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【祝1ヶ月&1万PV!】空気を読めない男、空気を読んで最強に至る ~10年間の暗黒奴隷生活。空間を数え続けた俺は、物理的な”空気”を読み切って成り上がる~  作者: ミツキイザナ
第二章 二つの風

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0108.二つの風



 戸惑う俺たちに、

 まずアクションを起こしたのは。

 ――やはりこの男だった。


「ヴェル殿!

 本当に申し訳ないでござるぅ!!」


 まよねこのスライディング土下座。

 

 勢いが良すぎる。滑走距離が長い。

 床を滑る音が「シャァァ」となっている。

 

 俺の空間把握が、

 まよねこの膝と床との摩擦で

 温度が上がったことまで教えてきた。


(なんていらない情報なんだろう)


「必ずやお金は……拙者の出世払いで……!」


「いや、待て待て」


 俺は両手を上げて制止した。


「俺もう頭の中いっぱいいっぱいだからさ。

 一つずつ話してくれないかな??」


 1000万ゴルドが消え、子供がキロロで、

 知らない吟遊詩人がいて、膝の摩擦熱が……。

 いや最後はどうでもいいか。


「ボクが話そう。その方が早い」


 そう言って前に出たのは、

 全体的に紫色の吟遊詩人である。

 

 ローブも髪も帽子も、

 なんか“詩人です”って主張してる色合い。

 竪琴を背負って、優雅に礼をしてみせた。


「はじめまして。

 キミたちのいない間にこの家で世話になってる。

 ボクの名前はリラ。吟遊の詩人うたびとリラだ」


 うむ、堂々としているなぁ。


「一つずつ紐を解いていこう」


 リラが、指を一本立てた。


「まず、まよねこ君が謝ったのはお金のことだ。

 君たちが受け取るはずだった1000万ゴルドは、

 僕たちの装備やキロロ君の服を買うのに使った」


 そう言いながら、水晶を見せる。

 まよねこの眼鏡を指し、ミキの鈴と剣を指し、

 最後にキロロの服を指差した。なるほどな?


「そして二つ目」


 リラが指を二本立てる。


「キミに今抱きついている子。

 その子はキロロ君が人化をした子供だ。

 理由はまだよくわかっていないが、

 本人いわく『置いていかれたくない』

 と願ったら出来るようになっていたらしい」


 キロロはその説明を聞いて

 「えへへ〜」と笑った。可愛い。


「ぼくね、いつでもドラゴンにも

 人間にもなれるようになったんだよ!」


 そう言って――その場で竜化した。


「ぐへぇ!!!」


 抱き抱えていた俺はキロロの下敷きに!!

 金色の鱗。体重。重い。呼吸が!息が!


「ヴェルさん!?」


「きゅ!!!」


 セリアとキロロの声が聞こえる。

 でもそれどころじゃ……!


 ポンッ!とまたキロロは人化した。

 まだ俺は息がうまくできない。ぐふぅ。


「と、まぁそういうわけなんだ」


 リラが咳払いをして話を続けた。


「ボクはまよねこ君のパーティに入った。

 これからよろしく頼むよ」


 そう言って手を差し出してくる。

 ……多分いい奴だ。多分。

 この場で堂々と説明する時点で、

 少なくともコソコソする悪党ではない。


 俺は苦笑しつつ手を取った。


「……こちらこそ。よろしく」


「キロちゃん!

 これからはいっぱいお話しできますね!」


 セリアはもう俺より

 キロロに関心が移っていた。酷い話だ。

 むぎゅ〜っと抱きしめられるキロロの顔は、

 随分と嬉しそう。ちょっぴり羨ましい。


「わ、妾もじゃ!!」


 アノンも負けじとキロロの元へ!

 だが、伸ばした手は――


 かぷり。


「な、なんで妾はいつも噛まれるのじゃ〜!!」


 ……いい気味だ。

 全然羨ましくない。いいぞアノン。


     ◇


 落ち着いたところで、

 俺はまよねこ達の話を聞いた。


 いわく、『迷い猫(ストレイキャッツ)』というパーティを

 まよねこが作ったらしい。

 メンバーはミキ、リラの三人で。


「自由のフライハイトに入りたいと、

 あれだけお願いしたのにも関わらず、

 誠に申し訳ないでござる……」


 まよねこが申し訳なさそうに言う。


「なんでだよ、いいことじゃんか!」


 俺は即答した。


「俺、めちゃくちゃ嬉しいよ?

 まよねこが更にカッコよくなってさ!」


「えっ?」


 まよねこの顔が、気まずさから驚きに変わる。


「まよねこが俺たちに憧れて頑張って、

 それでそんなまよねこを良いなって、

 この人がついて来てくれたんだろ?

 それって凄いことじゃん!」


 指名手配で引きこもってた仲間が、

 自分の力で世界に出始めた。

 嬉しくないわけがない。


「それにさ、ちょっと離れてるけど、

 いわば同期ってわけじゃん?

