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【祝1ヶ月&1万PV!】空気を読めない男、空気を読んで最強に至る ~10年間の暗黒奴隷生活。空間を数え続けた俺は、物理的な”空気”を読み切って成り上がる~  作者: ミツキイザナ
第三章 火の国フレイナス

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0109.各専用教師



「ふむ、キロロの因子は人化に振られたようだね」


 ゼノンさんが、キロロの頭を撫でながら

 ぽつりと結論を出した。

 

 さっきまで別室で“本来の目的”

 とかいうやつの話をしていたはずなのに、

 戻ってきた瞬間からこの人は柔らかい顔だ。


「きゅ?」


 キロロは首を傾げる。

 人型になっても鳴き声を混ぜるところがズルい。

 可愛いの暴力だ。


 まよねこたちは一通り説明した。

 置いていかれたくなくて光ったこと、

 翌朝になったらこの姿だったこと、

 ついでにゴブリンを瞬殺したこと。

 ゼノンさんは頷き、続けた。


「本来ならば人化はドラゴンの秘術に近い。

 力のある個体が、長い時間の果てに得るものだ。

 だが、キロロは君たちと共にいることを選び、

 それに伴い人化を目指した進化をしたのだろう」


「うん! これからはぼくもいっしょだよ!」


 そう言ってキロロが、

 ゼノンさんの足元にぎゅーっと抱きついた。

 あざといな流石ドラゴンあざとい。


 ……ん?


 ゼノンさんの頬が、ほんのり緩んだ。

 いや、キュンってしてない?この人。


「ぬっ! こらキロロ!

 父上は妾の父上じゃぞ!!」


 アノンもしがみつく。

 直後、キロロがアノンの太ももにかぷり。


「ひゃうっ!!

 な、なんで妾は噛まれるのじゃ!!」


 俺たちは今、何を見せられているんだ?


 便乗しようと近づいたディアさんは、

 ゼノンさんの杖で牽制された。

 何やってんだ? この人。


 ゼノンさんが咳払いを一つ。


「さて、大事な話がある」


 真面目な顔をする。

 両手にアノンとキロロを抱えたまま。

 ……この人も何やってんだ?


「私とディア、そしてリズは、

 近々少しの間忙しくなる。

 君たちの面倒を見きれない時間が増えるんだ」


 本来の目的、ってやつだろう。

 それが気になるのに、聞けない雰囲気がある。


「なぬっ! 父上どこかへいくのか?」


「土の国から出るわけじゃないがね。

 ただ、君達には話せない内容ではある。

 悪いが許して欲しい」


 そう言って、ゼノンさんはアノンに頬ずりした。

 両手が塞がってるから仕方ない。

 ……いや仕方なくないだろ。


「ということで、宿題を出そうと思う」


 あっけらかん。

 俺の過去の記憶が、嫌な予感を全力で鳴らす。


「今日から一週間。

 自由の風のメンバーには専用教師をつける」


 ニッコリのゼノンさんである。

 終わった。


「それぞれが課題を出してくる。

 その一週間、精一杯教えるが、

 おそらく一週間では身につけられない」


 この人たちの“精一杯”は地獄だ。


「ゆえに、私達がいない間は、

 教えられたことを自分たちで進めて欲しい」


「まぁ、仕方あるまい。

 じゃが、妾の教師は父上じゃろうな?」


「いや、すまないが違うんだ」


「なんじゃと! 妾以外が父上を独占するのか!」


 アノン、話が逸れてる。頼む黙ってくれ……。


「ふふっ。では、それぞれの師を発表しよう」


 ゼノンさんが指を折る。


「セリア君。君はディアが担当をする。

 ヴェル君はリズが担当をしてくれる」


「ディアモンテさんですか!?

 嬉しいですっ!!」


「あらぁ♡ そんな喜ばれると、

 アタシも感激よぉ! うふっ♡」


 喜ぶ二人を横目に、

 俺はリーゼロッテさんを見る。


「ハッピーうれピーよろピくねー」


 木人形が小躍りしながら近づいてきた。

 俺は、小躍り=ご機嫌の合図だと最近学んだ。

 とりあえず握手した。木人形と。


「そして、アノン。君はガレスが教える」


「んむぅ!? あやつが妾に!?

