自傷
気がつくと私は母のピンク色の
カミソリを手に自室にこもった
刃を抜く……手首にあてる……
不思議と怖くはなかった
そっと動かしてみた
浅く浅く
これが自傷行為の始まり
リストカットとの出会いである
ドクンドクンと脈を感じ
生きている実感をした
さっきまでの不安が嘘のように
止められなかった
2度3度と繰り返し私の手首は
歪な横線に沿った形で血でまみれた
ああ、生きている
昔感じた幸せを感じた
そこからは隠れるように
自傷を繰り返した
気づいたら小学校6年生になり
学校では口数が減って
友達も離れていった
保健室登校も多くなり
次第に学校に行かなくなった
個人面談をされ自傷行為のことも
発覚するのは時間の問題だった
親からもらった体になんてことをと怒鳴る父
どうしてこんなことしたの?をと泣く母
「死にたかったから」
そう答えたが本心ではなかった
父に生まれなければよかったと言われ
死ぬ事も考えたがそんな勇気はなかった
そして何よりあの気持ちよさに酔いしれていた
その後色んな話をした
どうして死にたいのかや
学校にはいきなさいやら
簡単に言えば叱られた
その時狂っているかもしれないが
やっと両親が私を見てくれたと
愛してくれてるという確認が出来た
その喜びが勝っていた
それからは監視されているような
生活が始まった
体に傷はないかを確認される毎日
ますます学校へは
行かなくなり部屋に籠る
そんな時にふと私は愛されてるのではなく
完璧な教師夫婦の娘に傷があるとまずい
世間体で心配をしているだけ
そんな考えが頭を巡った
ずっとそういう思いを抱えながら
月日は流れ中学1年になっていて
手首の傷はすっかり白くなっていた