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第零話 憧れの始まり
自分が覚えている一番小さい頃の記憶。
家族との誕生会、はたまた友達との喧嘩。
ある人は幸せな、また別の人は嫌な思い出。
俺の一番最初の記憶は、とある本との出会いだった。
世界を支配する龍を倒すため、三人の英雄が神から与えられた剣で立ち向かう物語。
過去の逸話を描いた物語は、幼い俺の心を動かすには十分だった。
「お母さん、俺剣士になる!」
そう言って、朝早くから家を飛び出して日が暮れるまで剣を振り続けた。
晴れの日も雨の日も、変わらず剣を振り続ける日々。
俺の村には同じ年頃の人がいなかったというのもあるだろう。
しかし、嫌ではなかった。
小さい頃から今に至るまで、記憶のほとんどが剣だった。
そして、剣とはなにか。いつもそればかり考えていた。