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【祝1ヶ月&1万PV!】空気を読めない男、空気を読んで最強に至る ~10年間の暗黒奴隷生活。空間を数え続けた俺は、物理的な”空気”を読み切って成り上がる~  作者: ミツキイザナ
第二章 二つの風

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0073.遺跡到着!



 六回ほど町に寄り道し、泊まっては食べて、

 道中で装備の整備なんかもしつつ。


 そんなこんなで、俺たちはついに、

 遺跡が見つかった森林地帯へと辿り着いた。


 背の高い木々が空を遮り、湿った土の匂いと、

 どこか鉄のような金属の匂いが混ざって

 鼻をくすぐる。


 森の手前までは普通の獣道だったが、

 そこから先は明らかに“人の手”が入っていた。


 遺跡の場所まで、

 木はざっくりと切り開かれている。

 

 まだ、真新しい切り株がゴロゴロしていて、

 幹を運ぶ労働者たちが汗だくで往復している。


 道の脇には、まだ組み上がっていない

 木材の骨組みと、石畳を敷くための平たい石が

 いたるところで山積みだ。


 その横を、俺たちを乗せた馬車が

 ガタ、ゴト、と進んでいく。


「やはり、既に手がつけられているようだね」


 馬車から降りながらゼノンさんが呟く。

 

 その声には、少しだけ

 “ほっとした色”が混じっているように聞こえた。

 未知の遺跡に、完全な手探りで突っ込むより、

 情報や基盤がある方がやりやすいのだろう。


 整えられつつある道を抜けると、

 視界がぱっと開けた。


 大きな広場。

 元々は森の一部だったんだろうが、

 大胆に木を伐り倒し、地面を均している。


 その中央付近に、色とりどりの大きなテントが

 いくつも設置されていた。

 煙突から薄く煙の出ているテント。

 資材が詰まれたテント。仮眠用らしいテント。


 簡易的な柵も張られており、

 ここ一帯が“調査の拠点”であることが

 一目でわかる。


 俺たちが馬車から降り立った瞬間、

 その場の視線が一斉にこちらへ向いた。


「う、嘘だろ? S級が二人も!?」


「おいおい、俺、初めて千年郷見たぜ!?

 サイン貰えないかな……」


「キャ〜ッ! ディア様よぉ♡(野太い声)」


 最後のは、大柄な男から発された。

 ギラギラのアクセサリーに無精ヒゲ、

 どう見ても屈強な傭兵だが、

 声だけは完全に乙女だ。世界は広い。


 俺たちは、出来るだけ聞こえないふりをして、

 空気になったつもりで仮設ギルドへ向かう。


 俺たちを中心に、さざ波のように

 ざわめきが広がっていくのを、肌で感じた。


「ぜ、ゼノン様! ディアモンテ様!!

 此度は依頼を受けてくださり、

 誠にありがとうございます!!」


 仮設ギルドっぽい大きめの木造テントから、

 若いギルド職員らしき男が飛び出してきた。

 顔が引きつっている。緊張で声が一段階高い。


「楽にしてほしい。私も一介の冒険者にすぎず、

 同じ遺跡を調査する仲間だ。

 気軽に接してくれたら助かるよ」


 ゼノンさんは、

 いつもの穏やかな笑みでそう告げる。


 さらっと言うけど、この人ほど“気軽”から

 遠い存在もそういない気がする。


(大人だよなぁ……。アノンさえ絡まなきゃ、

 本当に完璧超人なんだけどなこの人……)


「状況を話してくれるかしら?

