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第五十八話 仕様とシステム

―――――――――――

DAY【1090/1095】

Time【19:00】

DEATH【125/1000】

――――――――――― 


 あれから俺達はモンスターと遭遇する事なく、神丸が待つ【砂漠の街モロクナード】の鍛冶屋へ日没前に到着することができた。


「おいおい、想像より酷い姿だな」


 神丸は梅梅の姿を観察しながら【革の眼帯】と【麻布のポンチョ】の受け渡しを始めているようだ。


 梅梅はアイテムボックスからポンチョを取り出し、片手で装備しようと頑張っているがどうやら難しそうだ。


「今更なんやけどさ、プレートアーマーとか鎖かたびらとか、両手でも1人で装備しにくいやつってどうやって装備すんの?

 街の外なら接触禁止制限無いから問題ないんやろうけど」

「あ〜、そういや街中じゃ見えない壁で触れられないもんね」

「何かシステムがあるんじゃないか?

 【円卓】さんはガチガチに固めてたんだろ?

 わざわざ外で着用してるとは考えにくいが」

「ん〜……あ!これか!

 【装備着脱補助の申請】って出たわ。

 ということで、ベルよろ」 

「はいはい、手が届かないからしゃがんでよ」

「ふむ若干面倒ではあるが、街中の安全が保証されるなら良いシステムではあるのか」


 梅梅にポンチョを被せ、眼帯の締め付けの調整をしていると神丸と梅梅が恐ろしい事を話し始めた。


「ところで、ウメ。その隻眼、三国志の夏侯惇を見習って眼球は食べたのか?」

「いや、さすがにそれはできんかったな。

 ちょっとメンタル的な拒否反応出たわ」

「試してたんかい!?」


 ついツッコミをしてしまい、梅梅の後頭部をチョップすると見事にクリーンヒットし、眼窩に詰め込んでいた丸めた薬草が眼帯の奥から飛び出てきた。


「「「!?」」」


 この瞬間、偶然にも街中での触れ合いが可能な事を発見する。


「え、ゴメン!?」

「ダメージは発生せんかったな、痛みもなし」

「もののついでだ、ベル。

 頭が触れるのか試してくれ」

「あ〜これは……めちゃくちゃ気持ち悪いな。

 砂埃と返り血が泥の様に付着してるし、今更だけど臭いぞ。

 固まってたから封じられていた臭いが出てきた感じがする」

「ふむ、実は村正の呪い解除用に聖水も買っておいたんだ。使用するからそのまま洗ってみてくれ」

「OK」


 神丸がガラス瓶に入った聖水を頭から梅梅にかけ、俺がそのまま頭を洗う。


 神丸は髪の状態でも見ているのか、2つ目の聖水に手を伸ばした。


「なんや、もしかして結構金持ちなん?

 頼んだ装備に続いてて聖水もあるやなんて。

 レアアイテムが出て売ったりしたん?」

「いや、八鷹とマロン君に借りた」

「まじかよ……借金がまた増えてるじゃん」

「まぁドロップアイテムをまだ売却してないからな、おそらく今回のドロップ品で2人にはすぐ返せるだろう」

「2人には苦労かけたくないなぁ」

「ほんならまぁ、後で色つけて返しとく感じにしよか」

「それで宜しく頼む。良し、こんなもんだな」


 神丸はそう呟くと改めて梅梅を観察する。


「ちなみに、今更だがハイヒーリングは使えなかったのか?

 デバフのために隻眼と隻腕を残したままとか言わんよな?」

「まぁそれもあるけど。

 クロノス達に任務完了報告する時にな、こっちの方が恩売れそうやなと思って」

「何て恩着せがましいッ?!」

「高く売れるもんは高く売らんと」

「まぁとりあえず了解した、ハイヒーリングの検証は後回しだな。

 それで、この後はどうする?」

「そうだなぁ、お互い疲弊してるだろうからって事で話し合いは明日に持ち越すとかどうや?」

「ふむ」

「俺は賛成かな、クロノスシフトの人達かなり疲弊してたし休む場所の確保とかで忙しいんじゃない?かなりの人数なんだし」

「確かにそうだな、では俺がその旨を伝えてこよう」

「ほんならよろしく、酒場か宿屋で待ち合わせ予定やったからちょっと探して貰う事になるけど頼むわ、ひょろっとした黒髪の黒マントの男がクロノスや」

「あぁ、視認しているから大丈夫だ。

 それじゃ行ってくる」

「俺達は鍛冶屋の中にいるわ、よろ〜」


 神丸を見送りながら梅梅に連絡する。


「マロン君がびっくりしない様に先に一声かけるね」

「オッケー、ほんなら少し待っとくわ」


 俺は梅梅を外に残し鍛冶屋へと入った。

 

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