第10話 ミュンミュンのモデル
放課後、ライバル宣言をした宮園春香から逃げ出し私はロケ地にやって来た。
「燈由ちゃん、myun myunでの撮影は久しぶりね。元気にしてた?」
スタイリストの我妻さんの問いに
「元気にしてましたよ。というか、私の本業は役者なんですよーモデルなら他にも可愛い子がいると思うんですけど。」
ブチブチと愚痴る。
「でも姉妹雑誌のTEENSのレギュラーに起用されてるじゃない。」
「それはそうですけど、TEENSのモデルなのにmyun myunの雑誌に出て良いんですかね?それに宮園春香ちゃんに決まってたって聞きましたよ。どうして急に卸されたんですか?」
そう!これが聞きたかった。彼女がモデルを卸されなかったら私はオフだったのに。
我妻さんは私の耳元で小さく
「星宮裕翔君に迷惑を掛けたからよ。星宮君の事務所から共演NGが出ちゃってね。星宮君の親も宮園さんの親も両方共大御所でしょ?だから春香ちゃんにはイメージに合わないって理由を付けて降ろしたそうよ。」
今回の騒動の原因を教えて貰った。
「燈由ちゃんは元々はmyun myunでモデルデビューしたじゃない。TEENSに空きが出来たからそっちでモデルして貰っているけど、myun myunでも燈由ちゃんを使いたいって雑誌編集者の人が言ってたわよ。」
モデルは私には不向きだと思うんだけど、ドラマの影響をモロに受けて販売数を伸ばしたい為の起用じゃないだろうか?
「ん、これで良し!燈由ちゃん、可愛いわよ。」
「ありがとうございます!」
折襟シャツ + Vネック不規則ギャザーセーター+ 無地すね丈スカートにブーツ。可愛い春コーデだ。
アクセントにベレー帽と丸いフォルムのショルダーバックが可愛い。
「燈由ちゃん、可愛いね。」
カメラマンの石田さんの言葉に
「ありがとうございます。本日も宜しくお願いします!」
お礼と挨拶をした。
「きちんと挨拶してくれるのは燈由ちゃんぐらいだよ。」
苦々しい表情をする石田さんに私は苦笑いをする。うん、最近の子ってマナーがなってないんだよね。
「今日は星宮君と撮影があるって聞いたんですけど。」
撮影の詳細は聞いてないので石田さんに聞けば
「今日の撮影は燈由ちゃんと裕翔君がメインだよ。二人には恋人同士のデート風景を撮る予定なんだ。あとは他の女の子とのショットだね。」
初のデート写真だと言われた。最悪である…石田さんの駄目だしは凄いのだ。私も当初は駄目だしの嵐だった。スキルの表現を上げたおかげで駄目だしは無くなったが、それは普通の撮影での話だ。恋人同士とか言われても子供を異性の対象として見れない。中身はババアだぞ!せめて30歳ぐらいなら恋愛対象になるんだが…
「初めまして、星宮君。秋月燈由です。今日は宜しくお願いします。」
第一印象大事!と笑顔で挨拶すると
「星宮裕翔だ。」
滅茶苦茶素っ気なかった。
本当に大丈夫なんだろうか?まぁ、撮影が上手くいってオフの時間を少しでも確保したい。
「じゃあ、スタンバってー」
指定された立ち位置に立ちポーズを決める。
お互いに見つめ合う感じになっている。
「じゃあ、行くよ。」
シャッターの音が鳴った瞬間に私は恋する乙女に変わった。
揶揄われてふくれっ面になった表情、恥じらうような笑顔、勝気な瞳で彼を見つめる。
くるくると変わる表情とポーズ。
「燈由ちゃん良いね!裕翔もっと自然に!」
褒められた私と違い星宮君に駄目出しが出た。
う~ん、星宮君はアイドル所属だったと思う。モデルの仕事は初めてなんじゃ??リードした方が良いかもしれない。