 先輩って言えるほど離れてないしさ。

 ライバルだな! 俺たち!!」


「ゔ、ヴェル殿ぉ〜〜!! ぶぅぉぉぉ!!」


 泣きついてくるまよねこ。

 やめろ。鼻水が……!

 でも、まあ。嬉しいならいい。


 そんな俺とまよねこのやり取りを見て、

 リラが話しかけてきた。


「ふむ。まよねこ君が惚れるだけあって、

 キミは随分と素敵な御仁のようだね。

 ボクもキミに惚れちゃいそうだよ」


「なっ!?」


 社交辞令でも照れる。

 美人だし。ミステリアスだし。

 声もいいし。俺、そういうのに弱い。


「むっ! そもそも貴様は何者なんじゃ!」


 のじゃロリが噛み付く。

 こいつは初対面の人にいつも噛み付く。


「先ほど述べた通りだよ。

 まよねこ君に勇気付けられて、

 彼の活躍を願ってパーティに入れてもらった。

 一応、参謀役を自負してるよ」


 堂々としている。大人の余裕だ。


「ぐぬぅ! ここは妾の拠点じゃ!

 妾の許可なく勝手に……」


 と言いかけたところで、

 リラが持っていた袋から紙箱を取り出した。


 てか、お前の拠点ではないぞ?


「そういえば、キミたちが好きと聞いてね。

 帰ってくるときに買って来たのだよ」


 蓋を開けると、高そうなケーキが出てきた。


「ぬほぉ! 妾の好きなチョコレートタルトぉ!?

 貴様、いったいこれを何処で!!」


 いや、考えればわかるだろ。

 と、俺はミキをチラリと見る。

 

 予想通り、ひょこひょこごぼうを振って

 ミキが会話に参戦した。


「ミキが教えたヨ! セリアのケーキもあるヨ!」


「わぁ! 本当ですか??」


「ぼくもたべる〜!」


 セリアと、セリアに抱かれたキロロが

 顔をぱぁっと輝かせた。


「喜んでもらえて良かったよ。

 これからよろしく頼む。アノン君、セリア君」


「よかろうなのじゃ。

 貴様は中々まあまあじゃな!」


「はいっ! よろしくお願いします♡」


 もぐもぐタイムが始まった。

 チラッと横を見るとカルドは無表情。

 ……いや違う。あれは“食べたい顔”だ。


 仕方ない。ここは俺が聞いてやる。


「俺たちの分はないのか?」


「ヴェル達の好みは知らなかったからこれヨ」


 ミキが出して来たのは……草?

 見覚えがある。嫌な意味である。


「ルマ草ヨ。好きなだけ食べていいヨ!!」


「ははは、ありがとう……」


 ミキに期待した俺が悪かった。

 だが、ルマ草を見てカルドが少し微笑んだ。


「……もう二ヶ月くらい前だな」


 静かに呟くカルド。

 俺はルマ草を手に取りながら笑った。


「だな。あっという間だった。

 ……これからもよろしくな、相棒」


「こっちの台詞だ、ヴェル」


 ケーキに貪り尽くセリア、アノン、キロロ。

 ミキにごぼうでしばかれるまよねこ。

 それを笑うリラ。随分と人が増えたものだ。


 でも、やっぱり。

 誰が俺の支えだったかって言ったらカルドだ。

 迷わず言える。

 もう何年も隣で支えてくれた兄貴分。


 無愛想で、不器用で、泥臭くて。

 でも頼りになって、かっこよくて、

 空気も読める。俺の憧れの男、カルド。


「なぁ、カルド。

 アノン達のケーキ横取りしないか?」


 俺の悪巧みに「フッ」と笑って、

 そして静かにつぶやいた。


「……たまには悪くないな」


 そうして横から俺は、

 アノンのケーキにかぶり付く。


「ぐぬっ! 貴様よくも妾のタルトを!!」


 そうしてセリアの視線がこっちに来た所を、

 カルドがセリアのフォークを使って、

 セリアのケーキをたべる。


「あぁっ! カルドさんが!!

 ……ヴェルさんの仕業ですね!?」


「いや、そうだけどさぁ!?

 なんですぐ俺だって思うんだよ!!」


 賑やかになった俺たちの風は、

 螺旋を描いて空に舞い上がるように、

 どんどんと大きくなっていく。


 ……今はまだ俺たちはCランク。

 目指すはもちろんAランク。


 そして、いつか十の未踏ダンジョン。神域へ。


 

 俺たちの冒険は、まだまだ続く。


 

 第二章 二つの風 -fin-



 

 いつもお読みいただきありがとうございます^^

 おかげさまで第二章完結となりました!


 今ストックとしては四章まで終わっており、

 これからもどんどん世界が広がっていく予定です!


 お手数をおかけいたしますが、

 これからも読んでやらァ! ってお方。

 ブクマと星を下さったら幸いです!


 一人でも多くの方に読んでいただけたら

 作者冥利に尽きますので!


 これからも

 『空気の読めない男、空気を読んで最強に至る』こと

 空読ソラヨミをよろしくお願いいたします!



                 ミツキイザナ

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