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0042.グレイヴバード リザルト



 すべてのグレイヴバードを倒し終え、

 上空を一羽だけ旋回していたやつも、

 こちらを一瞥すると、くるりと進路を変え

 さらに東の空へ消えていった。


「こりゃ完遂だろ!!」


「……だな」


「えぇ!」


「当たり前じゃ!」


 声が重なった。

 胸の奥で、遅れて実感が弾ける。


 俺たちは、それぞれ落ちた

 グレイヴバードを回りとどめを刺していく。


 証拠として首を一つ。

 それから、討伐数の証拠になるという嘴を、

 一本一本切り落として布袋に詰める。


 翼の骨や羽根は、武器や魔具の素材らしい。

 折れずに残っているものを選んで、

 出来るだけ切り落として積み上げていく。


「おお……これ、けっこうな量ですね……」


「全部持って帰るのは、流石に大変じゃな」


「まぁ、馬車があるからなんとかなるだろ」


 荷台の上に嘴の袋を置き、

 翼や骨を括りつけていく。


 肉も売れるらしいが、

 さすがに今回は全解体までは無理だ。


 それでも、素材だけでも

 かなりの稼ぎにはなりそうだった。


 この前倒した奴らも残ってたから、

 腐敗の進んでいない嘴だけ剥ぎ取る。



 と、言うわけで!

 帰りの馬車は、行きとは真逆で大賑わいだ。


 誰かが喋るたびに、誰かがそれに乗っかる。

 いつの間にか自然と「褒めあい」が始まる。


「しかし、セリアは真空波耐えてすごいな!」


「えへへ、癒やしの術を活性と保持に

 応用したら、法術の五倍くらいの効果が

 出るんです! 今回は偶然もありますけど。

 それよりアノンのイクスプロージョンの方が

 すごかったですよ!」


「ふんっ! 当然じゃ。妾はゼノンの娘じゃぞ?

 むしろ、凡人のくせに近距離カウンターを

 しっかり合わせたことの方が驚きじゃ」


「そうか。だが、これは鍛錬の結果だ。

 幸い何度も練習する機会があった。

 ……ヴェルこそ良くやった。

 討伐数六体。お前が一番だな」


「みんなが作ってくれた安全な位置から、

 俺はいいところ取っただけだからな!

 お前たちの方が……」


「いやいや、私より皆さんの方が……」


「俺よりお前らの活躍のおかげだ」


「まぁ、妾も認めてやらんこともないぞ?」


「「「「……えへへへへ〜」」」」


 全員、揃ってゆるみきった顔をしていた。

 ご機嫌祭りってやつだ。


 そんな緩みきった時間が、

 正直言えばずっと続いてほしかったが、

 クロムの街の門が見えてくると、

 自然と空気が締まる。


 グレイヴバードの首と嘴の入った袋は、

 ずっしりとした重みを増したように感じた。


 ギルドの扉を押し開け、俺たちは

 ほとんど駆け込むように受付へ向かった。


「依頼にあったグレイヴバード、

 倒しました〜!!」


 俺がどや顔で宣言すると、

 いつもの受付のお姉さんが目を見開いた。


「グ、グレイヴバードですか!?」


「え、あ、はい。これ、証拠というか……」


 俺たちはカウンターの前に袋を置く。

 頭一つと、袋に詰めた嘴をざらっと並べた。


 受付のお姉さんは、それを見た瞬間、

 血の気が引くように顔色を変えた。


「な、なんてこと……!

 も、申し訳ございませんでした!!!」


「「「「えっ?」」」」


 四人揃って間抜けな声が出た。


 事情を聞いていくうちに、

 お姉さんの慌てようの理由がわかってくる。


 依頼書には

 「北の国立公園付近の上空に、

  大型の鳥が出没。撃退または討伐を希望」

 とだけ書いてあったらしい。


 誰も襲われておらず、実害がなく、

 危険性も低いと見られていた。


 グレイヴバード自体が

 希少な魔物であることもあって、

 “まさかそうだとは思わなかった”

