好転と転落
ー母を苦しめる祖母を殺すー
当時はその事で頭がいっぱいになっていた
そうは思うが捕まりたくはない
小学生の頃から母の影響で
サスペンスものは沢山見ていたが
結局最後に犯人は捕まるものだ
そして謎を解く側より犯罪者目線で
その手の映画をよく見るようになった
徐々に祖母という身近な存在への
殺人願望が強くなっていった
そして家にあったパソコンで
実際にあった殺人について調べあげた
自殺全書の次に殺人全書という本も買った
とても参考になったが
しかしその中でも完全犯罪は
ほとんど言うか無に等しかった
それでもその思いは止まらなかった
まず毒殺が思いついた
混ぜるな危険の薬品を祖母の
食事に混ぜるのだ
即効性はないらしいが徐々に
死に至らしめることができる
しかしそううまくはいかない
何故なら食卓が一緒だったからだ
祖母にだけ毒を盛るというのが不可能
少年法も調べバレてもいいのではないか
だが人殺しの自分を家族は受け入れてくれないだろう
その葛藤が私を苦しめる
そして熱い殺人願望と共に月日が流れ
入院していた父方の祖父が亡くなった
肺炎だった、生きている時は
あまり話さずたまにお小遣いをくれる
無口で変わった祖父だったが
愛していたので葬儀では泣いた
こうして祖母はあっさりと田舎へ帰り
母の精神疾患も良くなっていき
昔のような母に戻りつつあった
これで母は責められることが無くなる
私も誰も人を殺さずに済む
祖父が亡くなったのは悲しかったが
不思議と晴れやかな気分だった
だが毎日祖母を殺すことに
熱中するあまり私自身が
精神不安定になり再び学校へ
行くということが困難になっていた
ついに卒業間近高校入学について
「私はどこへも行きたくない」
「誰とも関わりたくない」
そう淡々と両親に告げた