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第四十七話 暴れる

「ベル!SPに余裕ある!?」

「え?あるけど?」

「神丸!バッチコーイ!!」


 梅梅は神丸に向かって叫んだかと思うと何故か急に亀の様にうずくまる。


 いや、おま、何考えてんだよ?!

 イナゴに囲まれるぞ?!

 それとも何か、それはイナゴのターゲットから外れる方法なのか!?


「!?」


 呆気にとられ言葉を発せずにいた数秒の間に梅梅の姿はイナゴの下に消えた。

 同時(vit)に体力に全振りしている梅梅のHPが293から290に減る。


「痛!痛たたたた!!?」


 あれ?悲鳴の割にあまりHP減って無いよね?


 確か30匹くらい連れてたから最低でも一度に30くらい減ると思ってたんだけどな。体力(vit)に全振りしてるから低レベルモンスターに囲まれても余裕なのかな?


 なんて事を思っていると、すぐに悲鳴の質が変わった。 


「ッ!?おもッ!!!ぐッ!?」


 梅梅の悲鳴が小さくなっていくのにあわせてHPの減り方が加速する。


 293→→→290→→→287

 といった間隔が

 287→→→280→→265→240

 という感じで早くなり、

 HPの減り幅も大きくなっている。


「まさか、毒か圧迫による追加ダメージ?!」


 先程とは違う状況に俺は慌ててヒールの射程距離まで駆け寄ろうとしたその時、神丸の詠唱が響き渡った。


「遥かなる古より、世界を見守りし炎霊よ、

我が呼び声に応え、今この地に顕現せよ!

深淵の底より滾る、原始の炎よ、我が身に宿れ。

大空を舞う鳳凰の翼、その紅蓮の輝きを纏い、

吹き荒れるは、嵐の如き劫火の螺旋!

万物を焼き尽くし、灰燼へと還す滅びの業火、

恐れを知らぬ猛き炎よ、ここに唸り、咆哮せよ!

降り注げ、天空よりの焦熱の洗礼!

全てを呑み込み、焼き払え!

ファイア、ストームッ!!」


 神丸はメイジの最上位魔法の発動に成功した。


 いやいや!?なんでだよ!?

 てか詠唱なが!? 


 ツッコミたいことが山程あったが、それどころではなかった。

 神丸の魔法はイナゴの山を中心に巨大な火災旋風を巻き起こしたのだ。

 数匹のイナゴは空に舞い上がり、地上のイナゴは身動きを止めジワジワと焼かれているのが見える。


 そして梅梅のHPが更に激しく減っていく。

 HPバーが緑色から一気に真っ赤に変わる様は

『こうかはばつぐんだ』を彷彿とさせる減少の仕方だった。

 あまりの減少の仕方に胸の鼓動は一気に早くなり恐怖を感じる。


「あつ、あっ―――!?」


 梅梅の声が聞こえなくなった!?


 し、しかし奴の事だ、前回の忍者戦でも生き残ったのだからHP管理もギリギリなんとかやるはずに違いない!きっと!?たぶん!?

 

 俺は梅梅の【HP34】という数字に吐き気を覚えつつ、防ぎようの無い火傷しそうな熱風に耐えながらヒールの射程距離へと急いだ。


 炎に包まれているイナゴは次々と灰なっており。梅梅が埋まっていたイナゴの山は既に灰になっている。


 急がなければ…。


 その時、視界の端で何かが動いた。


 予想外の敵の出現かもしれない!

 視線を一瞬そちらに向けると―――


 神丸が倒れていた…。


 神丸の周囲に敵は居ない…。


「あんのバカヤローッ!?

 ホワイトアウトかよ!?」


 まずは梅梅をなんとかしないと!?


 梅梅へと視線を戻すと先程まであった火災旋風が消滅していた。神丸が倒れた事に関係しているかもしれない。


 とにかくこれはチャンスだ。


 俺は梅梅が埋まっている灰の山へと一気に近づくと梅梅の姿が見えないまま【HP12】という数字目がけてヒールを放った。


 間に合った…そう安堵しかけたのも束の間、ヒールを受けた証の白い光を帯びた人影は微微動だにせず、何故か梅梅のHPも回復されていない。


 理由は分からないが、とにかく今は灰の山から梅梅を出すのが先決だろう。


 灰の山の中から梅梅を見つけるべく手にスライムの粘液を付け灰をかき分けると、霧散して消えていく灰の中から湯気が立ちのぼり俺は咄嗟に手を引く、


 湯気が収まるのを見計らい確認すると、スライムの粘液に包まれた梅梅の姿がそこにあった。


 まさかこれ…呼吸止まってるんじゃ?


「ベルさん!?大丈夫ですか!?」

「俺、神丸さんの方を見てきます!」


 異常を察知したマロン君と八鷹が駆けつけてくれたようだ。


「八鷹、神丸は任せた!

 たぶんホワイトアウトだと思う!

 マロン君は火傷に気を付けて梅梅を覆っているスライムを剥がしていこう!

 口まわりは俺がやるよ!」


 俺とマロン君は熱々のあんかけのようになっているスライムの粘液を慎重に剥がしていっき、HP12の状態でなんとか粘液を排除する事に成功した。


 俺はヒールを改めてかけるが、まだHPが回復しない…。


 まさか…。


 俺は梅梅を背中から抱きかかえるようにして喉に詰まった餅を吐き出させる要領で刺激を与える。


 すると梅梅の口の中から白色の塊がボトリと音を立てて吐き出された。


「ベルさん、これ何でしょう?」

「たぶん高級薬草だと思うけど…」

「これが詰まってたからHPが回復しなかったんでしょうか?」


 マロン君の問いに応える様に俺はヒールをかけるが、HPは回復しない。


 まじかよ…。


 俺は手の平を口元に近づけ梅梅の呼吸を確認するが、呼吸は確認できなかった。そもそもゲームで呼吸を感じで確認できるのか?


 自分の呼吸を確認しようと手の平に息を吹きかけたその時、呼吸を感じる事ができる事と、梅梅のHPが1になった事を確認した。


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