 ということらしい。


「依頼内容はあくまで依頼人ベースですし……

 事前に調査の冒険者を派遣していたら、

 とてもきりがなくて、人が足りないんです。

 本来なら『大きな鳥』ってあった時点で、

 調査依頼を挟むべきだったのかもしれません

 が、被害がないこともありまして……。

 今回はそのまま撃退依頼として受理を」


 お姉さんは頭を下げっぱなしだった。


「グレイヴバードなんて、

 単体でもD〜Cランク相当の魔物です。

 場所や数によってはBランク相当です!!」


「マジかよ……」


 思わず素で漏れた。


 とはいえ、だ。

 あとでガレスさんから聞いた話だと、

 今回は二十を超えていなかったということ。

 地形も平野に近く最も危険がない場所。

 総合的にはCランク相当らしい。


 それでも、Fランクの新人が、

 やるような仕事じゃないとのことだけどな。


 受付の人がもう一人走っていき、

 やがて、見慣れた大柄な男が現れた。


 俺たちが坑道から逃げ出したとき、

 最初に世話になったギルドマスター。

 ガレスさんだ。


「よぉ、迷惑かけちまったみたいだな」


 いつものように、

 ガハハと笑いながら近づいてくる。


「しかし、この前まで奴隷だったお前たちが、

 今じゃもうグレイヴバードか。

 才能あんじゃねぇか。ガッハッハ!!」


 豪快すぎて、照れくささの方が勝つ。


「おっ、アノン嬢も居たのか」


「貴様は相変わらず暑苦しいのう」


「そんな事言うの、嬢ちゃんだけだぜ」


「それは見る目のない奴らなんじゃろう」


「けっ、相変わらず可愛げないなぁ」


 口ではそんなことを言いつつも、

 アノンは素直に頭を撫でられていた。

 あの態度で懐いてるのなかなか面白い。


 ひとしきり俺たちの説明を聞いたあと、

 ガレスさんは神妙な顔になった。


「とにかく、悪いことしたな。

 今回の件は、きちんとギルドのミスとして、

 そしてお前たちの手柄と本部に報告する」


「っ!! それはもしや!?」


 アノンの顔が、ぱっと明るくなる。


「あぁ。ゼノンの旦那の耳に入るだろうよ。

 Fランクの冒険者四人のパーティが、

 Cランク相当の依頼をクリアしたってな」


 アノンの表情が、分かりやすく崩れてく。


 目がうるみ、口元が震え、

 それでも必死で笑いを堪えようとして──

 結局、子供みたいに叫んだ。


「やったのじゃぁぁぁ!!

 成し遂げたのじゃぁぁぁ!!!」


 前世で、親戚の子供が

 新型ゲーム機当たったときこんな顔してたな

 とか、どうでもいいことを思い出す。


 これで、アノンに“才能がない”とかほざいて

 ゼノンを貶めようとしていた連中にも、

 少しはジャブが入るだろう。


 と言っていると、ガレスさんの口から、

 更に俺たちを固まらせる言葉が飛び出した。


「今回はウチのミスだ。

 こういう時の決まりがあってな。

 お前たちにはパーティではなく個人単位で

 報酬が出る。四人だから四倍だな」


「まじで?」


 俺が目を丸くすると、ガレスさんは頷き、

 算盤をはじくみたいに指を折っていく。


「しかも、当たり前だがCランク相当の額だ。

 更に相場の1.5倍で換算する決まり。

 グレイヴバード一体10万が相場だからな。

 嘴数えたら……18。ってことは、

 1.5倍にしたら270万か。四人で1080万。

 くーっ、俺、減給されるなこれ……」


「「せ、1080万!?」」


 セリアと俺の声が見事に重なった。

 カルドは声に出さなかったが、

 完全に固まっている。


「うーむ、まぁそんなもんかの」


 アノンだけ感覚がバグっていた。


(いや、お前の感覚おかしいからな??)


 心の中で全力ツッコミを入れる。


「まぁ、あれだ。

 ミスだから高いだけであって、

 これは本来なら“四人で”180万だからな。

 人数の四倍と1.5倍が効いてるだけだ。

 これが当たり前ではないからな?」


 ガレスさんは、そう釘を刺してくる。


「……十分すぎるくらい、破格ですけどね」


 セリアが、胸に手を当てて小さく呟いた。


 俺も同感だ。


(これで、じいさんの車椅子も

 当面の生活費も、当座の装備代も全部揃う)


 思わず、ギルドの天井を見上げる。


 坑道から出てきたときには

 想像もしない額と想像もしなかった未来。

 それが今、目の前に並び始めている。



 胸の奥で、ぐっと拳を握る感覚がした。



 

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