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第五十ニ話 精算と名探偵

―――――――――――

DAY【1090/1095】

Time【16:30】

DEATH【82/1000】

――――――――――― 


 一通り散策を行った後、俺達は無事【最初の街アーク】に帰って来ていた。


 思った以上に時間が経っていて昼飯を取りそこねている事に気づくが、結果的に梅梅のサバイバル飯を全員が食べた感じになった事もあって満足感は無いものの空腹感も無かった。


「これで全部かな」


 いつもの酒場近くの路地裏で各自拾っていたドロップアイテムを梅梅に渡し終える。


「精算してくるわ、ちょいまち」

「よろ〜」


 梅梅がドロップアイテムの精算に行っている空き時間に神丸が若い二人に労いの言葉をかける。


「二人ともお疲れ様」

「「お疲れ様です」」

「今日は初日だと言うのに色々と振り回してすまなかったな、今後は配慮していきたいと思う」


 言葉はともかく神丸は相変わらずの仏頂面なので、慣れてないうちは誤解を招きやすい。合の手を入れておこう。


「思うじゃだめだよ?配慮してよ?ホントに」


 更にやれやれと肩を上げる事で場の空気を和ませる。


「まぁ俺なりにな。ウメにも言い聞かせる」

「頼むよホント、デスゲームなんだから。

 八鷹とマロン君も思った事があったら遠慮しないで教えてね、パーティーでしっかり連携して困難を乗り切ろう」

「了解です」「頑張ります!」


 これまでの混沌としたパーティーに八鷹とマロン君が加わった事で、何だか良い雰囲気になってきた気がする。


「ウメのサバイバル飯どうだった?」

「割とイケますね、モンスターを食べて強くなる系の有名小説を思い出します」

「あ、僕もです!」


 梅梅の行動で偶然にも共通話題を発見して盛り上がる2人を見てなんだかホッとする。


「アリは大丈夫でしたけど、小説みたいに昆虫を何でも食べる!?

 って感じの挑戦はできる気はしなかったですけどね。ウメさんはなんであんなに平気なんでしょう?」

「そうですよ!

 1番最初に試すのって、後から食べる僕達より怖いはずですよ!?」

「うーん?ゴッド、どう思う?」

「そうだな…色々好奇心や探究心もあると思うが、やはり金だろうか」

「え、金?おかねのこと?」

「あぁ、ウメのプレイスタイルは基本的に金だったろう?」

「いやまぁ…レベル上げるとか、強いスキルとかあんまり興味なかったよね。

 むしろネタスキルとかロマン職ばかり…」

「そういうことだ」

「いやいや、それがどう関係するの?」 

「デスゲーム攻略はゲーム世界の金だけでなく、ボス撃破による賞金も関係してくるんだ。

 おそらく金の前では全てが些細な事なのだろう、恐怖やプライドより金銭欲が優先されている結果だと思うぞ」


 神丸が大きく頷いていたその時、見覚えのあるアナウンスが展開される。


―――――――――――

DAY【1090/1095】

Time【16:45】

DEATH【84/1000】

――――――――

NEWS【ルドン送り】ライアーが草原1-3フィールドBOSS【大蝿】を撃破しました(賞金500万円)

――――――――


「くそぉぉぉぉぉおお!?」


 梅梅がアナウンスを見て反応しているのか叫びながら戻ってきた。


「神丸!!

