第四十一話 再会
「クレさん久しぶり!本当に会えて嬉しいよ!こんな状況じゃなきゃオフ会で再会を祝いたいくらいだよ!」
リアル友人の梅梅や神丸と違い、クレさんとはゲーム内だけの付き合いだったため再会するとは思ってもみなかった。
小学校時代の親友に出会ったような懐かしさと楽しい思い出が蘇ってくる。
「俺も嬉しいよベルさん!
これでも神様のBOSS撃破アナウンスを見てから路地裏を結構探してたんだ。
ここを昔みたいに拠点にするのかい?」
俺は路地裏を見ながら苦笑する、そういや20年前は路地裏をメインの拠点にしてたっけ。
石畳が痛いから他の所で寝たかったけど、梅梅が路地裏にこだわって寝るようにしてたのは【通天閣商会】のメンバーと再会する可能性を見越しての事だったのかもしれない。
まぁ、単純に金が無いってのが一番大きな理由な気もするけど…。
「そこはまだ詳しく決まってないけど、暫くはここが拠点になると思うよ。安宿は満室だし、【街の中心亭】に泊まるお金もないし。
ちなみにそこに寝てる2人がウメとゴッド」
クレさんは寝ている2人に近づき名前を確認しながらケラケラと笑っている。
「神様はイメージ通りって感じだけど、ウメさんまた女キャラ使ってるんだね」
相変わらず心臓に毛が生えてそうなプレイしてるんでしょ?とクレさんは関心している様子で頷いている。
「2人ともさっき寝たとこだから多分暫く起きないと思うんだよ。2人との再会は残念だけど明日になるかなぁ」
「起こしても良いなら起こそうか?」
「え、クレさん起こせるの?
街の中だとアイテムかスキルが無いと起こせないよ?」
「ふっふっふ」
クレさんはニヒルに笑いながらギターを取り出した。
「ま、まさか」
「戦闘なんかくだらねぇぜ!!!
俺の歌を聴けッー!!!」
「ちょ」
クレさんはギターを弾きながらノリノリで歌い始める。
『立ち上がれ!立ち上がれ!立ち上がれ!
おはよう!!!』
どこかで聞いたことがあるような歌詞だが公式ではこんな歌は無かったはず。
てか、良い声なんだけど聞いてるとめっちゃ恥ずかしい、他人のふりをしたくなる感じがする歌詞だ。
…俺の詠唱もこんな風に思われてたりするのだろうか?そう思うとなんだかこれまでの事が突然恥ずかしくなってきたぞ。
「むぅ、なんだ?何があった?」
「あれ?…これまだ夜違う?」
歌の感想をどうしたものかと悩んでいると、目覚めた2 人がのっそりと起きあがった。
「お久しぶり!神様と梅さん!」
「三日月…まさか、クレさんか?」
「さすが神様!」
「ゴッド、本当のクレさんか確かめる必要があるやん?」
「確かにそうだ。それじゃそこの酒場で確かめるとしよう」
「ちょ、2人とも!お金は!?」
「クレさん一括払いで」
「奉納よろしく」
「えぇぇ…」
「クレさんクレさん、俺は?」
「仕方ないなぁ…一杯だけですからね?」
「やったぜ!」
こうして俺達は20年振りに【通天閣商会】のギルドメンバーと再開した。




