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倒した敵は俺の力になる 〜魔物だらけのダンジョンを攻略しながら、ドロップ品を配信で売って一気に億万長者へ〜  作者: 上部乱


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第1話 知恵の書


コンビニのバイトはマジでしんどい。


本来なら俺と交代するはずだった早番の奴がバックれたせいで、夜勤明けの俺が無理やり残業させられた。


店長がようやく俺を解放したのは、予定より少なくとも四時間以上経ってからだった。


心身ともにボロボロの状態で、帰宅途中にあろうことか道に迷ってしまった……。


覚えているのは、深い霧の中に足を踏み入れたことだけだ。


朦朧とする意識の中、目の前に三つの扉が現れた。


それぞれの扉には紋章が描かれ、上には銘板が掲げられていた。


【勇気の剣】

【知恵の書】

【幸運の指輪】


どれも家へと続く方向じゃない。

引き返そうとしたが、後ろにはもう退路なんてなかった。


あまりの疲労に、今の状況がいかに異常かを引き算して考える余裕すらない。


毒を食らわば皿までだ。

一枚、扉を開けるしかないのか?


……なら、「知恵の書」にしよう。


俺は運が良い方じゃないし、勇気があるとも思えない。


ただ、今の自分に最も欠けているのは、人生を見通すための「知恵」かもしれないと思ったんだ。


扉に文字が浮かび上がる。

『よろしい。

 知恵の書を汝の起点としよう。』


目の前に一冊の本が現れた。

褐色の表紙に、古めかしい銅色の縁取り。


表紙には文字も図案もなく、背表紙もただ古朴な空白が広がっているだけだ。


手に取ってパラパラと捲ってみたが、

どのページにも何も書かれていない。


知恵なんて、どこにあるんだ?


本を閉じた瞬間、それは眩い光を放った。

同時に、目の前にテキストが浮かぶ。


『知恵の書は汝の——

 化身、従者、それとも武装となることを

 望むか?』


どれも現実味のない選択肢だが……。


本に変身するのは、自分を封印するみたいで嫌だ。

本を武器にするなんて、何の冗談だ?


本を従者にする……もし魔法使いの隣でふわふわ浮いている本のようなものなら、それはそれで格好いいかもしれない。


俺は力なく呟いた。

「……知恵の書を、従者にする」

「御意、我がマスターよ!」


知恵の書がふわりと浮かび上がり、俺の目の前でページを開いた。


一ページ目には俺の名前と、ゲームのようなステータスが表示されている。


新田真澄 Lv 1 EXP 0/100

HP 100/100 MP 20/20

反応:5

筋力:5

霊感:5

運:5


これって、いわゆる異世界迷宮探索ってやつか?


夢か?

道端で寝落ちでもしたのか?


それとも、本当に死んだのか?

長時間労働のせいで、

帰り道に何か事故にでも遭ったのか?


その時、突然スマホが鳴り響いた。

その音で、ここが完全な異世界ではないのだと少し安心した。


スマホの相手は、高校の同級生で超絶外交的な女子——白川若菜だった。


「真澄!

 なんで私を待たずに行っちゃったのよ!」

彼女は今、

俺と同じ場所でバイトをしている。


俺が店長に十二時間以上も拘束されたと聞いて、店で大目玉を食らわせてくれたらしい。


そういえば、上がる前に「勝手に帰るな、危ないから送っていく」としつこく言われていたっけ。


でも、彼女と一緒に帰りたくなかったから先に逃げたんだ。


彼女の周りにいるリア充グループがいつも待ち構えていて、彼らの話題に合わせるのが、俺には苦痛でしかなかったから。


静かに一人で帰らせてくれよ。


スマホを切りたかったが……。


「切っちゃダメだからね!」

若菜のトーンは断固としていた。


彼女はいつも、

俺が何をしようとしているか見抜いている。


家まで押しかけられるのを避けるためには、今は従うしかない。


前にも俺の部屋に突撃してきて、

「汚すぎる!」と勝手に片付けられたことがある。


おかげで、どこに何をしまわれたのか、

今でも彼女に聞かないと分からない始末だ。


「今どこにいるの?」

若菜は今すぐこちらへ来そうな勢いだ。


「自分でも説明できない。見たこともない場所で……迷子になったみたいだ」


「嘘おっしゃい!

