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第22話 マリウス・プティ

 私は感動の余韻に浸っている。

 11歳という若さでプロのピアノのコンサートで心振るわされるピアノを聞いたのだ。

 興奮するなというのは無理な話だろう?

 彼女がアンコールで披露したオリジナル曲の完成度の高さに彼女は天才だと確信した。

 私はマリウス・プティ、アメリカで活躍している作曲家だ。

 私はホテルに戻って直ぐに秋月(あきつき)燈由(ひより)の情報を収集する事にした。

 彼女が作曲した曲や編曲された曲を聞いて決意する。

 最近マンネリ化だった私の曲を輝かせてくれるんじゃないだろうか……と。

 『マリウスは東洋の真珠に惚れこんでしまったのかな?』

 私の通訳を務める田中に

 『ああ!あんなに幼いのに大人顔負けの演奏!そして彼女が作り出した曲の数々は斬新だ!!まるで未来からやって来たと言われても私は信じてしまうよ!』

私は興奮して答える。

 『秋月(あきつき)燈由(ひより)ちゃんの所属している事務所に話を通しておきますね。多分、大丈夫だと思いますが――彼女、凄く忙しいタレントなので仕事を受けて貰えない可能性も考慮して下さいね。』

 田中の言葉に うむぅ、と私は唸るのだった。

 彼女だったらこんな小さな島国の中だけの活躍なんて勿体ないと思うのだ。

 『ギャラは高めで依頼しますけど良いですか?編曲する音源もデモにあちらに渡しますね。新曲の依頼はどうします?』

 田中は通訳じゃなくて秘書に向いてるな。

 『するに決まっている。メアリーを輝かせてくれる曲を私も聞いてみたい。』

 私が手掛けて育てている歌手の名前を出すと田中は

 『OK、ボス。メアリーのイメージもあるから今までの曲とライブ映像を相手に渡す事にするよ。』

 私が指示するまでもなく、此方の言いたいことを理解して話を進めてくれる。

 『ああ、彼女が依頼を受ける値段の3倍は出しても良い。』

 『了解。』

 田中が電話を始めたので私はイヤフォンを装着し、燈由(ひより)嬢のCDを再生したのだった。



 

 「燈由(ひより)ちゃん、編曲と楽曲提供の依頼が来ているんだけどどうする?」

 マネの容子(まさこ)さんの問い掛けにスケジュール帳を確認する。最近は仕事をセーブしているから勉強時間を最低限確保すれば時間を十分確保する事が出来るだろう。

 「ギャラはどんな感じ?」

 子役タレントが仕事なんだけど、作曲家とかピアニストとか色々オプションが付いて来たなぁ…と遠い目になる。

 「ふっふっふ、急ぎだからか3倍よ!3倍!あ、編曲のギャラの事ね。楽曲提供に関しては売上の2割が燈由(ひより)ちゃんのギャラになるわ。」

 わぁ…容子(まさこ)さん、相手に無茶を吹っ掛けてるなぁ。平均6%なのに20%も分捕るとか鬼畜だわ。

 「相手に恨まれてない?」

 あんまりガツガツして恨まれるのはちょっと……と思う私に

 「感謝される事はあっても恨まれる事はないわよ!今は以前より仕事をセーブしてるじゃない。燈由(ひより)ちゃんが この仕事を受ける幸運をお金に換算する事は出来ないのよ?燈由(ひより)ちゃんは中学生受験とか考えてるって言ってたじゃない。断っちゃっても良いのよ?」

仕事を断っても良いという容子(まさこ)さん。

 彼女は私を大切にしてくれるから好きだ。将来の夢を安定した国家公務員になりたいという事を理解してくれてるしね。

 でも小学校卒業したら芸能界から足を洗いたいんだけど、まだ納得して貰えてないのよね。学生と芸能活動の二足の草鞋も大丈夫!とか言ってるもの。

 私は現時点で一生働かずに暮らせるぐらいのお金は稼いだしね。

 将来は自衛隊の陸自の軍楽隊に入っても良いかもしれない。

 陸上自衛隊高等工科学校に入って防衛隊を卒業し、幹部候補生として国の為に従事するのも面白そうだとは思ってる。

 でもそれは候補の一つであって、進学校に進んで海外の大学を飛び級で卒業し、日本のT大に入学して色々と勉強するのも手だと思うのだ。

 資格取得は出来るだけしておきたい。手に職は大切だよねぇ、っと…話が脱線してしまった。

 「それで依頼者は誰?」

 「依頼者はアメリカで成功しているマリウス・プティ氏よ。彼が出す曲はオリコン100位内は確実に入るというジンクスまであるの!」

 ふんす ふんすと鼻息が荒い容子(まさこ)さん。

 「音源はある?」

 「勿論よ。こっちが編曲用のCDで、楽曲提供する歌手のコンサートDVDね。マリウス氏が売り出してる歌手のメアリー・スーのものよ。」

 私は二つを受け取りCDプレイヤーでマリウス氏の曲を聞いた。流石はアメリカでオリコン常連というだけあって良い曲だと思う。

 でもボタンを掛け間違えたような違和感がこの曲にはあった。

 「最低限の基本は守るけど一部大幅に編曲する事になるけど大丈夫かな?」

 「大丈夫よ。どんな編曲になっても文句言わない契約しているからね。あんまり良くなかったの?」

 私の態度から容子(まさこ)さんは、残念な曲と判断してしまったので

 「うんにゃ、流石はプロだと思ったよ。ただ、こうしたら良いなと思ったフレーズがあったから組み込めないかなって。」

容子(まさこ)さんに説明し曲を聞いて貰う。

 「この曲でも良いと思うんだけどねぇ。」

 普通の人はそうなんだろうね。

 「マリウス氏が手掛けた曲を確認したいからCD集めてくれる?あとメアリー・スーさんのDVDも宜しく。相手を知らないと楽曲なんて描けないもん。」

 「分かったわ。直ぐに手配するわね。」

 大きな仕事にお金・成果とニヤける容子(まさこ)さんに私は苦笑いを浮かべるのだった。

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