 狙ってた小ボス倒されてるやん!?」

「落ち着け、どちらかと言えば大手ギルドがこれまで倒してないのがおかしいくらいだと思うぞ」

「せやかて賞金が。初期マップの小ボスくらいやないとうちの規模じゃ厳しいんやで」

「落ち着け、そもそも俺達が立て続けにボスを倒せたのは運が良かったからでしかない。多くを望みすぎるな」

「まぁ、そう言われたらそうなんやけど」

「同盟も組んでるんだ、計画を立てていけば今後しっかり稼げるはずだ」

「ぐむむ」


 梅梅に神丸が説いている姿を見ていると、神丸はまだちゃんとしてるなと思えてしまう。


 それに、神丸の考察する様に梅梅の原動力が金って説が濃厚に感じるな。


「あ、あぁぁ!?ベルさん!?」


 のんきにそんな事を考えていると、突然マロン君が悲鳴に近い声で叫んだ。

 マロン君の方を見ると青い顔をして呆けている。


「ぅわ…」


 八鷹も続けて固まってしまった。


 いったい2人は何を見て―――


DEATH【85/1000】

DEATH【86/1000】

DEATH【87/1000】

DEATH【88/1000】

DEATH【90/1000】

DEATH【93/1000】

DEATH【95/1000】

DEATH【98/1000】


 立て続けに増え続けるカウント。


DEATH【100/1000】


 とうとう死者が100人を越えた…。


 あまりの異常さにその場の全員が息を呑む。


――――――――

NEWS【クロノスシフト4th】ハー氏が砂漠フィールドBOSS【砂漠狼】を撃破しました(賞金1000万円)

――――――――


「「「!?」」」


 俺と神丸、梅梅もあまりの事に絶句する。


 クロノスシフト!?

 クレさんが調査しているあのクロノスシフトか!?


 どういう事だ?

 初心者同然のギルドではなかったのか?


 砂漠フィールドボス【砂漠狼】は巨大狼のボスで推奨パーティー人数30人〜という厄介なボスだぞ?


 それにあそこには他にも厄介な…


DEATH【101/1000】

DEATH【102/1000】

DEATH【103/1000】

DEATH【105/1000】

DEATH【108/1000】

DEATH【110/1000】

DEATH【112/1000】

DEATH【115/1000】

DEATH【125/1000】


――――――――

NEWS【クロノスシフト1st】クロノスが砂漠1-3フィールドBOSS【デスワーム】を撃破しました(賞金5000万円)

――――――――





     は?



 



「――さん!!ベルさん!!」


 マロン君の声が俺の正気を取り戻した。

 あまりの出来事に思考が停止していた。


「ゴッド!ウメ!」

「あぁ」

「行くしかない!!」


 すぐに神丸は酒場に現れる可能性があるクレさんへの言伝に走り、梅梅は精算代金を俺に預けてアイテムを買いに走った。


「え、ベルさん、まさか行く気ですか?!」


 俺達の異変を察した八鷹が真剣な顔で聞いてくる。隣のマロン君はどこか不安そうだった。


 俺は八鷹とマロン君に精算代金を分配しながら説明する。


「うん、二人にはまだ話せて無かったけど、友人の子供が【クロノスシフト】に所属してる可能性があるんだ、確かめに行かないと」 

「あんなに死者が出るような所に準備も無いのに行くつもりですか!?」

「ボスは攻略されてるから、無理な戦闘を避ければ追いつけると思う」

「あ、あの、あれだけ犠牲が出たなら街に戻ってくるんじゃないでしょうか?」

「あの【デスワーム】ってやつなんだけど、2つ目の街【モロクナード】の門番的なやつなんだよ。推奨パーティー50人〜って厄介なやつなんだけど、あれが倒されたなら【クロノスシフト】はこの街には戻らない可能性があるんだ」


 神丸と梅梅が戻って来たので二人に速度上昇魔法をかける。


「2人とも、明日の朝には戻るから!」

「俺達を置いて行くんですか!?」

「僕達も行きます!!」 

「いや、でも」

「「行きます!!」」


 2人の熱意に押され俺だけでなく、神丸と梅梅も何も言えなくなった。


 沈黙が続く中、しばらくして梅梅が俺に何か渡してきた。


 こ、これは!?


 俺の手の中に虹色に光る宝石があった。


 …いや、なんだこれ?初見だぞ?!


 梅梅を見ると深く頷いている?!


 な、なんだ?

 梅梅がこのタイミングて渡してくるアイテムなら…えぇと…アイテム概要欄……触媒!? 


 そうか!そういう事なら!?


 俺は大きく息を吸い、イメージを膨らませる。


「悠久の時を旅する星々の光よ、遠き場所へと繋がる道を、今、ここに創造せよ!!

導きの門、現れ出でよ『ワープポータル!』」


 詠唱を終えるとマンホールサイズで虹色の光を渦上に放っている光の穴が石畳の上に発生したのだった。


 そしてその瞬間、梅梅は虹色に輝く光の穴に飛び込んだ。

 どこにワープするのか、ワープした後はどうするのか、そもそも安全なのか、何も確認せずに飛び込んだのだった。

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