 あと、現状の地図もくれると嬉しいわ♡」


 ディアさんが腰に手を当て、

 片目をつむって職員にウィンクを飛ばす。


 妙にキラキラした仕草に、職員の兄ちゃんが

 一瞬固まった後、顔を真っ赤にした。


「は、はい! 今すぐお持ちします!!」


 慌ててテントの中に走り込み、

 すぐに何かを抱えて戻ってくる。

 差し出されたそれは一見、厚めの石板だ。


 灰色の平たい板。角は丸められ、

 表面には細かな紋様が刻まれている。


 よく見ると、淡く光る線が何本か走っていて、

 ところどころに小さな魔法陣の印が

 ぼわぁっと浮かんでいた。


 ……いや、どう見てもこれ、

 タブレット端末だよな。


 石板の表面には、

 遺跡の見取り図らしき線が刻まれている。


 ところどころ穴のように

 情報の抜けている部分もあるが、

 一定範囲まではしっかり地図が埋まっていた。


「これは最近魔導局が開発した“情報同期板”さ。

 調和と循環で情報を同期させて、

 保持で内容を保っている。

 触れると中の量子が活性化されて、

 内容が変わる仕組みだ」


 ゼノンさんが、石板に指先を軽く滑らせる。

 すると、刻まれていた線の一部が淡く光り、

 そこに小さな文字が浮かび上がった。


「発見者:○○」

「魔物:××」

「罠:確認済み」

 など、詳細なメモがびっしりだ。


「魔導局と言っておるが、

 父上の発明品じゃ!!」


 アノンが、すかさず胸を張る。

 待ってましたとばかりにぶっこんできた。


「ふふっ。私が提供したのは、

 理論と仕組みだけさ。

 生産したのは魔導局だよ」


 いや、それ実質ゼノンさんが作ったのと

 変わらないだろ……。

 この人、この調子で何度も世界を変える

 発明品を投げてるんだろうな。


「そんな些細なことより……

 もう半分くらいは終わっているようだね」


 ゼノンさんは、石板の地図を

 指でなぞりながらそう言った。


 遺跡の入り口から、ある程度までの

 通路や広間はすでに記録されている。


 未踏エリアを示す真っ白な部分が、

 まだ地図の半分近くを占めていた。


「はいっ! ですが、深部である

 未開拓エリアは厄介な古代兵器が多く、

 苦戦しております!!」


 職員の兄ちゃんが、真剣な顔で続ける。


「あら、面白そうね。

 詳しく教えてちょーだい♡」


 ディアさんの目が、キラリと輝いた。

 獲物を見つけた捕食者の目だ。


 特訓であの目を向けられたとき、

 大体ろくな目に遭ってない。

 条件反射で背筋が伸びる。


「再生機構を持つ自立型兵器でして、

 兵士型、飛行型、銃士型、

 そして魔獣型が見つかっております!

 ゼノン様が昔発掘された古代兵器である、

 古代機巧(エンシェントギア)シリーズと同様です!!」


「なるほど。エンシェントギアソルジャー達か。

 あれは少々厄介だった代物だ」


 ゼノンさんが、懐かしむように目を細める。


(なんだよその名前……

 遊◯王カードにいそうなんだけど。

 どう考えても罠を無効にするやつらじゃん)


「あー、前ゼノンちゃんが言ってた奴?

 戦ってみたかったのよねぇ、古代機巧巨人エンシェントギアゴーレム♡」


 おいおい、完全にボス枠の名前じゃねえか。

 攻守ともに三千くらいある奴だろ絶対。

 俺は絶対戦いたくないぞ!?


「今現在も、最前線は虹の都(アイリスガルド)の方々が

 調査をしてくれております!!」


 職員から出た単語に空気がぴりっと緊張する。


 虹の都。

 たしか──水の国トップファミリア、

 “女教皇アイリス”率いるファミリアの名前だ。


「へぇ」


 ゼノンさんの声が、

 さっきまでの柔らかなトーンから、

 一段階低く落ちる。


「誰が来てるんだい?」


知恵の紫(アメシスト)様、そして慈愛の緑(エメラルド)様と、

 そのパーティの方々であります!!」


 職員がそう答えた、その時。


「愛は人をつなぎます。

 この出会いも、アイリス様のお導き……。

 ご無沙汰ですね、ゼノン様、ディアモンテ様。

 そして、初めまして──自由の風の皆様」


 柔らかいが、どこか“芯の固い”声が、

 背後からかかった。


 ぞわり、と背中をなぞられたような感覚。

 俺たちは反射的に振り返る。

 ゼノンさんとディアさんも同時に振り向いた。


「アタシは会いたくなかったわぁ〜♡」


「ヴェル君たちのことは調べてあるようだね」


 二人のため息まじりの言葉が、先に飛ぶ。


 そこに立っていたのは──


 肩まで届くウェーブの掛かった、

 深い緑色の綺麗な髪を持つ女性だ。


 高貴さを思わせる、上質そうな白と

 緑のローブが位が高い人だとわからせる。

 首元には虹色に光る小さな宝玉のペンダントが

 シャラリシャラリと揺れていた。


 整った顔立ち。

 微笑みは完璧な“慈愛の仮面”だ。

 だが、その瞳だけは妙に平坦で底が読めない。

 光はあるのに、熱が感じられない。

 そんな、奇妙な視線だった。


「私が、アイリス様より慈愛の緑を賜りました

 エメラルド、と申します。

 ヴェル様、カルド様、セリア様、アノン様

 ──よろしくお願いしますね?」


 名前を呼ばれた瞬間、

 背筋に冷たいものが走る。


 俺たちの名前と顔、完璧に把握している。

 笑顔の奥で、何を考えているのか。

 ──少なくとも、俺は何も読み取れなかった。



 

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