 何故じゃ、魔術の素養もないぞあやつは!」


「使い方が違うだけだ。

 彼は魔術どころか“魔法の扱い”に長けている。

 アノンは彼の戦いを見たことないからね」


 なるほど。

 ガレスさん、準S級級って話だったしな。

 本人がS級を辞退したって噂もある。


 カルドが立ち上がり、ゼノンさんに手を伸ばす。


「俺に教えるのはあんたってことか」


 ……カルド、なんか素直だな。

 ゼノンさんに教わりたいのが顔に出てる。


「いや、カルド君。

 私は迷い猫(ストレイキャッツ)を教える」


「拙者達でござるか!?」


 まよねこが目を剥いた。

 お前、見てたもんな。あの修行。


「あぁ。君たちもアノンと並ぶのに、

 弱いままだと困るからね」


「ありがたや……ありがたや……」


 まよねこが拝む。

 なんで拝む。逃げろ。


「……なら俺の師は誰になる」


 カルドが差し出した手を引っ込めた。

 今の話の間ずっと手を出してたのか。

 ほんとかわいいなこの相棒。


 ゼノンさんが答える前に、別の声が響いた。


「ワシじゃよ。ホッホッホ」


「……じいさんが?」


 えっ。

 マジで?


 確かにカルドの装備は元々じいさんのだ。

 大地喰らいと呼ばれてたって話も嘘じゃない。


「というわけだ。各自しっかり教えを受けて、

 そして、常に課題と戦ってくれ」


 こうして、その日は解散。

 各自の師と話すことになった。


 アノンだけはガレスさんだから明日から。

 ――俺たちの新しい修行が始まる。


     ◇


 次の日の朝。


 小さな木人形が納屋に来て、俺を雑に起こした。

 枕元に立つだけで圧があるの、なんなんだ。


「ヴェル坊、草原ニ来イ!」


 有無を言わさず連れ去られた。

 小さいのに力が強い。

 引っ張られると普通に痛い。


 そして草原。

 じいさん家から一キロくらい離れた場所。

 朝露がまだ残っていて、空気が冷たい。


 たどり着いた場所では――

 相変わらずの木人形机と木人形椅子で、

 リーゼロッテさんが優雅に紅茶を飲んでいた。


「あの、おはようございます」


 ……返事はない。

 ただのゴスロリのようだ。


「リーゼロッテさん?」


 ……返事はない。

 ただのゴスロリのようだ。


 俺は考える。

 すでに修行が始まってるのかもしれない。

 いや、もしかして――


「飲んどる場合かーッ!」


 俺は奇妙な冒険語録から

 適したツッコミを放ってみた。

 

 言った瞬間、ぴくん!と反応して、

 隣の木人形が小躍りを始める。

 小躍り=最高機嫌。今日も学びがある。


「ヨく気づいタな! そノ言葉ヲ待っテイた!」


 木人形が俺の頭を撫でようと腕を伸ばし、

 毒気が抜けるほど普通に撫でてきた。


「もウお前に教えルことハない。

 ヴェル坊、よク頑張ったナ」


「いや、何もしてませんけど!?」


 そう言った瞬間、リーゼロッテさん本体が、

 ゴミを見るような目でこっちを見た。

 その目が冷たい。冷たすぎる。


 なんだ? 何か気に食わないこと言ったか?

 でも事実だよな? ……ハッ!


「あ、あの女の目……

 養豚場のブタでもみるかのように冷たい目だ」


「ヨクやっタ! お前ハ天才だナ!!」


 木人形がまた小躍りする。

 なんで褒められてんの俺。


「リーゼロッテさん、二部ブームなんですか?」


「うん、きのうディアにきかせるために、

 ゼノンが『いちぶ』からはなしてくれたから」


 まさかの本体から返答。

 

「リーゼロッテさん、

 本人が喋ることもあるんですね」


「わたし、ひとみしりなの。

 だからいつもは、ふくわじゅつ」


 ……福話術。

 つまり、木人形に喋ってたあのキャラって

 リーゼロッテさんがしてたってこと??


 それ、暴露して恥ずかしくないのか?


「でも、でしをそだてるには、

 していのしんらいがひつよう。

 だから、はなしてみた。それだけ」


 そう言った直後、

 木人形がまた俺に飛びついてマウントを取る。


「今後ハ、師匠と呼ベ!!」


 なんで毎回マウント取るんだよ!

 普通に言ってくれよ!!

 と俺は心の中で叫んだ。心の中だ。


 だが、視界の隅にいるリーゼロッテさんは、

 頬を赤くして、顔を逸らしていた。

 

 ……なるほど、照れ隠しの“マウント”か。

 いや、やめていただけませんかね?


 こうして。


 俺の修行は始まった。

 一週間の、短くも濃い修行が、始まる。



 

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