ビデオ通話にして、周りを見せて!」

この女、何様だよ。


文句を言いつつも、結局俺は従った。


「へぇ〜、何これ?どっかの脱出ゲームの会場?その三つの扉、見せてよ」


俺はスマホのカメラを三つの扉に向けた。


「真澄、配信しちゃおうよ。なんだか凄いもの見つけちゃったみたいだし!」


「……好きにしろよ」


社交的なことは一切苦手だ。彼女が面白いと思うなら、勝手にさせればいい。


「よし、みんな呼んでくるね!」


【視聴者数:6人】

どうせ、いつもの友人グループだろう。


9、15、47、103……。

おい、人数が増え始めた。


配信なんて概念、俺にはない。

自分は口下手で、他人を惹きつける魅力なんて欠片もない退屈な人間だ。


俺が一人で配信しても、

視聴者は二桁にも届かないだろう。


でも、彼女は違う。

カメラに映る彼女は、それなりに容姿も整っているし、何より華がある。


この人数が多いのか少ないのかは分からないが。


『おっ、真澄くんも配信デビュー?』

知らないアカウント名だが、俺を知っている。


若菜の取り巻きの一人、口の悪い連中だろう。


「……茶化すなよ」

スマホに向かって怒鳴りたかったが、それをすれば若菜が気まずい思いをするだろうから黙っていた。


「ねえ、この三つの扉、誰か見覚えある?」

若菜が問いかける。


チャット欄のコメントが次々と流れていく。

『近所にあんなのねーよ』

『とりあえず開けてみなよ』

『おい、危ないこと唆すなよ』

『何ビビってんだよ。真澄は臆病者か?』


……本当に、嫌な奴だ。

「……開けてみるよ。

どっちにしろ、他にできることもないしな」


俺は「知恵の書」が描かれた扉へと歩み寄った。


「落ち着いて、真澄!」

あんな奴の言葉俺は扉を押し開けていた。

扉の向こう側は、湿っぽくて薄暗い通路のようだった。


チャット欄で誰かが聞いた。

『スマホのナビで現在地確認したか?』


そんな当たり前のこと、真っ先に試している。


やっぱりバカの周りにはバカが集まるんだな。

もちろん、俺自身も含めて。


「現在地ならとっくに確認してる。

ナビじゃ駅の入り口にいることになってるんだでも、ここにはこんな奇妙な扉しかない」


『駅……?』

『待て!今ニュースになってるぞ。駅前に変な虫が出たって』


『虫?』

『ああ、カラスくらいデカい虫だ!』

『おい真澄!一匹捕まえて見せてくれよ!』

『いい加減にしろよ、悪ふざけじゃ済まないぞ!』


どうやら、配信内の空気が荒れ始めてきた。

 

「探しに行くつもりなんてない。

 疲れた、早く帰りたいんだ……」


今すぐにでもスマホを切りたかったが、

どこかで見守られているという感覚が、

唯一の安全保障のように思えていた。


若菜が気遣わしげに声をかける。

「……分かった。とりあえず私が——ちょっと待って、真澄。後ろに浮いてるの、何?」


「後ろ?知恵の書のことか?」

「違う!本じゃない!

羽根と足が生えてる……何、あれ!?」

 

配信の視聴者数が、爆発的に跳ね上がった。




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


この物語を気に入っていただけましたら、

ぜひたくさんおすすめしてください。

そして、少しでも励ましの言葉をいただけたら嬉しいです。

この物語を書き続ける価値があるのだと、

実感させてください。

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