第17話 私にとっての燈由ちゃん
私の名前は喜熨斗命。私がこの学校に入ったのは楽曲を提供していて時間の都合を付けやすいからだった。
星箕学園の授業はハイペースだと聞いていたけど年々授業が難しくて追いつくのに必死になっていた。成績も進級ギリギリで下から数えた方が早いくらいだ。5年生に進級した時に私は彼女に出会った。
彼女の名前は秋月燈由ちゃん。子役タレントとしてマルチに活躍している女の子だ。最初は有名人ってこともあって取っつき難いんじゃないかって思ってたけど、とても性格の良い子だった。
引っ込み思案の私にも分け隔てなく接してくれる。
「ねぇ、どうしたの?」
勉強が分からなくて困っていると
「あーこの問題難しいよね。(√a)2 = a√a2 = |a|( |a| は a の絶対値)・・・となるわけで平方根は2乗してaになる数って覚えれば楽だよ。」
私にも解りやすく説明してくれた。
「あ、ありがとう。その、また勉強を教えてくれる?」
「良いよ。えっと、名前なんだっけ?覚えてなくて…ごめんね。」
「ううん、良いの。私の名前は喜熨斗命。宜しくね、秋月さん。」
「命ちゃんだね!私のことは燈由で良いよ。家を持ち回りで勉強会してるんだ。命ちゃんも参加しない?」
彼女の提案に
「え?私が行っても良いの?」
凄く参加したいと思った。彼女が主催する勉強会は人気がある。私と同じように落ちこぼれだった二階堂君や佐藤さんの成績は今では上位に食い込んでいる。彼女に勉強を教えて貰った子は成績が大幅にアップしたのだ。
「勿論だよ。次の勉強会は明後日、光の家でするからね。光って分かる?」
「久瀬さんのことだよね。私がお邪魔しても良いのかな?」
「平気、平気。その内、命ちゃんの家にお邪魔させて貰うから気にしないで。って、私の家は狭いから呼べないんだけどね。私も広い家に住みたい~勉強会では招待出来ないけど、個人的に遊びには呼ぶから来てくれたら嬉しい。」
「嬉しい!」
本当に嬉しい。
こうして私は燈由ちゃんや光ちゃんと仲良くなった。彼女達の勉強会にも参加させて貰えて成績がアップした。
順風満帆の生活が一転したのは宮園さんが転入してからだ。
彼女はテレビの印象とは違って高慢ちきな女の子だと思う。燈由ちゃんをライバル視していていつも彼女を虐めようとしている。
燈由ちゃんは彼女を軽くあしらっているが、私を含めクラスメイトはハラハラしていた。
宮園さんはクラスメイトを下に見ているせいか険悪な状態で、燈由ちゃんが制止しなければ虐めに発展していたと思う。
だからクラスの子達は宮園さんを避けるようになった。
燈由ちゃんがドラマ『HURIRU』に出演した途端、彼女のイメージが下がった。
燈由ちゃんの役がハマり過ぎて彼女が本当に虐めをしている意地悪な女の子だとテレビ出演者や司会者が決めつけて悪口を言うのが悔しくて仕方なかった。
それでもテレビで悪口を言うだけだったので彼女の仕事に影響は無かった。しかし宮園さんがバラエティ番組で燈由ちゃんに虐められていると嘘を吐いてから炎上した。
燈由ちゃんの家が特定されて毎日嫌がらせをされたり、仕事の降板やキャンセルが相次いだと聞く。宮園さんがその後釜に座ったのだから嫌な性格をしていると思う。
絶対に許せない!
私はパパにおねだりしてICレコーダーを買って貰った。宮園さんの普段の言動を録音して局と週刊誌にリークしてやる!
宮園さんの言動の録音は思ったよりも早く集まった。誰かに指図する傲慢な態度だったり、燈由ちゃんの悪口を言ったり、私が彼女に燈由ちゃんを虐めるのを辞めるように注意すれと墓穴を掘った音声データーが集まった。
私はパパにお願いして音声データーを週刊誌の記者とテレビ局に渡して貰った。
週刊誌とテレビ局では宮園さんの虐められたという嘘を大いに報道してくれた。それとは別に私はYourTubeとネットの6chに音声データーをアップロードしたのだ。勿論、私とはバレない様に海外サーバーを経由したのは言うまでもない。
そのお陰で燈由ちゃんのイメージは回復し、宮園さんのイメージは大幅にダウンした。今では嘘吐き少女として名を馳せている。
それでも馬鹿な司会者を雇っているテレビ局が燈由ちゃんを非難していたけど、宮園さんと纏めて燈由ちゃんの会社から名誉棄損と損害賠償を請求された。
その桁は億に上るらしい。
それはそうだよね。損害賠償の内訳としては慰謝料と風評被害で降板させられたドラマに直前キャンセルになったCM数本と大金が動くんだもの。
嘘がなければ燈由ちゃんが仕事をして、その報酬を得ていたのだから、その分の損失を補填するのは当然のことだと思う。
宮園さんが15歳以上だったら刑事で訴えられていたと思う。
私はクラスで芸能界にコネのある子達にICレコーダーのデーターを焼き増しして親に宮園さん親子に注意するように仕向けた。
宮園さんが芸能界より居なくなってしまえば良い!
そんな私の願いが通じたのか、宮園さんの親が多額の賠償金を支払い本人は芸能界を引退し学校を去った。
ねえ、燈由ちゃん…少しは恩返し出来たかな?




