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第五話 酒場

 ギルドを出て宿屋に着いた俺達は避難所と化していた宿屋に入る事が出来なかった。


 仕方なく酒場に戻り、ぶどう酒とチーズ、干し肉を購入。支払いは初心者用アイテム袋に配布されていた貨幣を使った。


「いやー、まさかまさかやな。宿屋めちゃくちゃ人いてたとか。酒場は入れて良かったけどさっきと違ってまぁまぁ混んでるな」


 梅梅は干し肉とチーズを交互に口に運びながら忙しそうに話す。


「失念していたな、約1000人も泊まれる宿屋なんて無いというのに」


 神丸はぶどう酒が気に入ったのか、既に4.5杯空にしていた。


「仕方ないよ、20年前と違って昼夜の設定があるなんて思わなかったし、味覚とか空腹感があるのも今分かった事だし…それより神丸、あんまり飲むとお金が…」

「大丈夫だ、明日稼げば良い」

「大丈夫かなぁ…」


 今の使い方では明日には資金が尽きるだろう。おそらくドロップアイテムを売って貨幣を稼ぐシステムだと思うが、換金する方法を確認しておかないと…。


「ベルは心配症やなぁ、街中はフレンドリーファイアできん設定みたいやから、まぁ広場とかで野宿してもええんやない」

「俺は硬い地面で寝るのは嫌だよ…」

「まぁまぁ、それより神丸、さっきギルドで揉めてたけど何が原因やったん」

「ステータスと職業の不一致からだろうな。現状は筋力全振りで他は全て1のままだ。

 これで職業を剣士、魔法使い、弓使いを選んだからだろう」


 ぶはっ!?


 俺は思わず口に含んたぶどう酒を吹き出した。

 神丸の職業で影響してくるステータスは剣士は筋力、魔法使いが知力、そして弓使いは器用さが必要だ。


「ベル反応良すぎ違うか、笑笑。まぁ、気持ちは分からんでも無いけど。

 今のステータスなら魔法が使えない魔法使いで弓も命中しない弓使いやん、職業スキル全く使えないとか、笑笑」

「い、いや、それはそうだけどそこじゃなくて…」


 梅梅の言う事はもちろんなのだか、Roの世界では基本レベルが上がるとステータスが2ずつ選択して上げられる。ステータスの最大値は100なので極める事ができるのは2種類の能力となっている。


 もちろん別に最大値にしなくても良いのだが、Roの不親切な設定でラスボス辺りのモンスターにダメージを与えるならステータス80以上が必須条件なのだ。


 このためステータスを考慮して職業を選ぶ必要性があるので異なる能力値が必要な職業の組み合わせは推奨されない。


「ち、ちなみに…筋力以外の他のステータスはどうするの?」

「知力に全振りだな」

「やりよるなぁ、笑笑」

「ちょ、弓使いの意味は」

「大丈夫だ、それよりウメこそ揉めてたようだが?」


 詳しく説明しないところをみると何か策があってサプライズしたいんだろうけど…いやぁ、これはどうなんだ。


「俺は耐久全振りで、盗賊、鍛冶師、錬金術師やで」

「ちょ、盗賊なら素早さじゃ…」

「俺より酷いじゃないか、現状肉盾としての活用しか思いつかんぞ?いつ生産スキルが使える予定なんだ?」

「おそらくレベル75 あたりからやね」

「いやいや、パーティ設定で経験値の分配が無かったのに、どんだけドMなんだよ…」


 鍛冶師と錬金術師の生産に必要なステータスは器用さと運だ。そして盗賊に必要なのは素早と筋力だというのに梅梅の話しぶりからして盗賊にあわせたステータスは振らないつもりだろう。


 生産職に特化する場合は本当に非戦闘員という感じで攻撃が全く期待できないキャラクターになる。そこを梅梅は耐久値に振っているため完全な生産特化にもなれないという、何をどうしたらそんな職業選択になるのか理解ができない。


「ま、もう決めてしまったんやから仕方ないで。

 それより、食欲とか睡眠欲の隠しパラメーターがステータスにデバフ効果をもたらす可能性とかを検証するべきやない?飲酒とか特に」

「そういえば俺はさっきからステータス覧に酩酊と出ているな」

「なんで酩酊で普通に喋ってるんよ」

「おそらく他のパラメーターが左右しているのではないか?

 まぁ、そろそろ限界を感じてきたな、どれ…」


 神丸は手を机に着き、おそらく立ち上がろうとしたようだが、大きな音を立てて机に突っ伏した。


「例えるなら気力ゲージが無くなって意志が途切れたみたいな感じかなぁ…」

「見えんゲージに左右されるなら防ぐ対策考えんと、フィールドでこうなったら終わりやで…」


 俺と梅梅は深いため息をついて酒をあおった。 


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