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第三十八話 祝賀会

 祝賀会の会場は【街の中心亭】の大部屋で俺達が到着する頃には既に関係者が揃っている様子だった。


 部屋には丸テーブルがいくつも並び立食スタイルのパーティという感じだが、まだ食事は用意されていないようでウェルカムドリンクを手に歓談している感じだ。


 ゲーム時代、教会で結婚式が行われた後で参列者が強制的に飛ばされるお披露目部屋があったが確かこんな感じだったな。


 …てか、【通天閣商会】は到着した俺達3人で全員だし、【赤い森の塔】の皆さんだって確か全員で8人しかいなかったと思う。


 20年前の大手ギルドとは言え、一体何人が揃ってるんだ…【円卓の誓い】恐るべし結束力だな。


「ほんならベル、俺らは一番前でちょっとしたスピーチせんとやからここで一旦解散や」

「おっけー」

「それじゃアーサーさん、ルヤさん、行きましょか。ゴッドとダンスさんは副官みたいな感じで俺らの後ろに控える感じでお願いします。ルヤさんとこは―」

「それでしたら、たぬきち君を拾ってから行きますね」

「たぬたぬなんですね、お願いします。ほんならベルまたあとでな」


 俺は一緒に到着した皆と別れると、どうしたものかと周囲を見渡した。

 

「あ、ベルさん!」


 人を掻き分けるようにしてサラサラの茶髪を揺らし、こちらに駆けてくるのは可愛いイキモノのマロン"君"だ。


 素晴らしいタイミングで見つけてくれたなと思うものの、そう、騙されてはいけない彼は男だ。


「やあ、マロン君」


 俺は手を上げマロン君へ一歩近づき微笑んだ。


「心配しましたよ!」

「いやぁ、すみません。

 ありがとうございます」

「本当に心配したんですからね!

 僕を幸せにしてくれるって言うのは嘘たったんですか!?」


 ん?


 んん?


 

 工工エエエエェェェェ(゜Д゜)ェェェェエエエエ工工


「げ、げふんげふん、え、いやそんな、嘘も何も」

「ベルさんは嘘つきなんですか?」

「いや、俺は嘘つきじゃないですよ?」

「それなら良いんですけど。

 あ、そうだ。もう聞いてるかも知れないですけど、僕しばらく連絡係としてベルさん達のお手伝いをさせてもらいますから。

 改めて宜しくお願いします」


 そう言ってマロン"君"は頬を赤らめながら握手コマンドの申請をしてくるので、もちろん許可をした。


「えへへ」


 マロン君が握手していない左手で頬をかいているのを見ていると、アーサーと握手をした時には別段わかなかった感情が頭を混乱させる。


 俺は眉間に皺が寄らないように意識しながら、なんとも言えない感じで苦笑する。


『えー!お集まりの皆さん!

 お待たせしました!!!

 只今より【円卓の誓い】【通天閣商会】【赤い森の塔】の同盟祝賀会を開きたいと思います!!

 司会は天下の雑用係の私、ウメウメが務めさせて頂きます』


 前方の壇上で梅梅がマイクを手に挨拶を始めると、会場の全員が拍手と歓声をあげはじめた。


「ベルさん、折角だから皆が居る場所へ移動しましょう」

「そうですね」


 マロンさんに連れられ【赤い森の塔】の皆と合流すると、皆に笑顔で迎えれられた。


『皆様、拍手ありがとうございます。

 そしてまずはお静かにお願いします。

 今回の祝賀会を始めるにあたって、最初にデスゲームで亡くなった全ての方々に向けて一分間の黙祷を行いたいと思います』


 梅梅の言葉で一斉に静まると、各々が目を閉じる。さすが大人のギルドといったところだろうか。


『黙祷』


 俺も目をつむり、これまでの亡くなった人々や、俺の身近にあった死を再認識する。


 本当に残酷で受け入れがたい事実だ。


『ありがとうございます』


 梅梅は全員の注目が戻るのを確認すると再び話し始めた。


『デスゲームという悲惨な状況の中で親しい友人や親類を亡くし、絶望に打ちひしがれている方も既にいるかと思います。

 また、私達の番が来るのも時間の問題かも知れません。

 しかし、私達にはまだ攻略する事で生き延びる事ができる可能性、希望がある。

 少しでも皆さんやデスゲーム参加者全員の希望となれるように、今回の同盟を良いものにしましょう。

 では、全員グラスを用意して頂いて―――』


 NPCのボーイに寄ってグラスを持っていない者にドリンクが配られる。


 俺も透明の液体が入ったものをグラスを受け取る。


『生還するために!!』


「「「「生還するために!!」」」」


 梅梅の合図で各々がグラスをあおる。

 白ワインっぽい風味を感じるな。


『はいはい!

 それじゃ、堅苦しいのはとりあえずここまでにして、今からは適当にギルマスの挨拶とかしていくで!!

 美味しいもん食べてながら聞いてもらったらええし、皆の交友を深めてく感じでよろしゅう!!

 スタッフさん食事お願いしま〜す!!』


 梅梅の合図でNPCによって円卓に様々な料理が並びはじめる。まるでホテルビュッフェでも見ている気分だ。


「マロン君、何食べます?」

「そうですね…ベルさんとか美味しそうでふよね」

「え?」


 なんだ、このトロンとした吸い込まれそうな瞳は…。


『あー、そうそう、ごめんけど!!

 さっきのグラス多分酒やから、酒に弱い人はお冷あげて介抱してあげて!

 お冷飲んだらアルコールすぐに抜ける使用らしいから!』


「ちょ、ボーイさん!!お冷お願いします!」


【赤い森の塔】のメンバーは未成年なのか、偶然全員が酒に弱いのか、全員何らかの酔った症状に陥っていた。


 う、梅梅〜!!?


「あ、ベルちゃん、ここにいたんだ!

 この前は本当にありがとね!」


 声の方を見るとリタさんと八鷹が立っている。

 感動の再会ではあるのだが…


「リタさん〜!

 すみません、お手伝いお願いします!」

「んん、あれ?

 これは…、八鷹ちゃん!

 お冷もらってきて!」

「はい!」


 俺はリタさん達に手伝ってもらいながら介抱に専念した。



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