的に異なっていた。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


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