第四十四話 打ち合わせ
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DAY【1090/1095】
Time【04:30】
DEATH【80/1000】
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全員が思い思いに話しているとあっという間に時間が過ぎ、このままではオール状態になってしまう事に俺は気付いた。
「ちょ、もう4時30分だよ!?」
「もうそんなに経つんか、リアルやったらアイツラ注文少ないくせにまだ居てるとか、マスターからのクレーム―――」
「いやいや、それ話長くなるやつだから!?
睡眠不足で身動きとれないと他のギルドに迷惑かけるかもしれないし、今日はお開きにしよう!?」
俺は梅梅の話を遮り、神丸に目で訴えかけた。
「ふむ、ベルの言う通りだな。
とりあえずクレさんとの連絡手段だけ決めるか」
「時間決めて酒場に集まるとか?」
俺の提案に神丸は「それも良いが、少し待ってくれ」と、あごをさすりながら席を立つと酒場のマスターの元に向かいすぐに戻ってきた。
「ひとまず今晩21時頃に酒場に集合する感じにしたいが、出席出来ない場合や早く何かを伝えたい場合を考慮してマスターに言伝を頼めるか確認した。
酒を一杯頼めば受けてくれるそうだ。
ちなみに言伝を聞くときも酒を一杯頼む必要がある」
「ほほお?
それはあれか。
言伝が無かったとしても言伝の有無確認の為に酒を頼む必要があるってことやんな?」
梅梅が何か気付いたのか目を光らせて神丸に問う。
「………ふむ、なるほど。その通りだ」
「いや、何だよその間は」
「まぁまぁ、話は済んだしとりあえず寝よか!」
俺の問いに神丸が答えるのを阻むようにして梅梅は我先にと路地裏に向かい始めた。
「ちょ?!」
反応が遅れた俺のツッコミを他所に、神丸が話を続けた。
「クレさん、ご馳走様。
ひとまず夜までに姓のあるプレイヤーを探してみて欲しい。俺達も考えられる事をしておくよ」
「わかりました」
そう言って神丸は手をあげ路地裏に向かう。
「ちょ?!」
二人の傍若無人な姿にあきれて言葉に詰まっている間に神丸も酒場から出てしまった。
「いやぁ、ベルさん。二人とも相変わらずですね。思い出そのままでしたよ。
『俺達の間に挨拶は無い』でしたっけ?」
確か、寝る間も惜しんでゲームをする廃人プレイヤーだった当時、ゲームか何かの言葉を借りて2人がよく言っていた言葉だっけ。
「あぁ、懐かしいねそれ。そう思うと、人の本質は20年経っても変わらないってことかな」
「それはどうでしょう?ベルさんは当時より少し大人の余裕がある気がしますけど」
微笑むクレさんに俺も笑って答える。
「クレさん、それは成長じゃなくて老いかもしれない」
「なるほど、歳は取りたくないですね」
そこは納得してほしくないんだよ!?とツッコミながら俺はクレさんに確認する。
「ところで、神丸の返答が詰まった理由なんだろう?」
「うーん…」
「あ、何か察した?
クレさんに聞いたって言わないから教えて!?」
「おそらくですけど、何か利害が一致したからあえて話てないみたいな部類のやつです。嘘とかそういう感じの」
「確か、言伝の話だったかな。寝る前にマスターに聞いてこようかな」
「あ、俺も一緒に行きますよ、聞き終わったらそのまま店を出ましょう」
俺とクレさんはその後マスターから言伝について衝撃的な事実を聞かされる。
「え、酒を頼む必要が…無い?」
「なるほど、酒を飲む口実を増やすために咄嗟にウメさんが提案したと言う感じでしょうか」
「ぐぬぬ、あの2人ならやりそうだ」
俺とクレさんは使いやすくなった言伝システムを利用し、梅梅と神丸に言伝を残して解散した。
路地裏には既に2人が死んだように眠っていたので俺も隣で寝る事にする。
これから忙しくなりそうだ。