「星宮君が好きなキャラを思い浮かべてみて。」
ぎこちない星宮君にアドバイスをすれば彼は怪訝そうな表情をする。
「このままだと石田さんからOK貰えないよ。星宮君の表情に合わせるから!」
「……分かった。」
釈然としないが頷いてくれた星宮君は好きなキャラクターを思い浮かべて私を見た。
私は星宮君に合わせて表情を作る。
指示されたポーズを決めていく。
「星宮君、次は苦手な人を思い浮かべて」
彼に指示を出して表情を引き出していった。
「星宮君、良いね!その調子だよ!」
シャッター音が響く中で私達は撮影を終えた。
「星宮君、お疲れ様。」
ぐっと体を伸ばして星宮君を見れば
「おう、今日はありがとな。」
照れくさそうな表情でお礼を言われた。
「どういたしまして。モデル初めてなのに石田さんから直ぐにOK貰えて凄いよ。」
アイドルだから魅せ方を熟知しているのだろうなぁ。私が初めてだった時は感覚が掴めなくて何回も撮り直しをしたものだ。
「いや、お前のお陰だ。お前が的確なアドバイスをくれた上で、俺に合わせて表情を作ってくれたからだと思う。」
「お前じゃなくて秋月燈由!あんたとかお前とか初対面で言われたら失礼だよ。」
お前と連呼するので注意すれば
「悪い、燈由。今日は助かった。ありがとう。」
名前呼びされた。でも星宮君が浮かべた笑顔は今日一番良かった。
私達のやり取りしていた写真が雑誌の表紙を飾ることになるとはつゆ知れず。
星宮君との撮影が終われば単体の撮影に女の子の集合での撮影と続く。
そんな中で星宮君のファンの子に絡まれた。
「ちょっと人気子役だからって裕翔の相手役になるなんて狡い!本当は宮園さんが相手役だったんでしょ!事務所の力を使ったんでしょ!?」
「そうよ!あんたみたいなブスが裕翔君に釣り合うと思ってるんじゃないわよっ!」
「本当なら私が雑誌のセンターを飾る予定だったのに!」
ぎゃんぎゃんと文句を言われて困った。
「きちんと石田さんの指示に従わないからでしょう。私に八つ当たりしないで。あと宮園さんが降ろされたのは星宮君側の問題だから仕方ない事じゃない。私のせいにしないで。」
大人気ないかもしれないが、黙って耐えると調子に乗るのが小学生マジックなのだ。ここはキッパリはっきりと物申す。
私が反論したことに頭にきた彼女達は、あろうことか私を突き飛ばした。
ヒールのあるブーツのため私は体制を崩し転倒した。
「きゃああ」
女の子っぽい悲鳴が自分の口から出るとは思わなかったわ。本日の天気は晴れていたとはいえ、昨日は雨が降って土がぬかるんでいたのだ。転んだ先はぬかるみのため衣装に泥がベッタリと付いた。
「貴女達何やってるの!?」
スタッフさんが気付いて慌てて駆け寄って来た。
「わ、私達は何も…」
「そうです!この子が勝手に転んで…」
「悪いのはこの子よっ」
口々に自己防衛する少女達に
「俺、見てたぜ。燈由に詰め寄って突き飛ばしてたところ。お前等最低だな。燈由、助けられなくてごめん。男が関わったらややこしくなると思って…」
星宮君が助け船を出してくれた。彼の言う通り、もし彼が助けに入ってたら悪化の一途を辿ったことだろう。
「懸命な判断だと思うよ。別に怪我はしてないけど衣装が…」
ベッタリと服に付いた泥を見て溜息を吐いた。
私は撮影も終わったので我妻さんに連れられて更衣室で着替える。服に関しては彼女の親に弁償させると石田さんと我妻さんが怒っていた。また問題行動を起こした彼女達は二度と起用しないとのこと。myun myunのメンバーが総入れ替えになるのであった。




