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第七話 夜明けの狂気

「イテテテ…」


 俺はコメカミを押さえつつ、突っ伏していた机から顔を上げた。


「おはようさん、デバフで二日酔いとかついてへんやろな、笑笑」


 ニヤニヤと笑いながらテーブルに戻って来る梅梅、既に起きていたのか。


 しかし、中身が男と分かっている女外装を寝起き直後に見るのは精神衛生上良くない気がする。


「ついては無いけど、なんか身体の節々が痛いからこれが続くとデバフつくかもね。むしろベッドで寝たらバフ効果があるんじゃない?」

「あ〜そういうパターンもあるなぁ」 

「それにしても…現実なんだねやっぱり」


 夢オチという展開をどこかで期待していた自分がいたことに気付いた。


「あ?あぁ、そうやな、寝てたもんな」

「え?寝てないの?」

「ベルが酔い潰れてからちょっと出かけてたんよ」

「えぇ…大丈夫かそれ。そういえば神丸は?」

「まだ帰ってないんか、まぁ死者のカウンター動いてないから大丈夫なんやない?」

「いやいや、別行動かよ…てか、俺を置いていくな」

「すまんすまん、町中ではどうもフレンドリーファイアどころか寝てる相手の持ち物とか身体も触れなかったから置いてくしかなかったんよ、見えない壁でもあるみたいに」

「へぇ、割とそこは優しいんだね。デスゲームで優しいとか変な話たけど。それで、どこ行ってたの?」


 これが成果や、と梅梅はテーブルの上に緑、赤、青、白の4種類の草を積み重ねていく。


「おま…どんだけ草刈りしてたんだ」

「いやぁ、薬草の狩場は奪い合いになるから深夜帯に限るわ。盗賊スキルのスティールも使って取りまくったったからスティールのレベルも7 まで成長したで」

「あぁ、それで盗賊にしてたのか…てか、スキルレベル上がりすぎ!?最大10だよね!?」

「繰り返すことで経験値がたまるシステムやからな、盗みにくいモンスターと違って植物は効率ええんよ」


 盗賊スキル『スティール』はモンスターだけでなくドロップアイテムが出るものからアイテムを獲得する事ができる。


 例えば薬草をスティールしながら採取するとほぼ2倍採取できるという、ある意味チート性能なスキルだ。


 その時、視界の端が動く。


「あ」


――――――――――――――――

DAY【1094/1095】

Time【07:30】

DEATH【53/1000】

――――――――――――――――


 死者が1人増えていた。


「まさか…死んだ?」

「南無」

「勝手に殺すな、俺に気付いてただろ」


 相変わらずの態度で神丸が戻ってきた。


「なんや、生きてるやん」

「初見じゃないからな。今のところモンスターの特性が20年前と同じだ」

「あー、特性知らないと確かに死ねるか」


 モンスターの特性は4つある。


①アクティブ

何もしなくても襲ってくるタイプ


②非アクティブ

こちらが攻撃するまで襲ってこないタイプ


③リンクタイプ

一匹攻撃すると周辺にいる同種のモンスターが一斉に攻撃してくるタイプ


④ルートタイプ

ドロップアイテムを集めているタイプ


「そういう事だ、タイマンができるモンスターだけ相手にして他は避ければ良い」


『ガタッ』と言う音とともに背後から弱々しくも苛立った声が聞こえる。


「なんだよ、それ」


 視線を移すと、まるでボロ雑巾の様な表情でやたら前傾姿勢になっている白髮の男がいた。


 それを知ってたらあいつは死ななかったのに、とか聞こえた様な気がする。


「ゲームの話だが?」


 神丸は相変わらずの感じで男に言い放つ。


「ゲームだと!?ダメージが叫ぶ程の痛みを感じるものをゲームだと!?」


「ゲームだろ?」

「ゲームやな」

「いやいや、デスゲームでしょ…」


「バカか!?実際に死ぬんだぞ!?」


「死ななければどうと言う事はない」

「リアルでホンマに死ぬか実際わからんし?」

「てか、そんなに痛いの?ダメージ」

「俺は筋力全振りだからまだダメージを食らってない」

「慣れだよ、慣れ。技術の進化を感じるなぁみたいな感覚?ほら、やらんかった?ポレステからポレステ4で発売されたメタルポアの進化に感動した感覚。俺あの時、グラスに入った氷を撃つたびに弾け飛んで小さくなっていく事とか、敵兵士の頭に撃った麻酔弾が撃てば撃つほど突き刺さって限界まで刺して感動したりとかのそんな感じのやつよ」

「少しは分かるが…」

「え、痛いの?そんな痛いの?」


「な、なんだよそれ、狂ってる、あんたら狂ってるよ!!」


 男は、狂気で歪んだ顔で酒場を出て行った。


「いやー、アレが一般的な感覚なんかなぁ」

「さぁな」


 やはり二人は、相変わらずの二人だった。

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