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第八話 剣帝

二回目の出陣。

前回は魔族の進軍に対して事前に罠を張り撃退することに成功したのだが、今回は魔族の手に落ちたトルメタン王国という小国の奪還作戦だ。

侵略の起点となりかねないため、今回の作戦が失敗すれば魔族側に好機を与えることになってしまう。それだけは絶対に避けなければならない。

しかもこちらから攻め入るため、前のように策を弄することは難しい。

そのため、今回の奪還作戦は三大国家である我らがフェグダ王国とメラク帝国との合同で執り行うこととなった。


こちらの最高戦力は餓狼隊。それに対して帝国は――


「まさか、剣帝様と同じ戦場に立つことになるとはな」


嫌味っぽくザックがぼやく。


『剣帝』ノア・フェグルス。

かつて龍を滅ぼした三英雄が神から賜った剣のうちの一振り、『ダインスレイヴ』に選ばれた英雄だ。

連合軍のなかで一番を選ぶなら彼になることだろう。


冷酷無比の殺戮機構(マシン)と評される男。少し離れた位置にいるが、背筋が凍るような感覚がひしひしと伝わってくる。


「味方でよかったと心から思うっすよ」


剣帝の風格に気圧されながらミナトが呟く。


そんな様子の連合軍に対して、魔族が奇襲を仕掛けてくるということはなく、トルメタン王国はもうすぐそこまで迫っていた。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 


鳴り響く剣戟と怒声。

俺たち連合軍はトルメタン王国の王都へと突撃していた。


人生二回目の戦場。相変わらず慣れることはないと思うが、一度目の時と比べればいくらかましになっただろう。

俺は戦場を駆けまわり、敵を次々に制圧していく。ただ、やはり殺すことはできないままだ。


城壁を突破し、市街地へと突入してから戦場は混沌と化していた。

行軍しようにも入り乱れた地形がそれを邪魔する。

陣形が崩れれば兵法もろくな役割を果たせず、戦場は瓦解し始めていた。


対人戦闘の訓練を主とした軍隊と違い、入り乱れた戦場での不意打ちや戦闘は魔族側に分があるらしい。

今はその穴を埋めるため、遊撃部隊である餓狼隊が戦場を駆ける。


しかし、どれだけ連合軍が不利な状況になろうと、敗北を確信する兵は一人たりともいなかった。

なぜなら――――


「だれか、こいつを止め――グェッ!」

「この化け物が――ガハッ!」


軍の先頭に立つ剣帝が立ちふさがる魔族たちを蹴散らしながら王城へと猛進する。

剣帝の剣で魔族たちが切り伏せられていく。


「――クソッ!」


剣帝の横に割って入るが、その速度についていくことができず結局はやや後方で打ち漏らしや奇襲を仕掛けようとする魔族を倒すことに専念する。

剣帝はそんな俺の様子を一瞥すると敵を屠りながらこちらへ話しかけてくる。


「まさか、宝剣に選ばれたわけでもなく俺について来るやつがいるとはな」


話しかけながらもその手が緩むことは一切ない。

続々と魔族たちを殺しながらも剣帝は続ける。


「だが、敵を前に手を緩めるのは貴様の弱さだな」


剣帝の一言に思わず手が止まる。


王城へとたどり着いたその時、市街地の方向から大勢の魔族たちが押し寄せてくる。

しかし、剣帝は踵を返すことなく王城内へと突入した。


今まで剣帝が先陣を切っていたおかげで戦線が保たれていたようなものだ。

とどまろうと足を止めたその時。


「止まるなカナタ。行け!」


アイクがこちらに振り返ることなく指示を飛ばす。


「――でも…」

「隊長命令だ!絶対後で合流する。だから行け」


それだけ言うとアイクは後方へと駆けていく。

俺は剣帝の後を追って王城へと向かった。

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