第16話 虐め
ドラマが放送され、私のイメージは大幅にダウンした。
泉琳の演技も上手になっていることから本当に性格の悪い子供として世間に認識されてしまったようだ。
TVでの多少のバッシングもあったが彼女が登場するまでは仕事には支障をきたさなかった。
私のイメージを大幅ダウンさせた張本人である宮園春香。
自称私のライバルはバラエティ番組で私に虐められていると公言したのだ。
「やられた!あのクソガキっ何てことをしてくれたの!」
激高するマネージャーの氷室容子に同意するように社長もお怒りのようだ。
「仕事のキャンセルが相次いでるわ。ドラマ1本は降板、CM3本はキャンセル……痛手ね。」
社長の言葉に
「社長、申し訳ありません。」
マネージャーの氷室さんが謝る。
「氷室さんのせいじゃないよ。悪役令嬢の役をすることになるから多少のイメージダウンは避けられないと思ってたけど、私を嫌いなMCやコメンテイターがここぞとばかりにバッシングしているから火に油を注いでるからね。その上で宮園さんのデマをお茶の間の皆が信じちゃったわけだし…家も荒らされてるから芸能界引退した方が収まりが付くかな?」
そこまで芸能界に居座るつもりもないから引退して火消しても良いと思ったが、社長が
「燈由ちゃんは悪くないでしょ!引退なんてしなくて良いの!私が何とかするわ!」
私の引退を阻止してきた。
でもなー芸能界は柵だらけだから辞めても悔いはないんだよね。それより自宅に連日の嫌がらせ行為で両親が参っているのが心配だ。これが30年後だったらネットで炎上していただろう。
「家も安全ではなくなった上に父の仕事にまで影響が出てるんですよ。早急な火消が出来るとは思わないんですが?」
「大丈夫よ!イメージアップのためにHURIRUの原作者の安生さんが燈由ちゃん専用の2時間ドラマの脚本を作ってくれると約束してくれたから!あとは宮園春香や燈由を悪く言うコメンテイターやMCをやっている会社を纏めて名誉棄損で訴えるわ。仕事をキャンセルした会社にも違約金支払って貰わないと…」
社長の提案に
「宮園さんは分かるけど、他の人ともなると言論の自由に抵触しませんか?」
難色を示す。
「子供の貴女を守る為なら言論の自由など無くて宜しい!貴女の家は危ないからこちらでマンションを用意するから引っ越しの準備をしてね。お父様の会社は確か東洋株式会社だったわよね?」
「そうだけど何か方法でもあるの?」
「うん、東洋株式会社の取引先に伝手があってね。貴女のお父さんを守るようにお願いしておくわ。」
権力翳していくスタイル嫌いじゃないよ。
こうして私達一家はマンションに引っ越しする事になった。持ち家には防犯カメラを各所に設置して、嫌がらせ達の行動を録画し警察へ被害届を出したのである。
「燈由ちゃん、大丈夫?」
教室に着くと真っ先に私に駆け寄って来た光に
「大丈夫だよ、それにしても虐めって困っちゃうね。」
へにょっと笑うと
「宮園さんのデマ発言のせいじゃん!私あの子大嫌い!」
ぷんぷんと怒る光。
「だからと言って宮園さんを虐めちゃ駄目だよ。彼女と同じレベルになって欲しくない。」
「分かってる。でも他の子は分からないよ?皆、燈由に助けられてるし、宮園さんに意地悪されてるから関わりたくないんじゃないかな?」
そうだね、彼女の態度の悪さに同級生はキレ散らかしているもんね。
「あの、燈由ちゃん……頑張ってね。」
クラスの中でも大人しいと評判の喜熨斗命ちゃんの応援に珍しいなと思いつつ
「命ちゃんもありがとう。人の噂も75日だよ。バッシングも凄いけどクラスメイトの皆は私のこと分かってくれてるから平気だよ。学校で虐められてたら自殺してたかもね!」
あはははとお道化て見せたら
「自殺なんて絶対に駄目!燈由ちゃんを宮園さんから守るよ!」
勇気を出してくれたようだ。
可愛いなぁ、と微笑ましく思う。
「燈由ちゃーん!勉強教えてー」
最近、何かと仲良くなった飯島香織がパタパタと宿題片手に寄って来た。
「どの教科?」
「英語!全然分からないよ~私、外国には行かないから英語なんて習得しても意味ないと思う!」
ふんすと豪語する香織ちゃんに分からない部分を聞いて
「英語は将来必要になってくるから勉強しようね。英語は平叙文・疑問文・命令文・感嘆文を覚えたら後は簡単だよ。このShe had been looking for the book. は『彼女は本を探し続けていました。』になるの。」
解説をする。
「香織ちゃんが英語に苦手意識があるのは勉強の側面が強い為だよ。コミュニケーションを学ぶ機会が少ないせいで苦手意識を持つんだよね。というわけで、これだ!」
カバンの中から私が使っている単語帳を出す。
普通の単語帳とは一味違う!可愛く見やすい単語帳だ。
「うわぁ♡可愛い!」
「これで勉強してみたいかも!」
「どこで売ってるの?」
他のクラスの子まで集まって来た。
「これは試供品なんだ。家にまだあるから欲しい人は言ってくれたらあげるよ。あ、でもレポート書かないといけないから感想書いてきてね。」
男の子には格好良い単語帳を、女の子には可愛い単語帳を渡していく。
「ペンはやっぱり面白いと楽しくなるよね。ぷっくりペン!」
ぷっくりペンで書くと文字がぷくっと膨らむのだ。勉強なんて楽しさがなければつまらないだけである。
「このペンは文具屋さんに売ってるよ。単語を覚えるだけでも文章が大体どんな感じなのか把握できるからね。単語を覚えた後に文法を覚えると良いよ。」
「へー面白そうだね。」
「でしょ。先ずはヒアリングから勉強すると面白いよ。洋画を倍速で見ると普通で見直した時に聞き取りやすくなるの。好きな台詞をリーディングすると覚えやすくて勉強にもなるよ。」
授業を始まるまで私は皆に英語を教えるのであった。
途中、宮園春香が教室に入って来たが誰一人として挨拶をする者はいなかった。盛大に嫌われてるなぁ。




