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第五十七話 動機と原動力

 梅梅の頭が悪い戦闘を見守ってしばらく経った頃、神丸から連絡が入る。


『クロノスとエリスと思われるプレイヤーが到着した、俺達もあわせて街に入る。

 戦闘を中止して戻ってきたらどうだ?』

『了解。

 ウメ、俺達はどうする?

 ワープポータルを使う?』


 サンドワンとの戦闘を作業ゲーの様に淡々とこなしていた梅梅が背中越しに返してくる。


『ワープポータルの仕組みがまだハッキリしないから悩むとこやな!

 モンスターもワープポータルを利用できる可能性があるやろ?』


 ユニークスキルの効果でダメージを受けてない事から噛みつかれても痛みが無いらしいが、腕欠損などのデバフによる痛みはあるようでいつもより声に張りがあった。


『あぁ…リアリティを追求するならそうなるのか。でも街中じゃ確か戦闘できないよね?』


 対する俺はダメージ無しで凄惨な景色を見続けているためなのか、梅梅のやっている頭の悪い戦闘にリアリティを感じないからなのか分からないが、まるでVRホラーサバイバルゲームをやってるような感じで恐怖の感覚が麻痺してきていた。


『モンスター相手なら解除されるんやない?

 【悪魔召喚の枝】使用で街中の戦闘行為が昔はあったやんか』


 当時はドロップアイテム【悪魔召喚の枝】を使用した街中でのテロ行為やイベントかあり、その時だけは街中での戦闘行為が行えたのだ。


『あぁ、なるほどね』

『あとあれやな、ワープポータルの事はクロノスシフトにはまだ知られたくないのもあるし、ワープポータル案は無しでいこ』

『それだと全滅させるか逃げるかしかなくなるけど、いけそうなの?』

『たぶん噛まれてる感じからして今から殺るこいつが最後やと思うんよ。101頭目やな』

『数えてたんかい』

『素数を数えて冷静になるみたいな感じで数えてたわ。いやしかし、リアリティ重視してくれたおかげで助かったでホンマ。

 モンスターにも急所攻撃が有効ってのがこれで分かったな』


 梅梅は足に噛みついていたらしい見えないサンドワンの脳天にナイフを突き立てると、何度かナイフを揺らす。


『ベルが経験したネクロ戦で【円卓】さんの精鋭が即死してたのも、この急所判定があったってのあるんちゃうか』


 絶命したサンドワンが地面に転がり姿を現す。ちなみにモンスターの死亡はプレイヤーと仕様が違うらしく、死亡後数秒してからドロップアイテムに姿が変わる。


 サンドワンのドロップアイテム【砂犬の牙】があたりに散乱しているが、こちらは消える気配がなかった。


『良し、これでホンマに終わったっぽいわ。

 ドロップアイテム拾うか』


 そう言ってこちらを向いた梅梅はまだ呪い状態にあるが、黒いエフェクトがあっても全身が真赤に染まっているのが分かる。

 更に隻腕で隻眼―――


『いやいや?!

 最初に防御力上げるためのダメージ、それかッ!?

 今更だけど、頭おかしいよ?!

 ホラーゲーム慣れしてても嫌悪感ありありのありよ?!』


 梅梅の左目があった場所は手当のつもりなのかおそらく薬草が詰め込まれているようだ。


『ゲームじゃないとできん戦闘やわな』

『痛みを感じないゲームなら理解できるけど、死に繋がるリスクに見合った戦闘?!』

『まぁなんや、リスクとかは置いといて。

 これで俺の憧れのキャラクターに近づけたや んか』


 そう言って梅梅は【妖刀村正】を片手に持つと『畳返し!!』と叫んで格好をつけた。


『……色々ツッコミたい所があるけど、あえてツッコまないよ?!』

『ウソやん?!

 せっかく命をかけて再現したのに』

『命のかけ方がおかしいから?!』

『盛り上がってるところすまんが、取り敢えず戻ってきたらどうだ?』

『なんや神丸も冷たいなぁ』

『戦闘でハイになる気持ちとわからんでは無いが、とりあえず先に帰ってきてクロノス達との取引を済ませてほしいぞ』

『……まぁ、それもそうか。了解』


 梅梅がアイテムボックスにドロップアイテムや妖刀をしまい込むと同時に呪いの効果が切れた。


『お、丁度ええやん。

 ベル速度上昇を頼むわ、これで呪いの移動速度減少デバフ消えたし、走って帰ろ』

『オッケー、ヒーリングはどうする?

 まだ覚えてないけど欠損を治せるっていうハイヒーリングも試してみる?』

『腕の欠損と隻眼はこのままにしときたいからヒーリングだけ頼むわ』

『はいはい。それなら、マロン君に会う前に身なり整えてよね。心配させちゃうだろうし』

『神丸、眼帯とポンチョ的なやつ買っといてくれんか』

『……仕方のない奴だな』


 俺は『速度上昇』をそれぞれにかけると梅梅を先頭に【砂漠の街モロクナード】への帰路につく。


『ところで、今気付いたんやけど【ワン・オー・ワン】を獲得って出てるわ』


 梅梅が走りながら聞いたことの無いワードを話す。


『なにそれ、アイテム?』

『いやなんやろなこれ、アイテムボックスには無さそうやけど―――』

『また【ユニークスキル】か?』

『いや、スキルでもステータスでもなさそうなんやけどな……聞いたことないやんな?』

『ああ、初耳だな』

『俺も知らないよ』


 走りながら調べているのか、たまに転けそうになりながら走る梅梅についていく。


『あ〜あったわ。

 初心者用ナイフの【称号】みたいや』

『【称号】システムなんかあったっけ?』

『いや、新規導入やない?例えるなら竜殺しのなんたらみたいなもんやと思う。

 101匹のサンドワン討伐でつくんやない?』

『その話し方だと武器の能力値があがるということか?』

『あー説明文読むわ。

 初心者用ナイフ【ワン・オー・ワン】

 獲物をどこまでも追う犬型モンスターの粘り強さを得る。

 効果:プレイヤーのHPが低い状態になると、クリティカル発生率が上昇する。

 逃走する敵に対して、追走するスピードが増加する』

『うわぁ、脳筋……』

『ナイフなのが残念だったな、防御力の高い大型モンスター相手なら全く役にたたんだろう』

『あ、そろそろ着くわ。どこで合流する』

『鍛冶屋で頼む、マロン君達はひとまず中に入っておいてもらう』

『了解』


 俺達は神丸の待つ鍛冶屋へと急いだ。

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